音とことばのふしぎな世界 メイド声から英語の達人まで (岩波科学ライブラリー 244)
- 岩波書店 (2015年11月5日発売)


- 本 ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000296441
感想・レビュー・書評
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面白い研究してる言語学の教授がいる!
説明がわかりやすい!
日本語のラップとか
メイドさんの名前とか
親しみやすいテーマで言語学を身近に感じた。
ゴジラってゴリラとクジラを足して
出来た名前なんだって。
じゃ、クリラでもよかった訳?
クリラじゃ弱そう。
何で弱そうって感じる?
そう感じるのは日本人だけ?
そんな感じで分析されていく。
言語学入門書として
最高だと思う。
高校生が読んだら、
大学で言語学選択したくなるかもね。
私の卒論、実は言語学でした!
もっと他の著書も読みたい。
ワクワクする学術書でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
分かりやすい入門書
マルとミル、どっちが大きい?
架空の2つの単語に、大小の机どっちがどっちを表すか聞いたところ、
多くが「マル」が大きい机で、「ミル」が小さい机と答えた
これはあらゆる言語話者でも共通の結果になった
つまりある音に対して、母語が何語でも、共通した特定のイメージを想起させる要素が音声にはある
人間の発音機構自体(舌や口の構造)は共通しているので
口を広げる音→大きなイメージ
口を狭める音→小さいイメージ
というように、発声時の物理的な違いがイメージの違いを生じさせるのでは?
→"音象徴"という考え方
……等々、音声学というとっつきにくい学問のハードルを可能な限り下げ、面白いとこだけ上手く抽出していると思った。
(それでもやはりグラフや画像分析の話は難しく感じるけど……) -
2022.7.24市立図書館
このところ相次いで気になる新刊を出している著者の、おそらく一般書デビュー作。
「日本人はなぜ英語が苦手なのか(=外国語が苦手なのは日本人だけなのか?)」という問題をテーマのひとつに、音声学という学問のさまざまな側面をわかりやすくおもしろく紹介する一冊(岩波科学ライブラリーの言語学関係にハズレ無し)。
五十音図の規則性、国際音声記号の歴史など、かつて大学で学んだ「調音音声学」「音響音声学」「知覚音声学」の概要から、最近の設備やアプリを利用した実験や医療・福祉の現場での応用例まで、音象徴やラップの押韻などの身近な話題といっしょに楽しく読んで理解できる。
声紋などの分析には三角関数や対数も不可欠だから、文理問わず数学は捨てないように、という切実なアドバイスのくだりも「ふふっ」と思えるし、赤ちゃんはテレビでは音を学ばないという、こどもの言語習得を議論する上では割と重要な知見の紹介もさらっとある(たしか今井むつみさんの本かどこかで読んだことある話だけど)。
社会の役に立つかどうかでわりと肩身の狭い人文系学問の鬱屈をそこはかとなく伝えつつ、音声学の世界の魅力を一生懸命宣伝しているこの本に高校生ぐらいでであって、消滅危機言語の保存や音声工学、言語聴覚士などの方面を志す学生が増えてくれるといいなと願わずにいられない。 -
【版元の紹介から抜粋】
英語で、強さを意味する言葉にstrengthという語があります。見ればわかるように、母音は[e]の1文字です。なのに、わたしたちは、「すとれんぐす(sutorengusu)」というように、母音を5つも入れて発音しがちです。おそらく、この発話を聞いた英語話者の人は大笑いするでしょう。
世の中には、もっと特殊な言語があり、モロッコで使われているベルベル語には、子音だけで作られた単語があるそうです。たとえば「あなたはそれを乾かして食べた」というのを[tsskʃftstttʃʃtstt]と言うそうでが、これを見て、どう発音すると思いますか。この本のなかにヒントがあります。
考えてみれば、日本人が苦手とされる有名な[r]と[l]の発音の区別ですが、もともと音が違うから、それに充てる文字も異なったというわけです。私たち日本人もどちらも「ん」と発音しているようにみえて、それをローマ字表記するとき、[n]を使ったり[m]を使ったりして使い分けることがあります。
ところで、そうした微妙な音の違いや、あるいは初めて出会った言語の発音を世界中のだれもが共通認識できるように表記する方法はあるのでしょうか。あるのです。それはまさに、本書が紹介するテーマの1つです。
この本では、読者自身が本の内容を深く理解できるように、実際の発話ビデオや音声データをホームページから視聴できるようにしてあります。
本書を教材として使いたい方には、授業などで簡単に利用できる練習問題が、以下のサイトに用意されています。ご覧ください。
http://user.keio.ac.jp/~kawahara/iwanami.html
川原繁人(かわはら しげと)
2002年国際基督教大学学士(教養),2007年University of Massachusetts, Amherst博士(言語学).ジョージア大学,ラトガーズ大学助教授を経て,現職の慶應義塾大学言語文化研究所准教授.専門は音声学・実験音韻論および一般言語学.最近の研究テーマは音声実験による音韻理論への貢献,音声学を通しての社会貢献,幼児の言語習得など.国際専門雑誌に論文を多数掲載.
