電柱鳥類学 スズメはどこに止まってる? (岩波科学ライブラリー 298)

  • 岩波書店 (2020年11月27日発売)
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感想 : 37
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  • 本 ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000296984

作品紹介・あらすじ

電柱といえば鳥、電線といえば鳥。でも、そこで何をしているの?カラスは「はじっこ派」?感電しないのはなぜ?——電柱や電線の鳥に注目したら見えてきた、その知られざる生態、電柱・電線の意外な姿、電力会社と鳥たちの終わりなき知恵比べ。あなたの街にもきっとある、鳥と電柱、そして人のささやかなつながりを、第一人者が描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 110ページ程の薄い鳥類学(?)の本なのに、第1章で25ページも使って電柱と電線の説明に費やしている。
    普通なら「早く鳥の話をしろ!」とイライラするところだが、ここが最も興味を惹かれ役に立つ知識となった。
    「電信柱」とは電話線を張り巡らせるための柱だが、「電信柱」という単語は街で見かける電柱を誰も「電力柱」とは言わない程に浸透してしまった。
    子供の頃から現在まで、犬や酔っ払いオヤジがおしっこするのは「電信柱」だ。

    この本を読んでから意識して電柱をじっくりと観察する日が続いている。
    「電力柱」や「共用柱」でない正真正銘の「電信柱」も何本か見つけた。

    私は鳥が好きなので普段から街を歩くときは鳥に眼が行く。
    カラスは電線というより電柱や腕金に止まっており、スズメは特に場所は選ばずに電線のどこにでも止まっているイメージがある。
    ハトは地面をひょこひょこ歩き回っているイメージが強く、電線に止まっている姿はあまり見かけない(気がする)。

    電柱に作られた鳥の巣も見かけないのだが、電柱の鳥の巣の撤去数が日本全体で年間に17.5万個もあると知ってびっくり。
    確かにカラスは金属のハンガーをたくさん使って巣を作るので、停電防止のために撤去は必要ですね。
    電力会社vs鳥達の攻防戦の話題は面白かったです(電力会社の方ご苦労様です)。

    散歩する時に、様々な鳥対策をした電柱・電線を見つけるのが楽しみになりました。

  • こんなに電柱・電線のことを知れたのは初めて

    電柱に種類があるなんて知らなかったし

    変圧器や碍子の役目もわかった

    この基礎知識は思わぬ収穫でした

    鳥にとってもまだ新しい文化ともいえる電柱

    その割には あらゆる部分を

    自分の都合のいい様に使い

    使われない様に工夫する電力会社

    知恵の戦いが面白い

  • 面白かった。タイトルがとてもすばらしい。が、申し訳ないことにP1〜25の電柱と電線の基礎知識のところが一番興味深かった。もちろん、本題の鳥との関係や、鳥の巣、電力会社の鳥との戦いなどとてもエンジョイした。ヴォリュームはとても少ないが、気分転換的にとてもリフレッシュになった。

  • 今週の本棚:渡邊十絲子・評 『電柱鳥類学 スズメはどこに止まってる?』=三上修・著 - 毎日新聞
    https://mainichi.jp/articles/20210213/ddm/015/070/027000c

    電柱鳥類学 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b539120.html

  • テーマ設定がまず面白すぎません?
    タイトル勝ち。
    そして確かに、なんでスズメとカラスでは違うところに止まってるんだろう?って思う。

    そもそも電柱に種類があるのも知らなかった。

    「見慣れると、町中にある3種類の電柱をすぐに見分けられるようになります。ただし、友人が『電信柱』と言ったのに対して『いや、あれは電信柱ではなく電力柱である』などと、したり顔で言ったりすると、距離を置かれる可能性があるので、口には出さず、心に秘めておくのがいいでしょう」

    という、丁寧なコメントに、笑った。

    そうだけど!でも、電柱にそこはかとなくロマンを感じてる筆者と、その語り口に引き込まれます。
    (鳥類学の人なのに、電柱の方に割と重きが置かれている気が……)オススメ!

