自由という牢獄――責任・公共性・資本主義

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000610193

作品紹介・あらすじ

二〇世紀末以降の今日、十分に許容度の高い自由な社会に生きているはずのわれわれは、しかし、どこか空虚で奇妙な息苦しさを伴う、ある意味で「過剰な自由」のなかに置かれている。これはどういうことか。大澤自由論の理論的な輪郭が最もクリアに提示される本書は、単行本化が待ち望まれていた「自由の牢獄」「責任論」「"公共性"の条件」という三つの重要論考と、資本主義と人間の自由をめぐる書き下ろし論文で構成。不平等や格差の問題の根底にある「自由」という難題こそが、いま、最もアクチュアルで本質的な主題として論じられる。

感想・レビュー・書評

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  • 何物にも囚われない自由とはなんであろう。

    特殊な公共体の利害やそれに関する立場に囚われず自ら自分自身の悟性を用いることである。それは理性の公共的使用であり世界市民という存在となる。特殊な公共体の利害やそれに関する立場に囚われてあることを理性の私的使用といっている。自らの利害や立場もそれに囚われていれば自分自身が理性の私的使用である。

    では自らの自分自身の悟性を用いるとはどういうことか?それは自己省察から帰納することである。自ら自身の悟性を用いる勇気を持てとは自己省察から帰納する勇気を持てということである。

    最も私的な自己省察から最も公共的な世界市民はありえるというなかなか明快で面白い指摘だった。

    人間の倫理や遊侠は高級なものであるが、それが商品化された途端に低級なものに変質してしまう理由が書いてあった。目的(遊侠と倫理)があり手段(貨幣)がある。高級な行為または高級な労働(遊侠と倫理)が商品化された途端に手段(貨幣)に目的が服従する転倒が起こるという。それによって高級なものとしてある遊侠や倫理は低級なものへ転落する。資本主義における陥穽であるという。

    人間自体にも言える。労働として輝きがあっても、それが商品化された途端にくだらないものへ堕ちてしまう。労働力の商品化とは資本主義のことであるがそれを乗り越えなければ社会主義の理想のようなものへは決していたらないだろう。

    宇野弘蔵は社会主義とは労働力の商品化の廃絶のことだと言っていたが現在の世界も同じ課題を持っている。

  • 「貨幣的なインセンティブを加えたことで、道徳や規範が変質してしまうことがある。」第4章 不・自由を記述する赤インク が、一番読みやすいし面白い。特に、4自由の蒸発の1市場による道徳の締め出し。文庫化もされているので、そちらも欲しい。

  • 哲学

  • 151.2||Os

  • 文章はそんなに難解な印象はないのに、なかなか理解が追いつかないのはやっぱり僕の問題だろうなぁ・・・。要約するのは難しいけど、自由が拡大していくことで生まれる不自由みたいなことなのかも。特に第四章についてはその印象が強い。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784000610193

  • ジジェク、ラカン、カント。酒鬼薔薇、オウム、震災。

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著者プロフィール

大澤真幸(おおさわ・まさち):1958年、長野県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。思想誌『THINKING 「O」』(左右社)主宰。2007年『ナショナリズムの由来』( 講談社)で毎日出版文化賞、2015年『自由という牢獄』(岩波現代文庫)で河合隼雄学芸賞をそれぞれ受賞。他の著書に『不可能性の時代』『夢よりも深い覚醒へ』(以上、岩波新書)、『〈自由〉の条件』(講談社文芸文庫)、『新世紀のコミュニズムへ』(NHK出版新書)、『日本史のなぞ』(朝日新書)、『社会学史』(講談社現代新書)、『〈世界史〉の哲学』シリーズ(講談社)、『増補 虚構の時代の果て』(ちくま学芸文庫)など多数。共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』(以上、講談社現代新書)、『資本主義という謎』(NHK出版新書)などがある。

「2023年 『資本主義の〈その先〉へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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