時を刻む湖 7万枚の地層に挑んだ科学者たち (岩波科学ライブラリー 242)

  • 岩波書店 (2015年9月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (128ページ) / ISBN・EAN: 9784000296427

みんなの感想まとめ

この作品は、福井県の水月湖における地層研究を通じて、過去の時間を測るための新たな視点を提供しています。湖底に堆積した年縞が、数万年にわたる歴史を物語る様子が描かれ、科学者たちの情熱や努力が伝わってきま...

感想・レビュー・書評

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  • 福井県三方五湖の水月湖湖底の堆積物は、年輪のように層を正しく築く(年稿)。
    これをボーリングし、層に堆積した葉の化石の年代と、その化石の14C(自然界に存在する炭素の同位体としては唯一放射能をもっており、β線を出しながら、5730年という比較的短い半減期で崩壊して失われていく)を計測し、年代と整合させる。
    このことによって、発掘される化石などの年代を精度よく推定していくという、いわゆる「ものさし」にするという。

    言ってみれば簡単だが、水月湖でそれが出来ると見た着眼点と、大変な労力(費用も)が必要だったという苦労話が書かれてあり、敬意を表したい。

    ちなみに、水月湖の年稿は、氷河期の寒い時代には1枚が約0.6mm、その後の暖かい時代には1.2.mmほどになる。これが厚さにして45m、時間にしておよそ7万年分もたまっている。これほどの長さの年縞が連続的に発達している場所は世界でも殆ど例がなく、そのため水月湖は奇跡の湖といわれる。
    年稿のメカニズムは、本書に書いてあるが、興味深い。

  • 科学者の研究に対する熱い情熱が伝わってきて、とてもいい本でした。
    何かに打ち込めるというのは素敵だと思いました。
    日本の湖の地層研究が、標準時間の資料となっているというのは、初めて知りました!
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

  • ぜひ、さまざまな人に知ってほしい研究である。

    ときどき疑問に思うことがある。
    どこどこの出土物は実は何百年前のものでって、どうやって年代がわかるんだろう?という疑問だ。
    過去の遺産、遺物の時間がわかるのはなぜなのか、そこまで深く追求した事はないが、不思議に思うことがあった。
    それが、この本で解消されたと言ってもいい。
    まさか、時間測るための物差しがあったとは。

    その物差しは年縞と呼ばれる。
    福井県にある水月湖という湖の底に、何万年もの月日をかけて溜まった堆積物がある。
    他の湖だと、川からの流れなどで堆積物は脆くも崩れてしまうらしいが、水月湖のものは綺麗に薄い縞を重ねている。
    もともとは水月湖ではなく、別の年縞が使われていたらしい。
    それを覆したという、なかなか凄い研究をまとめたのが本書である。
    かなり地道で気の遠くなる作業の連続。
    それをやり遂げる研究者の根気強さは本当にすごい。
    水月湖だけではなく、世界標準の物差しになるための努力と道筋が紹介されていて、まだまだ知らない世界はたくさんあることを思い知らされる。
    もちろん、年縞のみを物差しにしているわけではないが、そうした時間の測り方があるということそのものが、自分にとってはあたらしかった。

    専門用語や、想像すらしたことのない世界であるため、かなり読むのは大変で、正直言って流し読みの部分も多い。
    それでも、やはり過去が時間という距離で測れる、その凄さには感動させられた。

    ちなみにこの本を読んだ後、福井県の三方五湖沿いにある年縞博物館と縄文博物館に行ってきた。
    本だとよくわからなかったところが、実物を見てつながった経験となった。
    水月湖が奇跡の湖である理由を、より深く理解できた。

  • この物質は何年前のものか、それは炭素14の濃度から計算されている(放射性炭素年代測定)。
    そのための各年の炭素量をはかり「ものさし」をつくる必要がある。
    現代から1万年前までの「ものさし」は1年1輪増える「年輪」からすでにつくられている。
    本書は、1万年より前の時代の「ものさし」を湖の底の土……体積した「年稿」からつくりだす物語。
    「水月湖の年稿のデータを用いた較正曲線の研究が知りたい」という人には本書は最適かもしれないが、そのようなあまりにもニッチな情報を知りたいのではなく、人類と気象の研究が知りたい、という自分のような一般人には、本書と同じ著者『人類と気候の10万年史』の方が面白い。
    (『人類と気候の10万年史』から水月湖の研究のみを抽出したような内容でした)

  • 福井県にある「三方五湖」。その中で最も大きな湖である「水月湖(すいげつこ)」の底には7万年以上の歳月をかけて積み上がった「年稿(ねんこう)」と呼ばれる縞模様が造られていました。
    本来長い年月の過程のなか、地形の変化や気候の関係で年稿は大きな影響を受けます。しかしこの「水月湖」はいくつかの条件が奇跡的に重なり、連続的に年稿が形成され続けました。その結果過去5万年の堆積物が蓄積され、地球の歴史を知る貴重な“基準=標準時計”として2013年に世界で認められることとなったのです。
    本書は20年を越える地道な研究内容と成果、世界で評価されるまでに至った軌跡を紹介した一冊です。