  • 「現代の鳥たちは、人間が150年かそこら前に作り出した構造物を普段使いの足場としているのです。」電線をふとみあげると「かあ~」という鳴き声。ちゅんちゅんという鳴き声にふと視線をあげるなじみ深い光景。
    電柱があらわれるまではなかった光景だと思うと感慨深い。第1章の電線と電柱の基礎知識には、…知らなかったということも多々あり。
    すべての鳥が電線にとまっているのではなかったのね~とびっくりしました。カラスやスズメがどこに止まるのかまで観察されていて面白い。
    自然災害が多い日本では今後、電柱が地下に設置されるのかと思ったり。まだ先のことかもしれませんが、電力会社と鳥との共存を目指す工夫などが紹介され何気ない日常風景がおもしろくなりました。

  • 電線に鳥が止まっている、と言う風景は、長い地球の歴史の中においては、たかだか200年(この先電柱は地中化され、姿を消してしまうかもしれないから)。ほんの一瞬の出来事。
    その貴重な風景が見られる時間に私たちは生きている、という視点が斬新すぎる。衝撃的ですらあった。

  • 図書館で借りた。
    電柱にとまっている鳥に関する学問…という分野は実際には存在しないが、とにかく電柱に止まる鳥の本だ。
    まずは第1章が電柱について詳しく述べられているので、電柱に詳しくなる。(…そっちかい!)そこから「なぜ鳥は電柱に止まるのだろう?」「どんな鳥が電柱に止まるのだろうか?」などなどを深堀りしていく。
    カラスの暇つぶしは面白かった。また、電力会社 vs. 鳥たち の図式も読んでいて楽しい。
    通勤の合間に読む本としては非常に楽しかったです。

  • 電線にとまっている鳥の写真(あー可愛い)、電線の鳥の巣が撤去される様子(あーかわいそう)、電線を絶縁する部品である可愛い玉碍子の写真(??)、まえがき、とつづき本文は「1 電柱と電線の基礎知識」で電柱についての解説から読むことになり、あ、そこからなんだ…という衝撃が心地よい一冊。

    私は鳥に関する本を読むのが好きなので、タイトルに惹かれて手にとってみた。
    電柱と鳥類の関係を明らかにする学問、それが電柱鳥類学という学問だけど、じつはそんな学問はこの世にないらしい。この本によって勝手につくられた言葉だ。どうしてそんなことを研究するのか書かれたまえがきがとても良いのでそこだけでもいろんな人に知ってほしい、ポピュラーサイエンス系の本を読むひとにはそこだけでも共感できると思う。それを読むと、「なんでそんな役に立たない研究をするんだ」とか言われて肩身の狭い思いをしていた研究者たちや、「役に立たなければ研究してはいけないのか」とか言って世界の秘密を追い求めてきた人たちに思いを馳せることができておおいなる気持ちになれるのだ。

    「鳥類が電線と出会ったのは19世紀の中ごろ、そして電線はいずれ地中に埋まって消えてしまうかもしれないことを考えると、我々は電柱・電線と鳥が一緒にいるという貴重な時間を生きていることになるので、そんなものはぜひ見ておかなければならない。」とのことなのである。偉大な発明も世紀の大発見も、日常に潜む小さな不思議を見逃さなかった人たちによってなされたのだ、と思わずにはいられない。まえがきでこんなに感動してるのは私だけなのではないかとも思わずにはいられない。

    全体的な内容はちょっとあっさりめだなと思う部分もあるけど、なにぶん新しい研究分野なのでそんなもんかとも思う。論文が引用されてる硬い文章が苦手な人にはむしろ読みやすいはず。合間にあるコラムがけっこうたのしくて、なかでも著者が「難しいものを何かに例えて噛み砕いて説明する」ことの危うさを書いているところは何回も読み直した。
    「ミクロな物理現象を、目に見えるものや形あるものに置き換えて理解するくせをつけると、いつか理解の限界がきます。(略)わからなくてもそのまま飲み込ませる教育も必要だと最近強く感じるようになってきました。そういうものだと無理矢理飲み込んで思考を重ねていると、ある時、ふっと理解できる瞬間が来るからです。」
    外山滋比古さんの「乱読のセレンディピティ」で知ったことだけど、昔の日本の国語教育は、まだひらがなの読み書きができないうちから「天網恢恢疎にして漏らさず」なんてものを暗唱させていたらしい。最初はもちろん意味なんて分からずただ覚えるだけだけど、時間がたつにつれて理解が深まっていったという。読んだときにはほんまかいなと思っていたけれど、いまは思い出したらすんなり受け入れることができてしまった。おお、ふっと理解できる瞬間とはまさに今この瞬間のことなのか。

  • 488/ミ/

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著者プロフィール

北海道教育大学函館校国際地域学科 教授

「2020年 『はじめて学ぶ生物文化多様性』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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