脳の大統一理論 自由エネルギー原理とはなにか (岩波科学ライブラリー 299)
- 岩波書店 (2020年12月24日発売)
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感想 : 40件
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Amazon.co.jp ・本 (150ページ) / ISBN・EAN: 9784000296991
作品紹介・あらすじ
脳は推論するシステムだ! 知覚、認知、運動、思考、意識──それぞれの仕組みの解明は進んできたが、それらを統一的に説明する理論が長らく不在だった。神経科学者フリストンは新たに「能動的推論」を定義し、単一の「自由エネルギー原理」によって脳の多様な機能を説明する理論を提唱した。注目の理論を解説する初の入門書。
みんなの感想まとめ
脳の機能を統一的に理解するための新たな視点を提供する本書は、私たちの思考や感覚の仕組みを深く掘り下げています。特に「能動的推論」という概念を通じて、脳がどのように外部情報を処理し、誤差を修正するのかを...
感想・レビュー・書評
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脳による「意識や心」を解明する本だ。まず、脳は推論するシステムで、知覚とは無意識的推論を指すという定義から始まる。推論がキーワードだが、これは、たとえば、ハンバーガーを見ると、見ることで得られる視覚の感覚(外受容感覚)や、以前にハンバーガーを食べたときの経験から思い出される味覚の感覚(これも外受容感覚)に加えて、これを食べると血糖値が上昇するという内受容感覚が過去の経験から学習され、脳内に記憶されている。こうした感覚の想起により、食べたい、という感情が起こるというものだ。
ー 他人にくすぐられるとくすぐったいのに、自分でくすぐってもくすぐったく感じない。これは、自分でくすぐったときには皮膚感覚の予測によって感覚減衰が生じることが原因で起こるらしい。自分でくすぐっているときに触覚をつかさどる大脳体性感覚野を調べても、大きい活動は見られない。逆に、他人にくすぐられるときには感覚減衰が生じないため感覚野に強い活動が見られる。
ー 統合失調症は、幻覚や妄想などの陽性症状や意欲の低下などの陰性症状が見られる精神疾患である。統合失調症の患者では、自分が行った行為であるにもかかわらず、他人にさせられたと認知する妄想、すなわち「させられ体験」が生じることが知られている。させられ体験の症状も自己主体感の喪失として解釈できる。実際、させられ体験が生じているときの脳を調べると、前節で述べた催眠誘導の場合と同様、頭頂葉に大きな活動が見られる。この現象は、健常者では自己運動時に生じる頭頂葉での感覚減衰が統合失調症患者では生じないことによるものと考えられる。つまり、感覚減衰が起こると自己主体感が生じ、感覚減衰が起こらないとさせられ体験が生じるのである。
ー 赤ちゃんがどのような行動をとるかを調べる実験。この実験では、生後11か月の赤ちゃんが110人参加した。その結果、赤ちゃんは自分が予測した内容と観察した内容の差異に敏感で、この差を新しい学習の足場として使用していることが明らかになった。すなわち、赤ちゃんは期待に反する物体を見たとき、その物体についてよりよく学び、その物体をより多く探索し、その物体の振る舞いに関連する仮説を調べたのである。
推論を修正したり、減衰させる機能が脳にはある。直感的に空腹を認識し、食べたいという感情がわけば、身体は食料を求めて動く。経験的期待により冷蔵庫を開けるが、中には何もなく、その期待外れが、残念だという感情を起こす。アロスタシスは、私たちの脳の中にあるこのような知識(生成モデル)のもとで機能している。パターン認識が複雑化されて現出される状況でなければ、案外、心の動きなどシンプルで、我々人類が勿体ぶっているだけなのかも知れない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
発達障害や認知症を脳機能の観点から思考したくて手に取ってみたけど、予想以上に面白かった。私たちの脳は、観たいように見る。のかもしれないけど、、、感覚を使って推論の"誤差"を修正していくんだなと知ると、五感を意識する楽しさが湧いてきた。
推論ができるという事は、私たちの脳はそもそも"前提"を持っているということ?お母さんのお腹の中でその前提を養うのだとしたら、興味深いよね。
科学がどんどん進化して、もっと色んな理論が分かってくるのも楽しみ。 -