    岩波科学ライブラリーということもあり学術的な用語は排除し、中高生でも分かる平易な言葉でもって内容の濃い最新の研究に触れられます。この研究は自然科学分野や考古学分野の礎となると思うと今後も楽しみであると同時に、国として研究の分野を支える基盤が一日も早く整ってほしいと願わずにはいられません。

  • 一気に読んだ。新聞広告で見つけて、即購入と思っていたのに、なかなか書店で見つけられなかった。昨日やっと、久しぶりの河原町丸善で購入。福井県にある水月湖。湖底は酸素不足のため生物が生息できないという。また、湖底が深いため水面の波の影響なども受けにくい。したがって、乱れることなく堆積が進んでいく。さらに、近くにある活断層のためにときどき沈降が起こり、堆積物のために湖底が浅くなるということもない。などなどの環境がそろったおかげで、ボーリングをすることで、5万年にも及ぶ堆積物の縞模様(年縞)が見つかる。季節によっての堆積物の種類の違いによって、年輪のようなものが出来上がる。それを利用して、炭素同位体だけでは決めきれない年代の特定にあたることになる。イギリスやドイツの研究者が共同で作業を進める。そのプロジェクトの様子が当事者の目を通して描かれている。実におもしろい。安田喜憲先生がはじめて来られた環境考古学というテーマが研究対象としていま一番おもしろいのではないかと思っている。その流れの中にある年縞(このことばが、一発で変換できるようになる、つまり一般的な用語になる日が早く来るとよい)、これを活用することで、1万5000年前の出来事であるというとき、1000年ほどの誤差があったものが、いまでは100年未満になっているという。技術の進歩に伴って、これがもっと小さな数字になる日も来ることだろう。本書をワクワクしながら読んだのだけれど、ところで、この誤差が小さくなるということで、どんなご利益があるというのか。結局ちょっとつかみきれないままでした。(宇宙の年齢でいうと、120億年とか、150億年とか言っていたものが、137億年と言われると、おお世の中、進んでいるなあ、と感じることはあります。)

  • ふむ

  • 14Cを用いた年代測定の精度を確保するためのキャリブレーションが必要で、そのために年輪、サンゴ、鍾乳石等があるが、決定的なものではない。
    水月湖から採取した年稿を解析することではるかに精度を上げる、そのプロジェクト。

    過去の失敗、改良、粛々と継続することによる成果…

    読了60分

  • 『#時を刻む湖-7万枚の地層に挑んだ科学者たち』

    ほぼ日書評 Day713

    Day712と同著者、同テーマでの1冊だが、少し前の刊行ということもあってか、未来に思いを馳せる哲学的な内容は少なく、理論検証や標準化の経緯に関する具体的な記述ボリュームが多く、それはそれで興味深い。

    化学研究というものが、いかに地道な作業に裏打ちされているかが、よく理解できる良書である。

    https://amzn.to/456ErCr

  • さらっと書いてあって専門知識なくてもさらっと読めるけど、えげつないことやってる。本当にさまざまな方法で「数える」ということを通して、世界標準を作ること。個人的には最後のコンラッド・ヒューエンについて書かれたところが特に好きだった。

  • 三方五湖のうち一つ、水月湖の湖底の堆積物が、地質学の年代決定のための世界標準になるまでの過程が記録された本です。いやこれ面白かった。
    水月湖の堆積物は一度世界標準になるチャンスを逃しましたが、20年の歳月を経てついに世界標準になるという、ドラマチックな話がとても面白く書かれています。
    とても面白いんですが、でも実際の研究は地味な作業をひたすら繰り返す、根気のいる作業の繰り返しというコントラストが良いですね。最後に残る課題(誤差)をクリアするところも良いですね。

  • 水月湖の「年縞」は、1年に1枚形成される縞模様の地層である。年縞を数える緻密な研究の積み重ねで、世界の標準となる時間尺度が明らかにされた。研究活動の喜びや焦りなど、科学者の心情も追体験してしまう一冊。

  • 福井県年縞博物館

    環境系に詳しいまさどんに水月湖の事を教えてもらった
    世界基準になるようなものが福井県にあるとは!
    7万年の蓄積があるなんて想像を絶しますー

    博物館は郊外にも関わらず立派な作りで
    積雪や水害も考えて設計されたピロティ
    そして45mをそのまま展示だから長〜い!
    鉄骨も使いつつ木の梁が美しい建物でした!

    展示で気になったのは温暖化の事
    過去にも繰り返された気温の波が来ているんだな

    炭素で時代を測る事も年縞で詳細が分かるようになったようです
    最近の研究なので今後もいろんなことが発表されそうですね
    シマシマすごーい!

