誰がネロとパトラッシュを殺すのか――日本人が知らないフランダースの犬
- 岩波書店 (2015年12月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000610858
感想・レビュー・書評
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原作の意図とは異なる解釈で、ラストシーンが描かれていたとは知らなかった。キリスト教的な、天に召されて救われるという事ではなかったとは・・・。文学は、異なる文化的背景により、解釈されていく。それはそれで、正しいあり方なのではないかと思う。
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フランダース地方、雪、ほとんど、降らない。
思わず片言になるくらいの衝撃。
えええーそれじゃあネロとパトラッシュは何であんな目に?!
その答えはここに。
その先、作者の生涯もなかなかに劇的。
しかしこの本、書いたのはフランダースの方なのだけど、小説と実際の環境だけでなく、アメリカの映画版、そして日本のアニメ版との比較もされている。
連続アニメについては、1話ごとに内容を書く熱の入れよう(日本のアニメ大好きな方らしく)。
実は私はあのラストシーンとオープニングくらいしか見たことがないのだけど、よくわかりましたありがとう。
フランダースでこの作品を観光に活かすかどうかという章は、なかなか考えさせられる。
観光したがる日本人は毎年大勢行くそうなのだけど、フランダースの人からすれば、過ぎた昔の貧しい暮らしを掘り起こされるなど迷惑だし、あちこちオランダと混同しているし、ていうかまずその作品知らないし!だそうで。
確かに、日本も今更サムライハラキリで何でか中国風の飾り付け、なんて映画を見たら叩きまくるだろう。
むしろ、アニメの幻想だけでそれを求めて観光に行くのがちょっと幼稚なのかも…いや、私も知らなかったら見たいと思うけど。
ところで、かなり強いこのタイトル、あまり内容に合っていない気が…。
最後の日本の方の解説には沿ってたけど。
この解説が私には一番面白かった。
ハッピーエンドに改変した翻訳もあったとは! -
自分の文化が海外からどの様に見られているかを目の当たりにすることは,心地よいことも心地悪いこともあって,外国の人からしたら「賞賛」の対象でも,自国民としては「それはちょっと…」って事は当然あって,「フランダースの犬」が,まさにフランダースの人々にとっては触れてほしくない,あるいは見て欲しくない姿なのだろうとは容易に想像がつく.日本人だっていつまでも「スシ,ゲイシャ,ハラキリ,サムライ」では,「そりゃちょっと…」となるだろう.
とはいえ,フランダース地方を訪れた経験からすると,アントワープは,大変友好的だったと言う印象しかなくて,日本で11年働いていたと言うウェイターに,日本語で見所を教えてもらい,ノートルダム大聖堂では,後ろから「日本の方ですか?」ときれいな日本語で話しかけられ,振り向けば青い目の金髪の青年が,日本語のパンフレットを手渡しながら「今日はオフィシャルな日本語ツアーがない日なんですが,私で良かったら案内します」と,ガイドを引き受けてくれたり,Dekonink目当てに入ったビアバーでは,周囲の皆さんから「日本から来たのかぁ!」と歓迎してもらい…フランダースの犬なんか無くても1000%楽しめたわけで,筆者が言うほど,日本人はアントワープに失望してないですよ,とは伝えておきたい.