協力と罰の生物学 (岩波科学ライブラリー)

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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000296267

作品紹介・あらすじ

排水溝のヌメリから花と昆虫、そしてヒトの助け合いまで。この世界はうるわしき協力の姿であふれている。容赦ない生存競争の中で、生きものたちはなぜ自己犠牲的になれるのか。ダーウィン以来、この謎に果敢に挑んできた研究者たちの軌跡と、協力の裏に見え隠れする、ちょっと怖い「罰」の世界を生き生きと描く。

感想・レビュー・書評

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  • 菌類、昆虫、動物、人間、どの生物もDNAレベルでプログラムされている所作や「社会」の均衡を保つためのルールが備わっています。
    生物は皆、種を残すために種同士、あるいは種を越えて「協力」というかたちで共生します。しかし同時に、協力行動に“ただ乗り”して楽して種を残そうとする非協力者(フリーライダー)も一定数いるもので、そういったフリーライダーが幅を利かせるのを食い止めるために様々なかたちの「罰」が存在します。
    果てしなく長い過程のなかで、「協力」と「罰」の双方が絡み合いバランスが保たれている『自然の摂理』。その一片を垣間見ることができる1冊。

    血を口移しで分け合うコウモリ、クマノミとイソギンチャクのwin-winの関係性、中絶するユッカなど、生物学の研究結果を一般の読者にも分かるようとても噛み砕いて解説しているため、分かり易く何より興味深く読み進められる内容です。
    種全体のために率先して自身を犠牲にすることもあれば、ルールに沿った本能的な行動が期せずして種を存続の危機に陥れることになる等、規則的に流れているように見える世界でも、そこには様々なドラマがあり驚きと発見があります。
    この本を取っ掛かりにもう少し専門的な本に手を伸ばしたくなる面白さ。好奇心が刺激されました。

  • アリやハチといった社会性昆虫は、自らは子孫を残さないワーカーが群れの大部分を占める。自分の遺伝子を次世代に伝えることが生物の究極の目的だとすれば、子を作らずに働くワーカーって「変」だ。ダーウィンも悩んだらしい。
    本書は、上記の謎解きから、ルールを破るもの、フリーライダーに対する罰の効果までをまとめてくれる。実例が豊富でわかりやすい。むしろ豊富すぎて個別の例に気を取られ、俯瞰的な見識を形成するのが難しいかもしれない。
    いずれにしてもこの分野の入門書としてはよくできてて、じゃあ血縁によらない人間社会の協力関係は? とか、ぼくたちが倫理観、道徳観として捉えている感覚は、ひょっとしたら生き残りのための本能に根ざしているの? とかいろいろ考える。読んでで疑問が発展してくるのが科学啓蒙書の醍醐味だ。

  • ☆フリーライダーは排除

  • 598円購入2017-03-04

  • 生物の協力/互恵関係について書かれたものは見たことがあるが、罰にフォーカスしたものはこれまでなかったように思う。平易に書かれておりなかなか面白かった。

    P84 AならばBが成り立っているかどうかを調べるためにはAであるのにBでない場合があるかどうかを調べる必要があります。そこでコスデミスはこの問題に社会的文脈を添えて被験者に解かせることを試みました。【中略】文脈が与えられるとこの問題は簡単になったように感じられます。事実被験者の正答率も格段に上昇しました。ヒトは裏切り者検知の問題が得意であることを示していると言えるのです。

    P100 (人はあまり公共財に投資しない人を罰するが)しかし同時に罰を与えた人がどのような人に罰を与えたのかを詳細に分析したところ、自分より公共財へ多く投資した人へも罰を与えている例があったのです(非社会的罰)
    集団主義的な社会では「協力しすぎる人」は「協力しない人」と同じように集団の輪を乱す存在と考えられる可能性があります。

    P107 罰の限界を伺わせる例「報酬を与える人」は評価されるのだけど「罰を与える人」は特に評価はされないらしいという研究

  • 他人に罰を与えると、尾状核が活性化する。尾状核は欲求が満たされた時に活性化し、快感を引き起こす部位。快楽の情動が伴っている行動は、進化の過程で有利だった証拠。

    他人に報酬を与える人は評価されるが、罰を与える人は評価されない。

  • この本のタイトルにある『生物学』の観点から、マーケティングや組織論などを考えてみると、腑に落ちる点が多くあります。
    “人間も「ヒト」という動物である”ことを思えば、ある意味当たり前かもしれません。

