脳の大統一理論: 自由エネルギー原理とはなにか (岩波科学ライブラリー 299)

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  • Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000296991

作品紹介・あらすじ

脳は推論するシステムだ! 知覚、認知、運動、思考、意識──それぞれの仕組みの解明は進んできたが、それらを統一的に説明する理論が長らく不在だった。神経科学者フリストンは新たに「能動的推論」を定義し、単一の「自由エネルギー原理」によって脳の多様な機能を説明する理論を提唱した。注目の理論を解説する初の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 乾敏郎・阪口豊「脳の大統一理論」読了。脳は推論するための機関であり、様々な機能は自由エネルギー原理で説明がつくとの事。基本は自由エネルギーが最小化する方向に機能する。例えば知覚において自由エネルギーは認識・事後の確率とシャノンサプライズに等価である。シャノンの情報理論との重なりがある事にも驚いた。

  • ちょっとすごいタイトルではないか。これに魅かれて、即購入した。しかし、ベッドの中で読むような本ではなかった。寝る前の15分ほどで少しずつ読んでいたけれど、まったく記憶に残っていない。熱力学も30年以上前だけれど、けっこうしっかり勉強したつもりだった。しかし、まったく残っていなかった。付録を読もうとしたが、途中であきらめた。で、今日後半を一気に読んで、けっこう残っているところがあるので、そこからいくつか。ホメオスタシスによる状態から離れようとするとそれを予測して体内の設定値を変更しようとするアロスタシス。何とも生物のからだはよくできているものだ。それにしても、体温36℃というのは本当にすごいことだと思う。それは、毎日生徒たちの体温を測っていて思うことだ。だれもかれもがほぼ同じなのだから。基本の六感情は怒り、恐れ、悲しみ、幸福、驚き、嫌悪だそうで、その中で心拍数が上昇するのは怒り、恐れ、悲しみなのだとか。驚きは違うんだろうか。というか、驚きは感情なんだろうか。なんだか、マイナスの感情の方が多いのもどうしてかなあと思う。自閉症では感覚信号が強くなり、健常者なら無視するような些細な出来事に大きく反応してしまう。なるほど。赤ちゃんの実験もまたおもしろい。浮いているおもちゃを見て、その後、自分でそのおもちゃを手にもって落としてみる。ちゃんと、おかしいなあと気づいているのだ。意識についてはまだ研究途中のようで、よく分からなかったが、期待しておこう。ところで、どこが統一理論だったのか。まあ、似た図が何度も出てくるから、同じ理論を使って、脳のはたらきを一気に説明しようとしているんだろうな。こじつけとかではないんだろうな。きっと。昔、中学生くらいのころ、自分統一理論というのを考えていたことがある。学校で見せる姿、塾で見せる姿、家庭で見せる姿、一人きりのときに見せる姿、それぞれいろいろ違うところはあるが、それらすべてが自分自身なんだと考えていた。当たり前と言えば当たり前のことだ。まあ、本書とは何の関係もなかったな。たぶん。

  • 専門家用の難しい本ではなく,難しい内容をなるべく簡単に解説した本です.「フリストンの自由エネルギー原理」を,やさしく(それでも難しいかも知れません)解説しています.感覚,運動,精神,などの複数の問題が,この原理でどのように解釈されるのかがよくわかります.付録に,十分ではありませんが,少し理論的な話が書かれていて,そちらに興味がある方にも参考になるでしょう.解説書として傑出した出来だと思います.

  • 「予測する心」で触れた「自由エネルギー原理」を簡潔に
    まとめて紹介する本。ただし、簡潔と簡単は決してイコール
    ではない。専門用語だったり慣れない考え方だったりと
    この本だけ読んで自由エネルギー原理を理解できる人は
    それなりにこの分野で「訓練」を受けた人だけではないかと
    思う。予測する心と一緒に読んで相補う、そういう感じで
    私は読んだ。自由エネルギー原理自体は非常に気になる理論
    なので、これからも追いかけることになるやも知れない。

  • 本を読んでも自由エネルギー原理がどいうものかよくわからなかったけど興味深い理論であることは間違いない。

    この理論に関する本がもっと色々出てきたらいいな。

  • 自由エネルギー原理についての概略を知ることができた。脳の大統一理論は壮大であり、それを部分的にでも知ることができ、参考となった。
    知覚と同時に内受容感覚から生じる信号の精度が向上した時に、意識はうまれるのではないか。というイメージは、納得感があるように感じた。

