ルポ 思想としての朝鮮籍

著者 : 中村一成
  • 岩波書店 (2017年1月13日発売)
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  • レビュー :3
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000611787

ルポ 思想としての朝鮮籍の感想・レビュー・書評

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  •  抑圧者たちの言葉に絡め取られ思考や感情のすべてが抑圧者たちの言葉を経る苦悩が自らに刃を立てる、おまえは嘘つきで存在自体が偽物でそれ自体が背理だと。一人息子が自死したときも手に取ったのはドストエフスキーだった。引き裂かれた痛みは言葉をもたない。自らの柔らかい部分を素手でつかまれたら我を忘れて逆上する他なく無口はさらに寡黙になる他ない。

    『ある夜、顔に触れる何かに目を醒ました高(小説家高史明さん──引用者)が見たのは、涙しながら何かをつぶやき、自分の顔を撫でる父の姿だった。』7頁

  • 著者:中村一成(1969-) ジャーナリスト
    写真:中山和弘

    【メモ】
    ・『世界』2015年7月号~2016年7月号に掲載されたルポ「思想としての朝鮮籍」を、加筆・修正し書籍化したもの。


    【書誌情報】
    価格:本体2,000円+税
    刊行日:2017/01/12
    ISBN:9784000611787
    版型:四六 並製 カバー 240ページ
    在庫あり

      イデオロギーではなく今なお譲れない一線(=思想)として「朝鮮籍」を生きる.高史明,朴鐘鳴,鄭仁,朴正恵,李実根,金石範――在日にとって特に苛烈だった40~60年代を含め,時代を駆け抜けてきた「歴史の生き証人」たちの壮絶な人生とその思想を,ロング・インタビューをもとにルポ形式で克明に抉りだす.在日から照射する「戦後70年史」.
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b279034.html


    【簡易目次】
    1 「国民国家」の捨て子 高史明 001
    2 民族教育への尽きぬ思い 朴鐘鳴 041
    3 最後の『ヂンダレ』残党 鄭仁 073
    4 子どもたちに民族の心を 朴正恵 113
    5 在日朝鮮人被爆者の解けぬ怒り 李実根 147
    6 文学は政治を凌駕する 金石範 181



    【目次】
    まえがき [v-ix]
    目次 [xi]

    1 「国民国家」の捨て子 高史明 001
      「朝鮮語のできない朝鮮人」 003
      すれ違う親子の言葉 006
      一六歳での学び直し 008
      言葉をもたない人間への共感 009  
      金天三 012
      八月一五日 014
      鉄格子の前で 018
      武装闘争 022
      善と悪 025
      路線転換の人柱 027
      土と生きる者たちの「思想」 030
      文学との出合い 033
      親鸞との対話 035

    2 民族教育への尽きぬ思い 朴鐘鳴 041
      ゴロツキ生活 043
      解放 047
      転機 049
      阪神教育闘争 053
      政治犯たちの信念 057
      武装闘争路線への違和感 060
      教員生活 064
      自らの生皮を剥ぐ痛み 068
      民族と祖国 069

    3 最後の『ヂンダレ』残党 鄭仁 073
      猪飼野の路地 076
      源流としての貧困と差別 078
      就職活動 082
      『ヂンダレ』との出合い 085
      『ヂンダレ』の同胞たち 087
      編集長としての手腕 091
      詩とは何か 093
      流民の記憶 096
      「ヂンダレ論争」 100
      『カリオン』のたたかい 102
      生きる縁 106
      揺れ動く故郷 109

    4 子どもたちに民族の心を 朴正恵 113
      基地の町 116
      官憲の弾圧のもとで 119
      活動家の家庭 122
      国籍の離脱 125
      民族学級 128
      “ろうごくのかぎ”としての言葉 131
      ソンセンニムを返せ! 134
      子どもたちとの対話 137
      語られなかった母への想い 140
      未踏の地 142

    5 在日朝鮮人被爆者の解けぬ怒り 李実根 147
      「廣島」と「ヒロシマ」 150
      焼野原 152
      解放 156
      逃走犯 158
      ヤクザ活動家 162
      塀の内と外 164
      帰国事業から朝鮮人被爆者救援活動へ 168
      「日本国民の悲劇」 171
      訪朝 175
      宙に浮く言葉 178

    6 文学は政治を凌駕する 金石範 181
      「喪失」という原点 184
      「祝いの地」 187
      朝鮮籍という「譲れぬ一線」 188
      『火山島』をめぐる討論 192
      死者に正義を還す 195
      究極の自由 198
      出合いと別れ 202
      密入国者 206
      『三千里』 211
      政治と文学をめぐる論争 214
      統一祖国のヴィジョン 217

    あとがき(二〇一六年一二月九日 中村一成) [219-223]
    参考文献 [224-225]

  • 中村一成さんの本は「ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件」以来なのだが、この人の書く本はなぜこんなに引き込まれてしまうのだろうと思う。

    この「ルポ 思想としての朝鮮籍」は、後半の3人にぐーっと引き込まれた。

    わたしはこれまで「日本人」とは、「日本国籍を持つ者」だと自分の中で定義していた。が、この本を読んで「日本人」とは、「自分が日本国籍を持っていることに悩んだことがない者」ではないかと思うようになった。もちろんこれは「帰化」した元外国人はいつまで経っても外国人のままだ、という意味ではない。「マジョリティとしての日本人」を考えるとき、その「日本人」とは単に日本国籍を持つ者という意味ではなく、日本国籍を持つことに悩んだことがない者ではないだろうかと思ったのだ。

    「火山島」という小説があるというのは知っていた。それが「4・3事件のことを書いた小説である」というのも知っていた。まだ読んだことはないのだが、あるとき、何気なく知り合いの在日の人に「この本、読んでみたいんですよね」と言ったとき、その人に「この本は襟を正して読まなければならない」みたいなことを言われて、それが妙に頭の中に残っていた(ちなみに「襟を正して」という表現はされず、わたしの中に「きちんと正座して」とか、そういう印象を持たせた言葉を言われたが、正確になんと言われたのかは覚えていない)。

    この著者の金石範さんが一番最後に出てきて、なおかつこの本を中村さんが書くきっかけになった人でもあるらしいが、これを読むと知り合いの在日の人がなぜそんなことを言ったのか、とてもよく分かる。

    というか、在日が戦中、戦後と非常に過酷な立場を強いられたことについては、もちろんそれなりには知っていた。が、この本で新たに「なるほど、そうだったのか」と知ることがたくさんあった。それは多分、わたしが今まで「何か在日の人は複雑な、よく分からないものを持っているが、それを聞き出すことはできないような気がする」と思っているようなことだったのだろうと感じている。というか、日本人のわたしは、このような話は知っておかねばならないとは思うが、このような話は直接聞けるような立場の人間ではない。

    ここに出てくる6人はみな、1940年代から1950年代という「同時代」を生き抜いてきた人たちなのだが、人の置かれた状況、立場でこんなにもみな経験した歴史が違うのだということを考えると(にしても、この人たちには今でも「朝鮮籍」であるという共通点があるのだ)、なんとも言い難い思いがこみ上げてくる。

    在日の複雑さ、について一端が垣間見えた本だった。

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