ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密 (岩波科学ライブラリー)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000296595

感想・レビュー・書評

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  • 岩波科学ライブラリーというシリーズははじめて手に取ったと思う。もっと硬めの内容かと思ったらそこらの新書よりよほどよみやすいハンディな本だった(これがたまたま最初にであったこの一冊の特徴なのかシリーズの特徴なのかわからないけど)。

    言語学徒が親となれば、子どもの母語習得過程のおもしろい用例や誤用をおもしろがり記録するのはまず当然の流れだけれど、その楽しみと奥深さをこのように一般の読者ともシェアできる一冊にまとめたのがすごい。巻末に読書案内&引用・参考文献表もあるので、言語獲得に興味を持った高校生・社会人から大学の言語学専攻入門者までひろくおすすめ。

    ざっと読んだ家人は本文結びに感激していた(「まだ(ことばの)旅が続いている大人」のひとりという自覚があるだけに…)。

  • ゆる言語学ラジオより。
    赤ちゃんの言語習得課程を科学的に説明した本の中でも最も親しみやすくわかりやすい。筆者自身の子どもの実例を載せているのが実感がこもっていてなお良い。

  • 子どもの言い間違いからわかる言語獲得の仕組みを説明した本。

    うちの子もよく言い間違いをしてたが「間違ってかわいいなあ〜」程度の感想しか抱いてなかったことが悔やまれる。子どもの言い間違いは、子どもが言葉を覚えていく仕組みを垣間見ることであって、言葉について深く考えるきっかけになっているとは!言い間違いには意識を払って、次子どもが言い間違いをした時には「なぜっ!?」って真剣に考えたいと思う。

  • 点々の正体、音が交換される言い間違い(音位転換)、動詞活用や単語の範囲の過剰一般化、しりとりにはメタ言語能力を必要とすること、など興味深い内容が盛り沢山だった。

  • 現在進行形で4歳の娘と日々暮らしている身として、本書の内容の多くは「あるある」である。しかしながら、よくよく考えるとこんなに面白いことを (主に彼女の脳内で) 展開している我が家の言語学者の一言一句をどれだけ見過ごしてしまっているだろうかと、妙な危機感を覚えた。気付きの一冊。

  • 6月8日読了。
    話し言葉でさらっと読めるけど、学術書ではないところがハーフ&ハーフ。
    娘が今3歳6ヶ月、発達の過程でなるほどと思うところ、驚くところなど、私がこの知識を得るにはちょうどよいタイミングだった。
    しかも英語圏の子どもたちが言語習得の過程で中学生の私たちと同じことをしていたり(過去形はなんでも-edって言っちゃうとか)、日本語習得のヒントを日本語習得している他言語話者から得たりとか、
    もっと踏み込んでこのフィールドから知識を得たら、英語学習の要領を得ることになる!という気になった。
    導入としてはよかった。ボリュームもほどほどでさらっと読み終えた。

  • 言語学者の著者が息子さんや知り合いの研究者の子供たちの言葉を取得していく様子を観察し、また海外の事例ももとにして、子供が言葉を学んでいく秘密を垣間見せてくれる。といってもすべてが解明されている訳でもなく、研究途上だし、全てが分かることもないだろうけど。子供たちは大人に教えられたことより、自分で言葉の規則を発見していく方に夢中になるのだな。自分で分かった言葉の規則を使って、それを拡大して聞いたこともない言葉を使っていく。そしてそれが合わないと修正していく。大人も子供の時にはそうやって言葉を覚えてきたのだが、もうそれを思い出すことはできない。

  • 「私たちはどうやって言葉を習得してきたのか?」、「日本語をマスターしたというのは、どんな知識を身につけたことになるのか?」といった問いに対して、子どもたちの言語習得の過程を観察することで迫る。

    自分は日本語を日常的に使う。特に不自由なく会話や読み書きができる。でも、よくよく考えると言語のルールは複雑だ。中学の頃だったか、授業で日本語の文法について学んだ。動詞の活用の仕方で未然形、連用形、終止形・・・etc。それらのパターンは一定かと思ったらカ行変格活用、サ行変格活用なんていう例外的なものもある。他にも丁寧語、尊敬語、謙譲語・・・キリがない。そんな複雑なルールなのに、なぜか多くの日本人は不自由なく日本語を使える。