乾敏郎・阪口豊「脳の大統一理論」読了。脳は推論するための機関であり、様々な機能は自由エネルギー原理で説明がつくとの事。基本は自由エネルギーが最小化する方向に機能する。例えば知覚において自由エネルギーは認識・事後の確率とシャノンサプライズに等価である。シャノンの情報理論との重なりがある事にも驚いた。
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ちょっとすごいタイトルではないか。これに魅かれて、即購入した。しかし、ベッドの中で読むような本ではなかった。寝る前の15分ほどで少しずつ読んでいたけれど、まったく記憶に残っていない。熱力学も30年以上前だけれど、けっこうしっかり勉強したつもりだった。しかし、まったく残っていなかった。付録を読もうとしたが、途中であきらめた。で、今日後半を一気に読んで、けっこう残っているところがあるので、そこからいくつか。ホメオスタシスによる状態から離れようとするとそれを予測して体内の設定値を変更しようとするアロスタシス。何とも生物のからだはよくできているものだ。それにしても、体温36℃というのは本当にすごいことだと思う。それは、毎日生徒たちの体温を測っていて思うことだ。だれもかれもがほぼ同じなのだから。基本の六感情は怒り、恐れ、悲しみ、幸福、驚き、嫌悪だそうで、その中で心拍数が上昇するのは怒り、恐れ、悲しみなのだとか。驚きは違うんだろうか。というか、驚きは感情なんだろうか。なんだか、マイナスの感情の方が多いのもどうしてかなあと思う。自閉症では感覚信号が強くなり、健常者なら無視するような些細な出来事に大きく反応してしまう。なるほど。赤ちゃんの実験もまたおもしろい。浮いているおもちゃを見て、その後、自分でそのおもちゃを手にもって落としてみる。ちゃんと、おかしいなあと気づいているのだ。意識についてはまだ研究途中のようで、よく分からなかったが、期待しておこう。ところで、どこが統一理論だったのか。まあ、似た図が何度も出てくるから、同じ理論を使って、脳のはたらきを一気に説明しようとしているんだろうな。こじつけとかではないんだろうな。きっと。昔、中学生くらいのころ、自分統一理論というのを考えていたことがある。学校で見せる姿、塾で見せる姿、家庭で見せる姿、一人きりのときに見せる姿、それぞれいろいろ違うところはあるが、それらすべてが自分自身なんだと考えていた。当たり前と言えば当たり前のことだ。まあ、本書とは何の関係もなかったな。たぶん。
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科学の進歩は、私たちが脳という複雑な存在を少しずつ解き明かしているように見せますが、それを完全に理解するのは、素人にはまだまだ高い壁があると感じます。そうしたことを強く実感させられたのが、今回読んだ「脳の大統一理論」です。この本では、脳信号のシステムや、私たちがものを考えるメカニズムについて、最新の理論が紹介されています。しかし、その多くが専門的で、正直なところ私は細部まで理解することはできませんでした。
また、睡眠についての議論も興味深かったです。睡眠中に脳が記憶や情報を整理している、という話はよく耳にしますが、改めてそのプロセスが脳の機能を最適化するためにどれだけ重要かを学びました。確かに、十分に眠った後の朝は頭がクリアになり、物事を新しい視点で考えられることがあります。この体験と、理論的な説明が結びついた瞬間、自分の中で腑に落ちる感覚がありました。
内臓には独自の神経系があり、それが脳とは別に情報を処理しているとのこと。例えば、腸には膨大な神経細胞が存在し、これが感情や直感に深く関与しているそうです。確かに、「お腹の底から感じる」という表現や、何かを直感的に「お腹が教えてくれる」といった体験をすることがあります。この視点から考えると、内臓もまた「考える器官」であり、私たちの意思決定に一役買っているのかもしれません。
また、脳が持つ「仮説を立てる力」についての話も印象的でした。人間の脳は、情報をそのまま受け取るのではなく、そこから仮説を立てて推論をする仕組みを備えています。そして驚くべきことに、この能力は幼児の段階からすでに芽生えているというのです。
たとえば、幼児が新しい物体を手に取って遊び方を試行錯誤する姿を見ると、彼らが自然に「仮説」と「検証」を繰り返していることが分かります。子どもたちは目に見えるものだけではなく、「もしこうしたらどうなるだろう?」という目に見えない可能性にアクセスする能力を生まれながらに持っているのだと改めて気づかされました
(3歳の孫を観察しているとわかります)
