芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚

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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000613040

感想・レビュー・書評

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  • 大正13〜14年(1924〜25)に編纂された旧制高校のための英語読本全8巻。芥川龍之介がそのような編纂の仕事をした事があったとは知りませんでした。その中から怪異•幻想譚を精選し、新訳でまとめたのが本書です。オスカー•ワイルドやH•Gウェルズなど、現代でも名前を知られた人もいれば、全く顧られることのない人もいます。私は芥川龍之介の代表作を"いくつか読んだ"程度の知識しかないので、"この作品があの著作にインスピレーションを与えた"というような解説がついているのがありがたかったですね。

    それにしても、全8巻のうち2冊を幽霊•怪奇小説で固めたってのが、芥川龍之介らしいエピソードですよね。そんな仕事であっても怪奇趣味全開。好き(笑)

  • 読まなきゃ、、、

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    気鋭の研究者と当代随一の翻訳家がタッグを組み,芥川が選んだ「新しい英米の文芸」を蘇らせる! 旧制高校の英語副読本として編まれたアンソロジー8巻より20の短篇をさらに精選.ポーやスティーヴンソンから本邦初訳の作家まで,芥川自身の作品にもつながる〈怪異・幻想〉の世界を全て新訳で堪能する.イエーツやキャロルなどの芥川による翻訳も収録.
    《豪華な訳者陣!》
    畔柳和代・岸本佐知子・柴田元幸・藤井光・澤西祐典・西崎憲・都甲幸治・大森望・若島正・谷崎由依・森慎一郎(登場順)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b378358.html

    目次
    「身勝手な巨人」オスカー・ワイルド
    「追い剝ぎ」ダンセイニ卿
    「ショーニーン」レディ・グレゴリー
    「天邪鬼」エドガー・アラン・ポー
    「マークハイム」R.L.スティーヴンソン
    「月明かりの道」アンブローズ・ビアス
    「秦皮の木」M.R.ジェイムズ
    「張りあう幽霊」ブランダー・マシューズ
    「劇評家たちあるいはアビー劇場の新作」セント・ジョン・G.アーヴィン
    「林檎」H.G.ウェルズ
    「不老不死の霊薬」アーノルド・ベネット
    「A・V・レイダー」マックス・ビアボーム
    「スランバブル嬢と閉所恐怖症」アルジャーノン・ブラックウッド
    「隔たり」ヴィンセント・オサリヴァン
    「白大隊」フランシス・ギルクリスト・ウッド
    「ウィチ通りはどこにあった」ステイシー・オーモニア
    「大都会で」ベンジャミン・ローゼンブラット
    「残り一周」E.M.グッドマン
    「特別人員」ハリソン・ローズ
    「ささやかな忠義の行い」アクメッド・アブダラー
    「春の心臓」ウィリアム・バトラー・イェーツ
    「アリス物語(抄)」ルイス・キャロル
    「馬の脚」芥川龍之介

  • 本書の成り立ちは少々ややこしい。柴田元幸による『はじめに』によると、まず、『芥川龍之介本人が編纂した英語の副読本』というものがあって、本書はその副読本の中から、怪奇幻想ジャンルの短編だけを抽出して邦訳したアンソロジーである。因みにこの副読本、教材としては余り出来の良いものではなかったようだw
    しかし教材としてパッとしなかったからといって、文学的につまらないかというと全然そういうことはなく、収録作も豪華だし、初訳作品がかなり含まれているのも凄い。まさかビアボームが収録されているとは思わなかったし(〝ズリイカ・ドブソン〟は面白かった)、フランシス・ギルクリスト・ウッドやステイシー・オーモニア辺りは何処かで系統立てて紹介して欲しい。
    アンソロジーとしても面白いし、芥川龍之介を読み返したくなるし、これが3000円足らずで買えるって相当コスパ高いんじゃないだろうか。

    物凄くどうでもいいが、この手の本は国書だろうと思って買ったら、版元は岩波書店であった。吃驚。岩波もこういうテーマアンソロジーを出すんだな……。

  • 芥川龍之介が編んだアンソロジー(!)から更に絞って豪華な翻訳者たちが訳したアンソロジー。
    どの作品も面白い上に、芥川の追体験をするようだと思うと二度楽しめる。
    いや、丁寧な背景説明(作者と芥川の選の理由など)まであるので、三度楽しめるか。
    その上、芥川が訳した作品と芥川自身の作品も収録。
    芥川作の「馬の脚」、良かったなぁ…。

  • 怪異・幻想アンソロジー。初邦訳の作品も多いようで、読み応えたっぷりの一冊です。恐ろしいというよりは、ちょっと不思議だったりやや不気味な気分にさせられる作品が多いと思いました。
    お気に入りはアンブローズ・ビアス「月明かりの道」。ミステリ的でもあり、幽霊譚でもある一作。このタイトルも一見平凡なように見えて、物語を読んでみれば印象的です。
    ブランダー・マシューズ「張りあう幽霊」は、今までに読んだことのないような幽霊譚でした。微笑ましいというかなんというか……こんな幽霊ならいたっていいかも?

