21世紀日本の格差

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000611152

感想・レビュー・書評

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  • 20170520〜0606ピケティをやっと読み終えたので、その関連本として。格差論の提唱者ですし。
    日本では老々格差が深刻であるとのこと。その対策として、橘木氏は、高齢者を対象にした本格的な生活保護制度を提唱している。中長期的には、国民全員を、公的年金制度に加入させるべきだ、とも。では加入者全員が、適切な金額の年金保険料を払うべきだろう。

  • ジニ係数=高所得者と低所得者の差の大きさ
    貧困率=貧困で苦しむ人の和。所得中位者の半分以下の所得を貧困とする。
    ピケティは、富裕者の動向に注目する。

    最低賃金の上昇は失業率を高めるか。反論はモノプソニー理論。買い手が少数なら、賃金を上げても雇用の減少はない。

    遺産相続、家庭環境、能力分布などの初期条件がどの程度所得に影響しているか。

    累進所得税の貯蓄や投資への影響をどう見るか。

    リバタリアニズムの3つの類型
    1,ノージック、夜警国家。2,ハイエク、フリードマン、経験的リバタリアニズム、競争の尊重による効率性の追求。3,ブキャナン、公共選択学派、公共部門の非効率性。
    リベラリズムの4つの類型
    1,功利主義、ミル、ピグーの厚生経済学など、パレード最適配分を重視する。2,ロールズ、セン、ドゥオーキン、自由の尊重と公平、社会で最も恵まれない人の利益を最大にすること。3,生まれながらの不平等にも配慮する。4,ケインズ、ベヴァリッジ、混合経済論(官民並立の経済)、福祉国家論。

    経済成長と格差是正はトレードオフか。
    スウェーデンと米国、日本を比べると必ずしもトレードオフとはいえないが、そういう傾向は多い。
    グレート・ギャツビーカーブ=親の所得格差が次世代の所得格差に連鎖する(教育、遺産など)。世襲資本主義。
    ピケティーの資本課税は資本の蓄積に対して悪影響。

    資本の蓄積が多いほど経済成長率は高まる=カルドアの分配理論。
    金融市場が効率的である必要がある。効率的であればあるほど資本収益率が高まるので、r>gになる可能性が高い。

    トリクルダウンは効かない理由=景気循環によって、裾野に広がる前に生産が縮小する。一人勝ちの理論。勝つ人は一人だけなので裾野に広がらない。

    格差の存在が経済成長率を低めている。2014年OECD調査。格差があると、低所得者の労働意欲が高まらず、生産性が上がらない。教育投資に対する意欲、インセンティブが少ない。

    直接税より間接税のほうが税の中立性が高い(消費を歪めない)。正しい直間比率。消費税の逆進性に対しては軽減税率。

    高齢者の資産格差が大きい。年齢を重ねるほど格差が拡大。

    高齢者向けの公的扶助制度。不正受給への対策。高齢者なら扶助に抵抗がない。

  • 格差問題に関わる事項につき、各国で話題になっている学者の著作を例に出して紹介していく本。
    ピケティの解説は非常にわかりやすい。あの分厚い本の要点がわかりやすくまとまっている。ただピケティのエリート的出自とか、フランスの学歴社会が高度であるとか、繰り返すのはいらない。学歴社会なのはどこも同じでしょう。口に出さないだけで、表面化してないだけでどこも一緒。蛇足です。
    序盤紹介した世界の格差から、日本の格差の紹介に移り、様々な問題にからむ格差をわかりやすく解説している。非常に読みやすい。

  •  昨年の「ピケティ狂騒」以後を冷静におさらいした研究。
     書かれていることはどれももっともなので、取り立てて異論はない。
     本書の主張を一言で言えば、「格差の問題は貧困の問題」ということ。本書は経済に議論を絞っているが、政治の面で見れば、貧困の問題を解決しなければ、富裕層への憎悪が高まり、治安が悪化する。
     介護殺人、孤独死、宗教対立を装っているテロも、底辺には貧困問題がある。
     そういうことを、なぜ富裕層は危険に感じないのか、それがわからない。自分たちの宅地を塀で囲めば済むと思っているのだろうか。
     ケネディ大統領の就任演説の一節は、今でこそ、脚光をあびるべきと思う。
     " If a free society cannot help the many who are poor, it cannot save the few who are rich."

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プロフィール

橘木俊詔(たちばなき・としあき)1943年兵庫県生まれ。小樽商科大学卒業。大阪大学大学院修士課程修了。ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授,同志社大学教授などを経て,現在京都女子大学客員教授,京都大学名誉教授。専門は労働経済学,公共経済学。元日本経済学会会長。著書:『21世紀日本の格差』(岩波書店,2016年),『日本人と経済』(東洋経済,2015年),『「幸せ」の経済学』(岩波現代全書,2013年),『女性と学歴』(勁草書房,2011年),『日本の教育格差』(岩波新書,2010年),『女女格差』(東洋経済新報社,2008年),『格差社会 何が問題なのか』(岩波新書,2006年),『日本の経済格差』(岩波新書,1998年)など多数。

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