「死んだふり」で生きのびる 生き物たちの奇妙な戦略 (岩波科学ライブラリー 314)
- 岩波書店 (2022年9月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000297141
作品紹介・あらすじ
天敵から逃れるために動きを止めて「死んだふり」。でもそれ、意味あるの?ーー誰もが疑問に思いつつ誰も答えることのできなかった難問に、昆虫学者が立ち向かう。本当に生き残りやすくなる?すぐ死んだふりする虫はモテない上にストレスに弱い!?起き上がるタイミングはどう決める?謎多き行動を熱量高く掘り下げる、国内初の入門書。
感想・レビュー・書評
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「恋するオスが進化する」がオモロかったので借りてみた。
誰も研究しなかった「死んだフリ」。でもヒト、サル、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ヘビ、カエル、昆虫、果てはミジンコまで様々な動物が行う死んだフリ。著者はパイオニアとして死んだフリの世界を調べていく。
実験対象としてのコクヌストモドキが本書のメインキャラクターを張っている。ロング系(死んだフリする派)ショート系(死んだフリしない派)。
実験のため人為的に数世代を経てより特徴を濃くした2集団を作ってるわけですけども、自然界でもやはりする派としない派がグラデーションで存在してるわけですよね。ドーパミンや天敵の種類、気温など様々な条件で異なるのは当たり前といえば当たり前ですが私としてはやはり一つの昆虫の種類の中に存在するにはあまりにも特徴の幅が広すぎる。改めて言うことでもないですがやはり生き物は「種」なんかでは勿論なく、「個」ですらない(一部の完全コピーの蟻を除けば有性生殖である限り死んだらその個体は終わりだから)、遺伝子の乗り物なのだなぁと感じました。(本書のテーマ、死んだフリからは外れる話ですが)
20数年間の研究成果とその過程を素人向けに簡潔に書いてくれてはいるんですが(132ページのめっちゃ薄い本です)仮定とその証明結果が素人にとって「うん、そうだよね」というものが多く意外性にちと欠けました。(死んだフリは生き残りの利点あり、でも異性に会いづらいデメリットあり。飛翔能力と死んだフリの反比例。ドーパミン。など。)
実際の研究仮定なので「仮定とその実験結果に意外性がなかった」なんて感想はイチャモン以外の何物でもなく自分で書いてても「ひどくない?」とは思うんですがあくまでも読み物の評価としましてね。ええ。
唯一の意外性は英国研究者から売られた喧嘩(死んだフリっていうか毒物であるベンゾキノンをより強く感じさせるためだろ?)を調べようとしたら二度三度襲われても放出しないのにいよいよ天敵に食べられる時に放出する(意味ない)ってやつですかね。とはいえそのベンゾキノンは辺りにいる蛾とその卵を殺してしますそうな。なんか意味あるんでしょうねぇ。でも蜘蛛は死なないんでしょ?
ここは「これからの研究に期待する」となってますので将来いつかどこかで見聞きするやもしませんね。(私が150歳くらいまで生きてたら)
読み物としては3。
但し筆者の20数年間のニッチな分野での研究に敬意を表すとともに、1種類の昆虫に見られる多様性から「やっぱ生き物に種も個もねぇな。リチャードドーキンスの言う通りだよ。」と確信を深めることが出来たので1足してトータル星4です。 -
「死んだふり」を調べてみたら面白いかも。興味をもった著者が研究をしていく。
調査のしやすさと研究事例の多さから虫について調べてみる。検証していくうちに、じゃあこれはどうなってるのか?と出てきた疑問についてどんどん調べていくのが面白い。
研究が深くなるにつれ他の分野の専門家に協力を仰ぐことで学問がつながっていくのも興味深い。 -
あとがき「研究をしている人間が、また物事を人に伝えようとする人間が、まず自分が面白がってそのテーマに取り組まないことには、その面白さは決して人には伝わらない。(131頁)」行動特性を活かした害虫駆除から、死んだふりの生存戦略、虫にもあるパーキンソン症候群に似た例に虫からヒト疾患対策に役立つ遺伝子情報が得られるかと、話が展開していきました。ところどころ登場する虫の脳解剖する昆虫生理学の先生、虫のトレッドミルを作り歩行距離を測定する工学系の先生、検証を支える隣接あるいは異なる分野を知ることもまた楽しいです。
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意外と深い死んだふり。
研究戦略と実験方法は面白い。
誰もがやらないテーマを見つけて研究するところは見習わないといけない。 -
今まで読んだ中で今作の先生が一番幸せな研究人生だと思いましたq
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アリモドキゾウムシとハエトリグモという身近な昆虫を選び実験を行い、海外の論文に投稿する、というプロセスが丁寧に書かれている。
生物学を専攻する教育養成系大学の学生にとっては、まず読んでみるといい。さらに小中高の教員にとっても、児童生徒に生物の実験を行うことの基本を教えるいい参考となるであろうと思われる。 -
何と「死んだふり」の本です。
確かに昆虫はよく死んだふりするかもしれません。しかしそれを研究する人がいるとは。とても面白いです。
やっぱり研究というと、どう定量的に評価するか、と言うことが重要ですが、死んだふりをどう評価するのか。その辺の考え方が楽しいですね。
そして何でもやってみると奥が深いというか何というか。虫の死んだふりとヒトのパーキンソン疾患とが関連があるかも、なんてことが分かってくるとは。面白い本でした。