  • 『予測する脳』の参考として読了。
    ただ薄すぎる新書としてもう少し厚く書いて欲しい。

  •  AI、シンギュラリティの大元になっているのがこの本で言うところの自由エネルギー原理である。
     大脳皮質の感覚、運動、認知(連合野)、モチベーション(内臓運動皮質)はループを形成しているだけでなくこれらの働きは「自由エネルギー原理」で説明できるというのが「大統一」ということらしい。
     統合失調症、自閉症もこの理論で説明可能となる。発達障害、自閉症スペクトラムも同様な説明ができていくものと考えられる。(個人的にはきっかけであり、その後の生活の積重によるものだと思っているが)
     「情動はこうしてつくられる ── 脳の隠れた働きと構成主義的情動理論」では「身体予算管理能力」と称されていたが要は生物の生存戦略とは「予測」の精度を如何に上げるかとうことなのだと思う。逆に考えればこの世は偏りがあり、それをうまく使えば「長寿と繁栄」(バルカン人の挨拶「バルカン・サリュート」)がもたらされる。

  • 推論を始める時、脳はまず外環境について何らかの想定を置き、その想定が正しければこんな感覚信号が得られるのではないかという予測信号を生成する。次に、この予測信号と実際に受け取っている感覚信号を比較すると、その誤差が小さくなるように元々の想定を更新する。そして、新しい想定のもとで再び予測信号を生成して感覚信号と比較する…という計算を繰り返して、最終的に予測誤差がゼロになったときに、外環境の推定結果として知覚が得られる。

    上記が脳が推論する基本原理だという。

    ここまででもなるほどと思うのだが、この本が面白いのはその先で、この原理があらゆる脳の機能(ひいては身体活動)にも適応できると主張する点だと思う。

    たとえば「運動」。学校では、人間の脳は「こういう運動をしろ」という指令を各器官へ出し、逆に各器官は自分が得た感覚を脳へ送るものだと習った。
    しかし、先に述べた原理を適応すると次のように考えられる。
    脳はまず、これからやろうとしている運動を実際に実行したときに受け取ることになるだろう信号を予測し、その「予測信号」を発する。それに対して予測誤差をなるべく最小化するように筋を収縮させる。
    これが運動の正体というのである。

    こうした考え方の是非については私は専門外なのでわからないが、今までの常識が揺さぶられるような感覚が味わえてとても面白く読めた。

  • 脳の動作の根本的な目的を、自由エネルギーの最小化であるとする理論(自由エネルギー原理)について述べた本です。
    脳は、①外界への仮説を形成、②外界からの感覚信号の情報を受け取る、③形成した仮説が正しい場合に得られるであろう感覚信号と、実際に受け取った感覚信号との違いを計算、④計算結果に応じて外界への仮説を修正、というサイクルで稼働しているという話で始まります。
    また、"注意を向ける"という行為は、どの感覚信号の精度を高めるかを決めることであり、注意を向けられた感覚信号の予測誤差は、仮説の修正に対して重要視されることとなります。
    自由エネルギー原理の面白いポイントは、運動制御という一見推論(仮説形成)には思えない行為も、運動の目的達成時に得られるであろう筋繊維の状態(での筋センサから得られる信号)の推論と、実際に筋センサから得られた信号との差を小さくすることで実現されているという主張です。
    知覚や運動だけでなく、パーキンソン病や統合失調症などの疾患も自由エネルギー原理で説明できているため、脳機能の統一的な理論になり得る可能性があるそうです。
    しかし、理論ではまだ説明していない(できない)機能も大いに残されているであろうし、今後も様々な研究が進められていくのだろうと思います。
    内容としては面白かったですが、やはり文庫本であるため数式はあまり触れれず、お気持ちだけの理解になってしまいました。時間がある時に数式をきちんと追う「自由エネルギー原理入門」も読めたらいいなと思います。

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著者プロフィール

1950年生まれ。追手門学院大学心理学部教授、京都大学名誉教授 著書に『感情とはそもそも何なのか…現代科学で読み解く感情のしくみと障害』(ミネルヴァ書房、2018)、『イメージ脳』(岩波書店、2009)他。

「2019年 『談 no.114 感情身体論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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