〈https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0296440/top.html〉
【目次】
目次 [iii-v]
プロローグ――日本人は英語が苦手? 081
第1章 「マル」と「ミル」はどちらが大きい?――音象徴 005
[a]は大きくて[i]は小さい?/「ゴジラ」が「コシラ」だったら?/「濁音=大きい」――口の中が広がるから/ケーラーの不思議な図――「タケテ」と「マルマ」/名前で見た目の魅力も変わってしまう?――名づけの音声学/「タ行」は男の子の音,「な行」は女の子の音?/「タ行」は「ツンな」名前,「な行」は「萌な」名前?/本当にツンツンしている「タ行」の音/《まとめ》
第2章 「あかさたな」とサンスクリット研究──音声学のはじまり 021
音声学の始まり――五十音図の起源は紀元前4 世紀!/調音点と調音法/「ひよこがぴよこ」で「母がパパ」?/五十音図に隠された規則性/日本語のラッパーは音声学者?――日本語ラップの韻の分析/「あいうえお」にも意味がある/顔文字の発明者は音声学者?/《まとめ》
第3章 世界中のことばを記録する方法――記述音声学 037
世界のすべての音を記録する国際音声記号/『マイ・フェア・レディ』と音声学の意外なつながり/アフリカの奥地からアマゾンの奥地まで/舌打ちで話すことば,子音だけで話すことば/日本の方言学/言語聴覚士にも必須の音声記号/《まとめ》
第4章 音を目で見る――調音音声学 049
MRI で[r]と[l]の違いを目で見てみよう/あなたは「巻く」派? 「 巻かない」派?/“鼻にかかった音” はどんな音?/MRI で日本語の母音をチェック!/舌の動きはエコー検査で!/EMA と顎と顔文字と/声帯の動きを首の外側から観察―― EGG のテクニック/調音点・調音法をもっと正確に!―― EPG/《まとめ》
第5章 声紋分析官への道――音響音声学 065
実は大事な三角関数/フーリエ解析――すべての音は1 つの音でできている/「あいうえお」の声紋とは?/声紋から探る[r]と[l]の違い/どうして電話の相手の声を間違える?――振り込め詐欺に注意!/秋葉原のメイド声ってどんな声?/アメリカ人だって,外国語習得は苦手/音響分析なら何でもお任せ―― Praat/「高いのは小さく,低いのは大きい」?――音響的音象徴/「はい,チーズ!」の「チーズ」はどこから?/《まとめ》
第6章 ないはずの音が聞こえる日本人――知覚音声学 085
[r]と[l]――深層では何か違いを感じている日本人/カテゴリー知覚/[ebuzo]と[ebzo]が同じに聞こえる日本人/脳が音をでっちあげる?/日本人だけじゃない――[tl]と[kl]が同じに聞こえるアメリカ人/赤ちゃんは言語習得の天才/赤ちゃんはテレビで音は学ばない/完璧な外国語習得は無理?/《まとめ》
第7章 社会との接点を目指して――福祉音声学 099
消滅危機言語を救え!/現代社会に根付いている音声工学の技術/より効率的な外国語学習方法を目指して/失われる声を救う――マイボイス
エピローグ――さらなる視界へ(2015年10月12日 川原繁人) [105-107]
参考文献の紹介 [109-115] -
「キーフレーズ」
⭐︎音象徴
音から意味の連想が直接起きる現象
⭐︎阻害音と共鳴音
阻害音;カ、サ、タ、パ、ハ行
共鳴音;ナ、マ、ヤ、ラ、ワ行
日本語で濁点がつく=阻害音=角張ったイメージ
日本語で濁点がつかない=共鳴音=丸いイメージ
上記のように一般的なイメージを想起させることがある。
川原繁人 音声学、音韻学専門 -
#ようこそ「科学沼」へ
金沢大学附属図書館所在情報
▼▼▼▼▼
https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB19897504?caller=xc-search -
口の中、喉、鼻を使った空気の流れと破裂。
3つの音声学
・調音音声学
・音響音声学
・知覚音声学
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言語学者による本。各国の音と言葉を「文字で見える化」し、分析している。普段何気なく話している言葉や外国語との違いなど、あらためて解説されるとなるほど、と思えることがあった。
例えば「ん」という発音は、その後に来る言葉によって日本語でも何通りか違いがあること、日本語には必ず母音がついてくるが、英語では子音が続いたり母音がない言葉が多く存在すること、日本語の「ふ」は英語圏の人からは「う」と聞き分けがつきづらいなど。
このように、各国や地域による言語の特徴がそれぞれ違うので、その言語習慣の相性によって他国語の習得に得手不得手が出てくるという。残念ながら日本語と英語は相性があまり良くないようで、それも日本人が多く持つであろう英語アレルギーに繋がってしまう。
しかし本書ではこうした言語による違いはあれど、「完璧に」習得する必要はなく、慣れによってコミュニケーションは可能であるとまとめている。 -
面白すぎて2時間で読んじゃった。音象徴の話が特に興味深い
著者プロフィール
川原繁人の作品





