ジブリの文学

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 328
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000611947

感想・レビュー・書評

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  • 「ジブリシリーズ」“文学"の名前ほど
    内容は堅くはないので読みやすいです。

    制作秘話や、対談。
    ジブリが出来上がるまでの考察などが
    垣間見えるので、イチファンとして
    楽しんで読み終えました。

  • ◯人間の生き方には二つしかない
    人間の生き方には二つしかない。目標をもって生きる人と目の前のことにコツコツと取り組む人。自身は昔は目標を持たないと生きている感じがしなかった。それがいつの間にか、目の前のことにしゃにむに取り組むというスタンスに変わっていった。自分の思い通りにはならない世の中の厳しさを感じて、当初は消極的にこのような生き方になった。一種の諦めがあった。
    しかし、今はそれでいいと思えている。ある意味行き当たりばったりの生き方で、くるものを拒まず、前向きに生きる処世術と思えてきた。最初からこうと決め打ちするよりも、流れに身を任せている方が、生きている実感がある。流れに逆らうでもなく、流されるのでもなく、流れに身を任せて楽しむという心持ちだ。
    キャリアウーマンという働き方が出てきたときのこと、高畑さんが作品を作るにあたり「成功しなかった残りの95%の人はどうなるんですか?」という問いかけをしたという。これ普通の人への優しい眼差しを感じた。いつの世の中にも、不条理にたたされたり、大きな流れの中で圧殺される人がいる。自分も含めて、そんな人への応援を感じた。人は生まれる時代も家族も選べない。むごい現実から眼をそらさずに生きていけるかだ。
    ◯プロデューサー
    すべての企画は誰かの不純な動機で始まる。魔女の宅急便を仕掛けた編集者も、ある文学作品を映像化したいという個人的な想いで始めた。自分がやっているのに、自分がやっていない仕事だと、鈴木さんはプロデューサー業を評する。謙遜も入っているのかもしれないが、周りの人と協力してやらないと自分のやりたいことが実現できないという気持ちがあるのだろう。
    藤巻さんという人がいる。この人は仕事をぜんぜんしないが、宮崎さんや鈴木さんからものすごく好かれている。その人が「千と千尋の神隠しヒットしますよ。『もののけ姫」の半分はいくとみんないっている」と鈴木さんに言ったらしい。そこでぴきっときてから、宣伝や広告に全力を傾けていったらしい。何がきっかけになるかわからない。そういう一つ一つの出来事を、自分の物語の一部として取り込んで行くのが鈴木さんのすごい所ではないかと思う。たしかに、誰かに手痛いことを言われるとその瞬間はうっと思う。しかし、嫌なことはすぐに忘れてしまう。そして進歩がない。一つ一つの出来事を自分の中で消化して、行動につなげていく気持ちの強さがあるのだと思う。自分も他人に何かを言われたときに、それを流さずに自分の物語の中に取り込む姿勢があったほうがいいと思った。
    宮崎駿と付き合う方法と題して、新人監督の話が乗っていた。宮崎駿は自分の意見を横から言っては、その絵コンテをものすごいスピードで書き上げていくらしい。大概の人はそれで参ってしまうらしいが、この人は違った。自分のアイディアを持っていっては、質問をするというのを続けたらしい。そのうち、逆に宮崎さんが参ってしまって、作品作りに何も言わなくなり、その後新人監督は自分のペースでコツコツと作品を作り上げていったそうだ。自分の場合でも、上司にあれこれと言われたとしても、それに合わせるのではなく、あくまで自分の意見を持って上司に何度でも聞きにいく姿勢が必要だ。ある意味それが信頼の作り方という気もする。
    ◯建て増し
    ものごとを作り上げていくときに、日本人は全体からは作らないらしい。部分を積み上げていき、建て増しでつくっていくそうだ。ハウルの動く城やジブリ美術館が例として上げられていた。建築物でいれば、教会に対する長屋がある。部分を積み上げていくことで、結果的に西洋には真似のできないものが出来上がる。
    人生の進み方もそんなものかもしれない。行き当たりばったりに、自分のやりたいことやらなければいけないことをやってく。最初から全体を設計してそれに従って生きていくのではなく、目の前のことを一番に大事にする。
    自分はいまウェブの仕事をしているが、最近みたウェブサイトでは、言葉が一面に敷き詰めてありそれをクリックするとコンテンツにつながっていくというものがあった。カオスだった。しかし、どこか心地よかった。自分が仕事をしていく上でも、全体感に囚われすぎずに、半径3メートルで拾って生きたアイディアをどんどん形にして積足していくような方法を試してみようと思った。そのほうが自然な感じがする。

  • スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫さんのエッセイ集。
    裏話や制作秘話がエッセイとして読めるので、すごく楽しめました✨
    特に監督やアニメーターの方々の人柄にも触れられていて、ジブリを1.5倍増くらい楽しめそうです✌︎('ω'✌︎ )

  • ふむ

  • 最高
    一気に読んじゃった
    やっぱりジブリにまつわるお話は
    気になる!ジブリの文学も読もう〜。
    鈴木さんから紡ぎ出される言葉はどれも
    惹きつけられる

  • 前作?のジブリの哲学から引き続いて、鈴木敏夫さんの様々な出版物やインタビューをまとめたもの。コクリコ坂やマーニー、風立ちぬ、そして引退宣言から再び長編を作ることになるまで。本当に出てくるおじいちゃん達がパワフルすぎる。。。!

  • 天下の岩波書店の「ジブリの文学」という仰々しいタイトルに騙されないで、著者:鈴木敏夫と宮崎駿との格闘の裏話と思って読めば気楽に楽しく読めます。
    2010年?以降の5年間ほどの間の著者の書いたものや対談の寄せ集め???

    ・2017年ころの著者の気持ちを雄弁に現わしているのが、以下の文章です。
    「あれから3年半の月日が流れた。宮さん(宮崎駿)の引退宣言を喜んだのは、僕を措いて他にない。日本中が悲しみに包まれていた。なのに、あのとき、僕だけが壇上でニコニコしていた。老後の楽しみ。肩の荷を下ろす。いろんな言葉が浮かんでいた。これから何をやろう。それを考えると、うれしさを押し殺すことが出来なかった。
    ・・・・・ちゃんとした爺になりたいというぼくの願望を木っ端微塵に打ち砕いたのが、宮崎駿だった。
    『鈴木さんは映画を作るべきだ』・・・いったい、何を言っているのか。意味不明だった。宮さんが呆けたのか。最初はそうも思った。
    宮さんは矛盾の人だ。いつも同時にふたつのことを考える。そして、いつだって前段なしに本論に入る」
    (現在は3DCGによって世界のアニメーションは一変したが)「7月に入ったばかりのころだった、宮さんが企画書を書いた。
    一つ目。「引退宣言」の撤回。
    二つ目。(略)
    三つ目。全編手書きでやる。

    束の間の夢だった・・・一期は夢よ、ただ狂へ。こうなったらやるしかない」

  • この人、好きです。

  • 思考のヒントの転がり。
    拾うか拾わないか。本を貪りたいときに何気なく手に取りたい書。
    単純にジブリのファンが読むだけでも期待どおりのエピソードが転がっている。

  • 778.77

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著者プロフィール

スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。1948年、愛知県名古屋市生まれ。
徳間書店で「アニメージュ」の編集に携わるかたわら、1985年にスタジオジブリの設立に参加、1989年からスタジオジブリ専従。以後、ほぼすべての劇場作品をプロデュースする。宮﨑駿監督による最新作『君たちはどう生きるか』(23)が、米・ゴールデン・グローブ賞のアニメーション映画賞を受賞した。「仕事道楽 新版──スタジオジブリの現場」「歳月」(ともに岩波書店)、「スタジオジブリ物語」(集英社)など、著書多数。2021年、ウィンザー・マッケイ賞を受賞。

「2024年 『鈴木敏夫×押井守 対談集 されどわれらが日々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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