介入のとき コフィ・アナン回顧録 下

  • 岩波書店 (2016年11月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784000611626

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  • 元国連事務総長でありノーベル平和賞を受賞した著者の回顧録。

    彼は「本当の緊急時には、国家主権よりも人権が優先されるべきである」ということを主張し続けた。
    一見美しいこの立場は、実は「ジェノサイドなどの人道危機においては、国連加盟国は受入国の同意がなくても集団で軍事介入すべき」という厳しさと表裏一体でもある。

    アナン氏はルワンダで国連軍がなにもできなかったという痛恨の記憶を胸に、多くの官僚的抵抗を乗り越え「保護する責任」という概念を国連に導入していった。

    アナン氏は、ただしその条件として国連安保理の決議の必要性を徹底した。常任理事国(とくに米中露)が一致することはほとんどない。国連の機能不全を一番知っていたのはアナン氏自身だったかもしれない。

    「東欧の盟主」でありたいロシアが絶対反対を貫いたコソボへの軍事介入。このときの米オルブライト長官とアナン氏との会話が印象的。「・・・オルブライトは『あなたは国連事務総長で、私は米国国務長官、これが現実です。しかし、安保理の採択を仰いだら、ロシアは拒否権を行使するでしょうから、犠牲者は増えるばかりです』と認めた。私は何も言わなかったが、心中同意していた。」(P.112)

    それぞれ譲れない立場がある。平和主義者と軍国主義者の争いというような単純な話ではない。
    ちなみに、日本についての記述は皆無・・・。

  • 元国連事務総長

  • 各国の国内政治や利害を背景にした複雑な意見対立が繰り広げられる国連という場において、確かな成果を挙げるためにはどうすればよいのか?

    アナン氏が事務総長としての任期を含む国連での長い勤務において、この問いにどのように答えてきたのかを、非常に生々しいやり取りや事態への対応の記録を通じて語っている。

    まず、国連という組織の果たすべき役割を人間の安全保障に置き、世界平和という抽象的かつ包括的な概念を、より行動の規範に近いレベルにまで具体化したということが非常に重要だったのではないかと思う。アナン氏は、「国連憲章は国家ではなく『われわれ』という形で一人ひとりの人間を主語にして書かれている」という印象的な表現で、そのことを語っている。

    そして、人間の安全保障を実現するためには、主権国家である各国の立場を調整し合意形成をするだけでなく、国連という主体が積極的に事態に介入する主体として位置付けられなければならないという、アナン氏が掲げた方針が、それ以前の国連とそれ以後の国連を大きく異なるものにした大きなポイントであると感じた。

    国連は、安全保障理事会の決議なくして武力行使を伴う介入は行わないが、それだけではなく紛争当事者双方の合意がなければ事態に対する介入は行わないというのが、それまでの国連のあり方であった。アナン氏の方針は、国連が自らに課していたそれらの制約条件の重要性も認めつつも、当事者の合意に基づく中立な介入というだけでは人間の安全保障が実現できない事態が起こりうるということを直視し、国連のあり方を一歩前に進めたということが言えると思う。

    このこと自体はアナン氏だけが突出して考え、実行していたことではなく、ソマリア、ルワンダ、ユーゴ・スラビア、イラク、コソボと、度重なる人道危機の場面で、ある時は国連が、ある時はNATOやその他の国家連合が前面に立ちながら、大きな流れとしては現在までには定着してきつつある方向性といえるのではないかと思う。

    しかし、一方で、事態に介入することに対するコンセンサス(当事者間ではなく国際社会の)を得るための機構としては、依然として国連という組織が、考え得る限りでは唯一の存在であるということも事実である。そして、そのような状況の中で、国連の役割の重さや複雑さがさらに増している。

    そういった背景を踏まえると、アナン氏の取り組んできた様々な紛争当事者との交渉や、積極的な介入による人間の安全保障の実現に向けた取組みが、これからの国際社会の取組みを考えるうえで非常に大きな示唆を与えてくれるものではないかと感じた。

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