    そんな、この本に書かれた「生物学」をマーケティングや組織論に応用する際、重要となるキーワードは以下の3つです。

    1 自然淘汰
    2 血縁淘汰
    3 間接互恵性

    この3つのキーワードを深掘りすることで、現代のマーケティングや組織論で、「なぜそれが効果的なのか?」の理由を知ることができます。

    「ヒト」という動物が高度な知能をもち、文化・社会を形成してから、たかだが数百年。
    250万年以上前から、遺伝子に刻まれている生物としての“本能”に引きずられてしまうのは当然のことかもしれません。

  • 最近話題に上ることの多い「利他的行動」。
    利他的行動は虫からほ乳類までに見られるとのこと。
    これはこの行動に生存的メリットがあることの証拠だと思った。
    希薄になってきたといわれることの多い最近の人間関係は、われわれの生存&永続に影響を与えるのだろうか?

  • 生物の中に、アクセルとブレーキのような機構が必ず併存してるってのは何となく理解していたが、個体間でも同様の事が有り、更に罰まであって面白い絡み合いをしているってのは初めて(多少体系的に)理解出来た。
    それがDNAの中に織り込まれていて、社会や科学の進歩には早々に変化追従しないってのも、なるほど感あり。
    100ページちょいしかないので、軽く読めます。
    この分野に関心のある方なら一読をお勧めできるけど、お値段も考えると、買ってまで読む?という点では微妙かも知れない...。

  • 【著者】
    大槻 久(おおつき ひさし)
    1979年福島県生まれ.2006年九州大学大学院理学府生物科学専攻修了(理学博士).ハーバード大学Program for Evolutionary Dynamicsポストドクトラルフェロー,科学技術振興機構さきがけ「生命現象の革新モデルと展開」専任研究者を経て,現在,総合研究大学院大学先導科学研究科助教.専門は数理生物学.協力の進化理論をはじめ,進化ゲーム理論,人間行動進化学の研究に携わる.最近は文化現象にも興味をもっており,知識や流行というものがどのように伝達されるかを調べたいと思っている.
    http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0296260/top.html

    【目次】
    1 仲良きことは美しきかな――自然界にあふれる協力のすがた 
    協力というシステム/くっつくバクテリア――ヌルヌル物質の秘密/キイロタマホコリカビ――みんなでつくる集合体/働きアリの献身/オナガの共同繁殖/血を分けてあげるコウモリ/敵が来たぞ――ミーアキャットの警戒声/嬉しい声――フードコール/チンパンジーの道具の貸し借り/植物と細菌の助け合い/クマノミとイソギンチャク/ようこそ!クリーニング場へ
     第1章のまとめ 
     BOX 協力とは 

    2 ダーウィンの困惑――なぜ「ずるいやつら」ははびこらないか 
    ダーウィン登場/強い者が生き残る――適者生存の「自然淘汰」/ただ乗りという誘惑/ミクロの世界のフリーライダー/蛍光菌のフリーライダー/働く気のないアミメアリ/養蜂業者の誤算/蜜だけ盗むハチ
     第2章のまとめ 
     BOX 共生とフリーライダー 

    3 協力の進化を説明せよ!――男たちの挑戦
    フリーライダーという矛盾/「群れの利益のため」理論/ハミルトンの血縁淘汰理論――働きアリのからくり/もちつもたれつ――直接互恵性理論/ハミルトン,政治学者と出会う/囚人のジレンマ/しっぺ返し戦略/情けは人のためならず――間接互恵性理論
     第3章のまとめ 
     BOX 間接互恵性と我々の道徳心 
     
    4 罰のチカラ――自然界には罰がいっぱい
    罰にもいろいろ/大腸菌のお仕置き?――制限修飾酵素系/用心棒の逆襲/親しき仲にも礼儀あり――ユッカとユッカガの相利共生/植物から細菌への罰/キイロタマホコリカビの村八分/磔にされるアリ/掃除をさぼるのは誰だ!/ミーアキャットのイジメ
     第4章のまとめ
     BOX 懲罰と制裁

    5 ヒトはけっこう罰が好き? 
    社会脳仮説/ヒトの親戚びいき/裏切り者には敏感/目があるだけで協力/公共財ゲームと罰/高次のフリーライダー問題/二度と会わないのに懲らしめたい――利他的罰/罰の文化差/協力する人に罰をする?/罰のある社会とない社会/罰と快感/罰が勝るか,報酬が勝るか/罰のもつイメージ
     第5章のまとめ 
     BOX 制度化された罰

    おわりに――ヒトと罰,その未来 

     あとがき 
     参考文献 

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