    多くの大人は子どもに対して日本語の文法を教えるということはしない。にも関わらず、いつの間にか日本語を習得している。この本を読むと、子どもたちは周囲の人とのコミュニケーションの中で、自分で言語のルールを見出して、試行錯誤しながら運用し、身につけていっているんだとわかる。決して、大人の話すことをそのまま覚えているのではない。ルールを見出して、それを他の言葉にも適用するという高度なことをしている。だから例外的なルールがあると、間違えてしまう。大人にとって、そういったルールはごく当たり前のことだ。だから「なぜそんな間違いを?」と思う。

    冒頭で紹介されている例として、「これ食べたら死む?」という表現がある。「死ぬ」を「死む」と言ってしまうのは、よくあるらしい。ググると沢山出てくる。「死ぬ」はナ行の五段活用で「死ぬ」、「死なない」、「死ねば」と活用する。でも、ナ行の五段活用は「死ぬ」の一語のみ。日本語の中の例外的な言葉だ。子どもはそんなことはわからないので、それまでの日常会話で熟知している規則「飲む」、「読む」といったマ行の五段活用のルールを当てはめてしまう。結果、「死む」、「死まない」、「死めば」・・・となってしまう。
    子どもたちは自分で言葉のルールを見出し、とても論理的に運用していく。とても高度なことをしている。具体的に教えられたわけでもないのに。これがタイトルにある「ちいさい言語学者」だ。

    自分も子どもの頃に、こんな高度なことをやっていたはずだ。でも全く覚えていない。あの頃の天才はどこに行ってしまったんだろう? とても不思議に思う。

    本書の著者は言語学者で、自身の子どもとの具体的なやりとりが他にも紹介されている。それらを言語学の観点から、「この子は恐らくこのように推論して、この言葉を発したのだ」と解説している。読んでいてほのぼのする。世の中のお父さん・お母さんは、そういった子どもの試行錯誤を間近に見られるんだと思うと、少し羨ましくなる。


    本書は「岩波科学ライブラリー」の中の一冊。このシリーズは初めて読んだけど、とても読みやすかった。他の本も読んでみたい。

  • 子どもが日本語を身につける際出てくる色々な誤用の事例を分析することで、日本語の特徴と、日本語学習において辿る過程を考える本。
    「か」と「が」の関係を理解できる子どもが「は」と「ば」の関係を呑み込めないのは、実際haとbaが構造的に異なった音であるため。「倒れる」の代わりに「落ちる」を使ってしまうのは、「支える力がなくなって重力に耐えられなくなる」状態を表現する意図、等。言葉という道具はあまりに日常的で無意識に使ってしまうが、学習途中の視点を介することによって、日本語を使う時に自分の中でどういう仕組みが働いているのかを可視化できる。
    日本語をマスターしていない人という意味では[ https://booklog.jp/edit/1/406288013X ]で読んだような外国人日本語学習者の視点とも近い。実際この本でも外国人の視点には触れていて、連濁に関する「ライマンの法則」を見出したのは明治時代の鉱山技術者だという。表記や音韻や文法に関する視点は外国人学習者の視点、第6章の文脈や間接的表現に関する視点(グライスの会話の公理)は発達障害者の視点に近いかもしれない。
    エッセイ的に軽く読めるが、本気で深く知りたい人向けに引用文献・参考文献があるのがよい。

  • 子どもがどうやって言葉を獲得していくかのプロセスが書かれた本。言語学者である作者と、子どもとのかけ合いもすばらしく、そこから言語学の世界へともっていく展開もすばらしい。(というか、微笑ましい。)
    某言語教材のラジオCMで、「言葉は勉強するものではないんですね。」と言っていたが、まさに、子どもがどうやって言葉を獲得していくかが分かる。
    逆に言うと、「なんで分からないんだ!」ということも減るわけで、「こうやって教えよう」も分かるわけで、教師にも、親にも、もちろん子どもにもオススメできる一冊だと思う。

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著者プロフィール

大阪府出身。東京大学総合文化研究科教授。専門は心理言語学、とくに言語処理。著作に『ちいさい言語学者の冒険』(岩波科学ライブラリー)がある。近年は、言語発達過程の子供がどのようにその知識を運用するかに関心を寄せている。まだまだ続く息子の珍プレーに、喜ぶ日々。

「2022年 『子どもに学ぶ言葉の認知科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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