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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784000612944
感想・レビュー・書評
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自伝文学の名作として知られる加藤周一の『羊の歌』の内容と、著者自身の調査によって明らかになった加藤の実像を照らしあわせて、加藤周一という人間にせまる試みがなされています。
著者は、これまで刊行した加藤関連の本のなかでも、太平洋戦争の開戦の日に加藤が文楽を観にいったという『羊の歌』の叙述はフィクションではないのかという説を提出しているが、本書でもそのことに触れられています。ほかにも、加藤の妹を中心とする取材をおこない、『羊の歌』のなかで加藤が「語ったこと」と「語らなかったこと」の両面に目くばりをして、そこから加藤の人生の実像を明らかにしようとしています。
『羊の歌』には、加藤の最初の結婚のことがいっさい書かれていません。著者は、フランス留学前の「京都の女」にかんするエピソードを検討し、この「女」は実在の人物ではないという説を提出するとともに、ヒルダ・シュタインメッツと結ばれた加藤が、最初の妻である中西綾子に対する思いを「京都の女」にまつわるエピソードとして再構成したのは、このときの加藤がいまだ最初の結婚について語ることができなかったからだと推測しています。
加藤の『羊の歌』を読んだあとに、自分自身がいだいた感想のこたえあわせのようにして本書を読むのも、ひとつのたのしみかたなのではないかと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東2法経図・6F開架 910.268A/Ka86w//K
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鷲巣力の作品
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