経済学は悲しみを分かち合うために――私の原点

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000612777

感想・レビュー・書評

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  • 経済学なんて「人の世の中をお金で測るだけ」とまったく興味がなかった。なのにこの財政社会学はとても熱き血が通っている。

    曰く、愛と共同性が人類の類的本質。

    「人間は悲しみを『分かち合い』ながら生きていく存在だという人間観に立ち、『愛とやさしさ』を財政学で語る使命がある」という著者。


    著者が母から教えてもらったこととして、「お金で買えるものには価値がない。」という言葉がある。

    たとえば自分で作ったノートはお金で買えない価値がある。売っているセーターよりも母親の手編みのセーターの方が価値がある。

    「それは、「生」を「共」にする」営みを経たからである。

    ・・・こんなふうに、著者の人生とともに、現在の世界の状況に、簡潔にして納得のいく説明を加えてくれる。読んでて飽きないすばらしい経済思想史、財政学、さらには戦後日本の教科書だと想った。

  • 現代の経済学は「市場経済」に特化して「新自由主義」のもと「金融資本主義」の旗を振るばかり。
    経済学本来の「社会の厚生」を向上させる使命は失われた。
    経済学が米国で支配者の学問になったこと
    それに反旗を翻したのが宇沢弘文先生以下の一門
    日本の経済学者はノーベル賞を捨てても、「本来の経済学」を支持するのは、マルクス経済学の影響もあるのか。
    ケインズに代表される英国経済学に近い。政治経済学の文化

    字が小さくて読み通せないのが残念
    著者の思いは伝わった。

  • 神野さんの半生でした。どのような道を歩んで、どのような仕事をして、どんな研究をしてが主です。
    財政学の話はそこまで多くない。
    タイトルの「経済学…」に至った自分という存在に焦点を当てている。網膜剥離を患い、早く世に出したかったようです。

    市場と非市場にわけて考える
    ビジネスと非ビジネス

    財政学
    通貨供給量などの話は出てこない。
    やはり、学問は細分化して、細分化したAとBのあいだにCという学問が生まれてそこで商売している…

    人に優しい財政をというところには
    多くの人が共感するだろうし、実際そうなるには政治。
    ただどこの主義にも属さないらしい。
    スポークスマンとしてシンクタンクとか省庁への関与などで影響力を発揮か。

    市場と非市場の例、お金で買えない
    母が編んでくれたセーターを着ると愛されてるという幸福を味わうことができる
    何も記入していないノートは市場に売っているが苦労して記入したノートは市場売っていない。

    恵まれた環境

    文学、哲学、社会科学へ
    大学紛争で傍観者

    学生運動、自治委員、しかしどちらかといえば観念的、人脈あり、
    セクト争いに嫌気

    宇沢氏
    グローバリズムに対抗?ローカル
    トリクルダウン理論
    ファウンテン効果

  • (言及図書)地域再生の経済学 石橋湛山賞、長野県総合計画審議会答申「未来への提言」(2004.3)、あなた自身の社会(スウェーデンの教科書)、二兎を得る経済学、希望の構想(井手との共同編集)

  • 東2法経図・6F開架 331.04A/J52k//K

  •  財政学の第一人者が、70年余に及ぶ自らの人生を振り返った自伝である。

    《本書は私の研究してきた経済学を経糸に、私の歩んだ「生」を緯糸にして、私の「思想」を錦として織り上げることを企図している》

     「序章」にそうあるとおり、著者の幼少期からの歩みと、財政学者としての歩みが、ともに響き合い、呼応し合って一つの世界を織り成す。

     人生の途上で出会った人々から受けた「恩」の思い出が、愛おしむように綴られていく。著者はつねに、出会った人々すべてから何かを学び取ろうとする。その謙虚な姿勢が好ましい。自らの業績を鼻にかけるような傲慢さが微塵もないのだ。

     また、著者と夫人の強い絆にも心打たれる。 

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著者プロフィール

神野直彦(じんの・なおひこ)
日本社会事業大学学長、東京大学名誉教授(財政学・地方財政論)
『システム改革の政治経済学』(岩波書店、1998年、1999年度エコノミスト賞受賞)、『地域再生の経済学』(中央公論新社、2002年、2003年度石橋湛山賞受賞)、『「分かち合い」の経済学』(岩波書店、2010年)、『「人間国家」への改革 参加保障型の福祉社会をつくる』(NHK出版、2015年)、『経済学は悲しみを分かち合うために―私の原点』(岩波書店、2018年)
1946年、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学



「2019年 『貧困プログラム 行財政計画の視点から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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