  • 冬至前後のこの時期、長い夜に一篇一篇大事に読みたい素晴らしい1冊でした。
    タイトルからも分かるとおり、芥川龍之介が海軍学校の教師時代に編纂した英語の副読本から、クラシカルな怪異幻想譚を選抜してきた、選りすぐりの20篇を収録したアンソロジー。
    本書の「売り」については冒頭の「はじめに」で編者の方が詳しく&簡潔に書かれているので気になる人は書店で手に取って目次とそこだけでもパラパラと見て貰えればと思います。
    翻訳者も豪華で、11篇が本邦初訳(既訳があるものも全て、今回すべて新訳で収録!!)とたいへん贅沢。
    芥川が訳した「春の心臓」、菊池寛と共訳の「アリス物語(1、2章)」、短篇「馬の脚」と収録してこれで3000円しないの超お買い得でした…!

  • 本の性質上、怪奇幻想好きなら既読の話が多いと思う。
    巻頭の身勝手な巨人も確かに読んでいる。だけど、どこが身勝手なの? 留守にしている間に自分の私有地に勝手に近所の子供が入り込んで遊び場にしていたら、追い出すのが当然でしょ? まあ、子供って悪さするし散らかすし。ボランティアで町内の公園に花壇を作っているけれど、そこに遊びに来る子供たちって、ゴミ捨て放題うっかりすると花壇も踏んづけていくよ。町内は基本的に持ち家のミドルミドルクラス、低収入では住めない地域なのである程度以上の家庭の子供の筈なんだが。庭園は本来囲われ守られた庭なので、巨人は間違っていないと思うのだがね。
    誰も見たことのない小さな子供が幼児イエスなのはこの手の話のお約束、最後に安らかに天国に行ってしまうのも定番のオチなのだけれど、これはキリスト教文化圏、特にカトリックに多い感じ。日本では、いつまでも幸せに暮らしました、と言うのが普通じゃない?たとえ、おじいさんおばあさんの話でそう先はないだろうと思える話でも。キリスト教の話では若い主人公の場合でも、最後は天国に旅立ちました、なんてなっているのが多いように思うのだけれど、考えすぎかな?
    今更だけれど、童話にも、と言うか童話にこそ無造作に文化の違いが現れるよね。

  • 20200430〜0520 かの芥川龍之介が旧制高校の英語副読本として選んだアンソロジー8巻より、20の短編を新訳で出版。前書きとあとがきに、この本の編著者の心意気と気概が伝わってくる。エドガーアランポーやワイルドなどの著名な作家だけでなく、本邦初訳?かもしれない作家の短編もあって、とても興味深く、面白く読めた。アンソロジーも全編読んでみたいなあ。

  •  芥川が旧制高校の英語副読本として編んだアンソロジー掲載作から精選した、新訳による短編集。芥川による翻訳作品や芥川作品の掲載もあり、読みごたえがありました。

     掲載作は、すでによく知られている作家のものから初訳のものまで幅広く、とても面白く読みました。当時の英米作品から編まれているためか、大戦に絡んだ幽霊譚が多い印象でした。いま読んでも面白く読めるというのは、本書のために掲載作をさらに精選されたためか、芥川の審美眼が時代に左右されないためか、新訳という形態になり読みやすくなっているのか、そもそも怪異・幻想譚という縛りがわたしの好みだからなのか。楽しい読書でした。

  • あまり前のめりになって読み進めることが出来なかった。今でもなお読むに耐え得るアクチュアルな作家を選んでいるところは流石芥川といったところだが、それでも「今」を生きる選者が編んだアンソロジーの方が数倍面白いと思ってしまうのはこちらの哀しい性/限界なのか。駄本というわけではないが、もう少し色気のあるアンソロジーの方が楽しめる。その意味では私は(解説でも指摘されているが)芥川にボルヘス的なものを感じる。ボルヘスも色気がなくて個人的にはそんなに前のめりになって読むことが出来ない作家なので……とまあ、複雑な読後感が

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