本書を通して感じたのは、私たちの「考える」という行為が、脳という器官だけではなく、全身で行われているということです。脳が仮説を立て推論するだけでなく、内臓が感覚的な判断に寄与する。その協働こそが、私たちの「考える力」を支えているのでしょう。
さらに、幼児の頃から始まる仮説と検証の営みは、脳の成長とともに洗練され、大人になっても私たちの行動や意思決定を支える大切な要素として働き続けます。そうした根源的な能力を、普段は意識することなく使っているのだと思うと、私たちの身体の可能性に改めて驚かされます。
この本を通じて改めて感じたのは、私たちの脳はまだまだ未知に満ちているということです。そして、理解できないからこそ、考えることそのものが楽しいのだとも思いました。本書で触れられている理論は難解ですが、それでも少しでも「自分ごと」として捉えられる部分があると、脳の可能性や不思議さに感動を覚えます。
「脳の大統一理論」は、専門的で難解な部分が多いものの、脳についての新たな視点を得られる一冊でした。睡眠による脳機能の整理といった、自分の体感に結びつけて理解できた部分が特に印象的でした。脳の謎に触れることで、逆に自分の中にある小さな気づきを再発見できた気がします。 -
専門家用の難しい本ではなく,難しい内容をなるべく簡単に解説した本です.「フリストンの自由エネルギー原理」を,やさしく(それでも難しいかも知れません)解説しています.感覚,運動,精神,などの複数の問題が,この原理でどのように解釈されるのかがよくわかります.付録に,十分ではありませんが,少し理論的な話が書かれていて,そちらに興味がある方にも参考になるでしょう.解説書として傑出した出来だと思います.
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「予測する心」で触れた「自由エネルギー原理」を簡潔に
まとめて紹介する本。ただし、簡潔と簡単は決してイコール
ではない。専門用語だったり慣れない考え方だったりと
この本だけ読んで自由エネルギー原理を理解できる人は
それなりにこの分野で「訓練」を受けた人だけではないかと
思う。予測する心と一緒に読んで相補う、そういう感じで
私は読んだ。自由エネルギー原理自体は非常に気になる理論
なので、これからも追いかけることになるやも知れない。 -
本を読んでも自由エネルギー原理がどいうものかよくわからなかったけど興味深い理論であることは間違いない。
この理論に関する本がもっと色々出てきたらいいな。 -
自由エネルギー原理についての概略を知ることができた。脳の大統一理論は壮大であり、それを部分的にでも知ることができ、参考となった。
知覚と同時に内受容感覚から生じる信号の精度が向上した時に、意識はうまれるのではないか。というイメージは、納得感があるように感じた。 -
『予測する脳』の参考として読了。
ただ薄すぎる新書としてもう少し厚く書いて欲しい。 -
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AI、シンギュラリティの大元になっているのがこの本で言うところの自由エネルギー原理である。
大脳皮質の感覚、運動、認知(連合野)、モチベーション(内臓運動皮質)はループを形成しているだけでなくこれらの働きは「自由エネルギー原理」で説明できるというのが「大統一」ということらしい。
統合失調症、自閉症もこの理論で説明可能となる。発達障害、自閉症スペクトラムも同様な説明ができていくものと考えられる。(個人的にはきっかけであり、その後の生活の積重によるものだと思っているが)
「情動はこうしてつくられる ── 脳の隠れた働きと構成主義的情動理論」では「身体予算管理能力」と称されていたが要は生物の生存戦略とは「予測」の精度を如何に上げるかとうことなのだと思う。逆に考えればこの世は偏りがあり、それをうまく使えば「長寿と繁栄」(バルカン人の挨拶「バルカン・サリュート」)がもたらされる。 -
脳の情報処理の原理を説明する自由エネルギー原理を解説している。
数式、専門用語など、この分野に全く明るくない自分にとっては少々難しかった。
「運動も推論する。」
「運度は感覚信号の予測である。」が、印象に残った。
感覚信号を変える一つの例は”視線を動かす”こと。
視線を動かす(自分の身体を動かす)ことで観測する感覚信号を選択する。文字通り、ものの見方を変えるということ。
身体教育法が脳、神経系に働きかけ効果的に機能改善する理由が腑に落ちた。
その他、勉強になったのは以下の部分。
ミラーニューロンは他者の行為の意味を自己の行為を通じて理解する機能に関わっていると考えられている。
