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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784000610070
みんなの感想まとめ
第一次世界大戦の開戦原因を多角的に再検討する本書は、歴史の通説を問い直し、当時の社会状況や政治的背景を深く掘り下げています。著者は多様な学問領域からの視点を持ち寄り、帝国主義の終焉や経済のグローバル化...
感想・レビュー・書評
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タイトル通り第一次世界大戦の開戦原因を再検討する内容。
人口に膾炙している「三B政策と三C政策の対立」や「三国協商と三国同盟の秘密外交」等が事実足り得るか、様々な観点から検討している。
様々な論点で検討され、内容は難しめだが、しかしかなり納得感がある。本書のなかでも触れられているが、我々は構造を単純化したり、結果から逆算して原因を求めてしまう。だが、つぶさに検証していくと、意外と反証ができてしまう。
本書では最終的に、経済のグローバル化による社会構造変化による失業者対策不足、メディアの排外報道、等で高揚したナショナリズム(愛国主義も転化し吸収)が政治家や君主の政策意思決定に影響したと結論づけている。研究においては見過ごされやすい、言語化されにくい時代の空気(恐怖や憎悪、国内分離独立の動きといったもの)があり、対外戦争はそれらから目を逸らす役割も果たしたし、それこそが原因たる戦争熱だと論じる。
また、我々は言語化された論理的思考よりも、非言語的な情緒で判断することが多いと指摘する。なるほどなとものすごく納得するし、盲点だと思う。
歴史に対し、「本当にそうか?」と批判的思考を持つことの重要性を痛感させられた一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第一次大戦の開戦原因(開戦責任ではない)について、様々な専門分野の学者がそれぞれの視点から考究するもの。
研究のキークエスチョンとして、サラエボ事件から開戦までの当時者の拡大、イタリアと他国の行動の相違、躊躇・逡巡と開戦への傾斜、イギリスの開戦決定、平和主義思想の無力さ、異なる状況下での戦争熱の共通性をあげた。
その上で、植民地獲得競争との関係、経済的相互依存関係(ノーマンエンジェルの大いなる幻想が有名)、国際分業論、平和主義運動、民衆思想・感情・ナショナリズムなどが研究の対象となった。
結論を言うと、国民感情・ナショナリズムの果たす役割に決定的な重みを与えている。
・植民地競争もうまく外交的にマネージされた
・ブロック経済で植民地を囲うよりも相手本国との自由貿易の方が利益が大きい。特にドイツ
・経済的相互依存によって、自国GDPよりも輸入が増えたイギリスの危機感・不満感は大きく、made in Germanyという書籍がドイツの経済侵略論に火をつけ、実際の侵略を想定する小説も流行って両国民の敵愾心が増していく
・平和主義や労働者間の連帯は大きな動きとして存在したが、ナショナリズムと併存しており、自国が侵略された場合には、自国防衛を第一にするらという議論
・ボーア戦争でも戦争熱が大変なことに
結局、どこの国も民主の戦争熱に押される形で戸惑いながらも意思決定を行っていったという結論となっている。
確かに、これまでも第一次大戦の経緯論を読んできて、危機を回避するたびに怒りや不満が蓄積し、そのガスのような空気に一気に点火されると言ったような雰囲気の圧力が開戦原因に至ったというのは体感的に納得できる。イギリスの与野党の政治家が八月初旬にドイツとの開戦に踏み込まなかったら、議会ではなく議会を取り巻く民衆に倒されるという危機感、これは太平洋戦争に突入しなければクーデターが起こっていたかもという当時の宮中の危機感と同根かもしれない。
そうなると、今を生きる我々の教訓としては、ガスを溜めないように、少しずつ放出して形作っていくことが求められるということであろうし、ナショナリズム或いはナショナリズム的なものがいかに危険なものか認識するということであろう。そういう意味では、スキャンダルやらマイナカードやら瑣末などうでも良いイシューにエネルギーを使う日本の政治というのはある意味、危機の安定性はあるのかもしれない???? -
第一次世界大戦開戦理由の教科書的通説(帝国主義の末路)を検証し、当時の社会の姿を描くことがこの本の主眼である。書き手が大戦を専門とする近代史の学者ではなく、経済史などを専門とする多様な学者であることがこの本の出色であろう。そのため、この本によって描かれる時代は、帝国主義外交の盛衰、グローバル経済の発展、平和主義運動の台頭、ナショナリズムの過熱化と様々である。開戦理由をああでもない、こうでもないと逡巡する点がある意味魅力である。
外交努力はなされ、経済的に戦争は損であるという考え方も流通していたのに戦争は起きてしまった。この本から得られる教訓は、「戦争なんて起こらないと油断してはならない」ということだと思われる。l
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