- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000613378
作品紹介・あらすじ
プラタナス、イチョウ、ケヤキ、サクラ……街の木は、多彩な働きによって都市生活を支えている。「緑の日傘」で猛暑の路面温度は何度下がる? 日本の街路樹は、なぜこぢんまりしているのか。世界の街路樹事情や歴史的なエピソードも交えながら、人を、社会を、もっと豊かにする「身近な緑」の本当の魅力を伝える。
感想・レビュー・書評
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街路樹の樹冠がつくる緑陰が都市の環境にどれほど大切か、また剪定の方法によってどれほど樹形の形成に差が出てくるかということを認識させられた。
街路樹は道路に植えられている以上、建築限界や車高制限高に基づく空間を確保するために枝ぶりを制約する必要があることは紛れもない事実である。
しかし、日本における街路樹の剪定は、そのような基準を超えて、落ち葉によるクレームや剪定回数を減らすために過度に強剪定に頼った管理がなされているという。
豊かな樹冠を作っていくためには10年以上にわたる一貫した管理により、木の上部の枝張りを形成していくとともに、それに対応した根の育成をする必要がある。田園調布や仙台市などの事例では、行政に専門職の職員を設けるとともに自治会など地域との連携を図りながら、剪定などの中長期的な管理と日常の管理をうまく行っているようである。
街路樹は都市の景観、地域の顔を形成する重要な要素であり、街路樹がどのような姿であるかは、行政のみならずその地域のコミュニティの連携の強さも示す一つの指標なのではないかと感じる。
ただ植えられているだけではなく、都市の温熱環境の改善から交通事故の抑止、生物多様性の確保まで様々な効用のある街路樹について、道路管理者だけに任せるのではなく、地域として守ろ育てていく姿勢が大切であるということを考えさせられる本だった。 -
普段あまり気にも止めない街路樹に注意を払うきっかけになった。著者の想いには全く共感なのだが、ではどうすれば良いかと言われると現実には難しい…。行政担当、剪定業者の教育・啓蒙から、低コストな剪定技術、周辺住民の理解、等々。
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過去二回、国道に面した物件に住んでいたことがあります。
植栽が毎年剪定されるのですが、枝ごと無惨に切られ、街路樹の美しいと言われる通りと何が違うのかと思い続けていました。
その理由が本書でわかりました。
しかし、結局は予算なんだろうな。
著者の言いたいことはP177から読めばわかります。
ですが大人な現実世界を知る我々は、残念ながら、それが無理であろうことを想像できてしまうのです。 -
東京の街を歩くと、街路樹が切り詰められて木蔭も無く、何のための木かと思うことがあるが、道路構造令の規制、発注者が土木職で植物に詳しくない、安かろう悪かろうな入札価格、落ち葉を嫌う近隣住民等々の複合要因らしい。東京は、震災復興の成熟都市化のチャンスを、戦争と戦後の急激な経済成長でフイにし、その前も後も今に至るまで成熟都市になり損ねているらしく、要するに「生活の場としての都市の質の向上」が評価されにくいのだと思うが、本書は街路樹の心理的効果を視線や心拍数で可視化して面白かった。