アロスタシスとはホメオスタシスの混乱が大きくならないように体内状態の設定値を予測的に変更したり、ホメオスタシスの乱れを予防したりする機能のこと。
自閉症患者の症状は脳内処理において予測信号の精度が低く感覚信号の精度が高いことにより生じる。
赤ちゃんも推論する。
予測した内容と観察した内容の差に敏感で、その差を学習の場として利用している。
つまり人間行動の基本原理は未来にサプライズが起きないように現在の環境を学習すること。
内容をきちんと理解しているかどうかは怪しいが、脳が予測誤差を最小化し、将来の成果の不確実性を最小化する行為を選択してサプライズを減らすということは、その生物の安全性を確保するためと考えると、人体が、ある種の有機的な機械のようにも思えてくる。 -
佐賀大学附属図書館OPACはこちら↓
https://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC04619334 -
「運動野からの信号を予測信号、筋センサからの信号を感覚信号とみなせば、α運動ニューロンは予測信号と感覚信号を比較して両者の差(つまり、予測誤差信号)を計算する役割を担っていると考えることができる。」
「多くの研究者は、運動野は筋に対して「運動指令」を送ると考えてきたが、能動的推論の立場では、運動野は運動を実行したあとの「未来の筋感覚」を送ると考える(これに対し、体性感覚野は「現在の筋感覚」を処理すると考える)。」
これは天動説→地動説くらいの衝撃でめちゃくちゃワクワクした。
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予測する脳について知りたくて読んでみた。
正直難しい。もう一度読みたい。
6章だけ飛ばした。 -
人間がどのようにして知覚しているのかについて理論の一つを学ぶことができた。個人的には一貫性があり納得できる内容だったように思う。
神経を通して推論や現実の感覚、またその誤差を送り、調整しているというのは驚き。 -
脳は常に指令だけを与えているのではなく、推論をしてその誤差は測っている。面白い観点だと思った。何かを認識することだけではなく、運動や目標志向性などにも推論が関与しているというのも驚きであった。運動にせよ、目標志向性にせよ、感覚信号の不確実性や推論の不確実性を最小化するように動いている。つまり、何事も不確実性を低下させるように自分でも意識的に生きると推論の精度が上がるのであろう。
運動に関しては武井壮が言っていたことを思い出した。どうすれば運動能力が向上するか?のような質問に対して、
「体を思った通りに動かすことを真面目に考える。まず、両手を両横方向に水平に開いてみる。自分は水平に開いているつもりでも実際は水平から少しズレていることがよくある。その時に、そのズレを意識的に修正した位置を体に覚えさせる。このような修正をあらゆる動きに対して行うことで、理想とする動きが実現できる体になる」
と答えていた。今考えればこれは自由エネルギー原理の推論の精度を上げていくような、生成モデルの正確さの向上に取り組むことなのだと理解できた。このようなことを意識してスポーツに取り組みたい。要は、自分の動きを第三者の視点で観察、分析し、修正することが基本となるのであろう。
とすると、この理解は運動に対する推論に留まらない。意思決定等の推論においても、自分の現在の生成モデルでは確実性が不十分であることを認め、ズレを修正していくことで理想の状態に脳や体が動いていくはずだ。理想の状態にはどうすれば到達するのか?理想の状態を作り出せている対象を徹底的に分析してマネる。そのような意識を強めていきたい。 -
一瞬オカルトな理論の話かと思っていたが、脳の仕組みを数理的に説明する野心的かつ大真面目な理論の話だった。ベイズ推論ベースの適応的制御理論のようで、非常に興味深かった。ホメオスタシスとアロスタシス。ただ2006年に生まれた理論でいかんせん新しいので、まだ理論体系の構築は途上も途上なのかなと。面白いので発展してほしい理論。ウィーナーのサイバネティックスを読んでる感覚だった。
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#ようこそ「科学沼」へ
金沢大学附属図書館所在情報
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https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BC04619334?caller=xc-search
著者プロフィール
乾敏郎の作品