  • ブルーバックスでの著書に比べて科学的な記載が少ないが、安田・北川などの先人たちの成果に触れられていて興味深かった。内容自体も、正々堂々としており、科学者として正しい在り方をしている部分についても好感が持てる。ただし、著書が元々花粉分析をやっていたという点については触れられていなかったが・・・

  • 『人類と気候の10万年史』を読んでる途中に買ってしまった本。
    学術的な解説は10万年史に詳しいのですが、水月湖の年縞研究の様子やそもそもの地質年代の測定研究の世界で研究に格闘する様子が描かれてると紹介されていたので、読んでみようと。

  • プロローグからいきなり、福井の湖が全世界考古学会において急遽一躍有名になる、というくだりで始まるから、「おお?そんなにすごいニュースまったく知らなかった。何のことだ?」と興味を引かれる。
    本書の内容は、福井の水月湖(の堆積物)が、いかにして考古学での年代測定における標準時として採用されるに至ったか、を記述したものである。
    固定をボーリングして得られた資料から「年縞」なるものを確認し、年代を測定していくというプロセスをへて、過去の年代を測定していくという、文字で書くと何のことは無い作業のようだが、これが数万年分となると気の遠くなる作業の連続らしい。

  • ともかく数えてしまうんだから何ともすごい。本人も書いているように、ライバル的な書き方がちょっと違う感じはどうしても受ける。それも含めてなんとも圧倒的な話である。これは、予算つけるのがどんなにか難しかろう。こういううまくいく話ばかりじゃないこと込みで。

  • 地球の歴史の物差しをより正確できた地道な研究を,楽しい物語にまとめてある好著だ.5万年前まで遡って,誤差も少なく見積もれるというのは素晴らしい.14Cの半減期等かなり詳しい物理的な記述もあったが,世界各国の研究者が知恵を出して,頭を使い,お金をうまく集める話は感動できる.

  • 学問的な内容というより、過去の年代を正確に知るための方法を求める研究の歴史を追ったような内容でおもしろかった。

    14Cによる年代測定は1950年頃に確立したが、大気中の14Cは宇宙からの放射線が大気中の窒素と反応して生成するため、時代によって濃度が異なる。

    木の年輪は、14C年代を測ることができ、年輪の厚さと気候変動パターンを照らし合わすこともでき、データを継ぎ足してカバーする年代を次々と伸ばすことができるため、誤差は全くないものとみなされており、1万2550年前まで達している。14C測定年代の1万年前は実際には1万1500年前、1万1000年前は1万3000年前に近いことがわかった。

    サンゴの骨格は、14C年代を測ることができるほか、海水中から取り込んだウランと、それが放射壊変してできたトリウムの蓄積から年代を推定できるため、両者を組み合わせることによってキャリブレーションデータを作ることができる。ただし、海のCO2には、大気由来の新鮮なもののほかに、深海から上がってくる古いCO2が混入するリザーバー効果がある。リザーバー効果は生きているサンゴの年代を測ることで把握できるが、過去も同じであったとする根拠はない。

    水月湖の年稿は、春には雪解け水によって運ばれたミネラル分で珪藻が繁殖し、梅雨期には地表の土が流れ込み、夏には水温が上がって殻を作らないタイプの植物プランクトンが繁殖し、秋には春とは違う種類の珪藻が繁殖した後、菱鉄鉱という鉄の炭酸塩が堆積し、冬から春にかけては中国から黄砂が飛来して、堆積して作られる。水月湖は周囲を高い山に囲まれているために強風が吹きつけることがなく、水深が深いために冷たい水の塊ができて酸欠状態のまま攪拌されることがなかった。さらに、三方五湖の東側には三方断層が走っているおり、堆積物がたまるスピードよりわずかに速いスピードで深くなり続けていた。

    14C年代から暦年代へ換算するためのキャリブレーションデータIntCalは1986年に公開された。98年に2万4000年前までのデータが発表されたIntCal98では、気候変動のタイミングと合っていたサンゴのデータが用いられた。著者が水月湖で採取し直して読み取ったデータは、IntCal13で採用された。

    氷河期が終わって暖かい時代が到来したのは、1万1650年前。

  •  サブタイトルが「7万枚の地層に挑んだ科学者たち」で、以前、NHKEテレの「サイエンスZERO]という番組で取り上げられたことがある。

     「福井の湖、考古学の標準時に」というニュースが2012年に駆け巡った。時計で言えば、「グリニッジ標準時」のようなものだ。そこまでに至る日本人及び外国人研究者たちの格闘をコンパクトに描いたのが今回の本だ。

     掘削するのに多額費用はかかるし、地層を数える作業に手間暇かかる。それを何とかやり遂げて成し遂げた偉業。

     7万年分もの堆積物から浮き彫りになる縞模様。その模様が歴史を変える可能性を左右するとは何が影響するのかわからないものだ。

    サイエンスZERO

    http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp415.html

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。1992年、京都大学理学部卒業。1998年、エクス・マルセイユ第三大学(フランス)博士課程修了。Docteur en Sciences(理学博士)。国際日本文化研究センター助手、ニューカッスル大学(英国)教授などを経て、現在は立命館大学古気候学研究センター長。専攻は古気候学、地質年代学。趣味はオリジナル実験機器の発明。主に年縞堆積物の花粉分析を通して、過去の気候変動の「タイミング」と「スピード」を解明することをめざしている。

「2017年 『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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