- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000613910
作品紹介・あらすじ
楳はウメ。甘+木で酸っぱいウメとはこれいかに。中国で椿はツバキでない!? 海棠には違和感あり…。植物名にまつわる面白話を歳時記よろしくお届けします。なぜそうなったのか。語源や漢字の成立ち、日本伝来の頃にまで遡り解説。謎が謎を呼ぶこともあります。広辞苑の解説と絵を見ながら大胆推理をお楽しみください。
感想・レビュー・書評
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円満字さんの漢字の本はどれも面白いが、これは植物とその漢字をテーマにしたエッセイで、円満字さんの穏やかな知性と、読みやすい文章、広辞苑のイラストレーターによる植物の絵、春から始まって新春で終わる構成、とどれも良く、植物好きなちょっと年配の方にプレゼントしても喜ばれるのではないかと思う。
広辞苑のイラストは色はないが、植物の姿、花、葉、実などがよく分かるように(描いた人の個性や感情を感じさせないように)描いてあり昔から好きだったが、この本では本文中に広辞苑の絵があるだけでなく、各章の扉に描き下ろしの絵がある。その絵が、広辞苑よりちょっとだけアーティスティックというか、描いた方(大片忠明さん)の個性が感じられるのも嬉しい。
ウメは「梅」が一般的だが、楳図かずおの「楳」もある。元々は「某」がウメだったのが(言われてみると確かにもう「木」が入っている)、「某所」といった後からの用法の方が一般的になってしまったので、改めて木偏をつけた、という話。
躑躅ってどうしてこんな字なんだろうと思っていたが、元々はこの字はある場所から動けなくなるという意味で(だから足がついてる)、羊が食べて動けなくなった(毒がある)植物を羊躑躅(ようてきちょく)と呼んだ。これは今のレンゲツツジのこと。ただ、この字が伝わった当時の日本人には羊は馴染みのない動物だったので、「ヒツジツツジ」とは呼ばず、別の名前をつけた、という話など、どれも興味深い。
アヤメとカキツバタが似ているけど違うのは知っていたが、アヤメは菖蒲と書き、ショウブも菖蒲と書く、つまり同じ漢字で複数の植物を現しているとは知らなかった。アヤメとショウブは葉っぱは似ているけど、花は全く違う。ショウブの花は蒲の穂を小さくしたような、美しいとは言えないような花。
よく仙人が持ってる杖(頭が大きくて捻れている)がアカザだとも知らなかった。アカザって草なのに、杖になるとは!
などなどあんまり書くと悪いからこれくらいにしておくが、感心したり、ビックリしたり、読んでいてとても楽しい時間が過ごせた。
身近な植物ばかりなので、手元に置いて季節ごとに読むといいと思う。ちょっと高いけど、文庫でこの味わいは出せない。値段の価値は十分ある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「図書」で読んでいたので、植物に対して日本と中国で漢字の使い方が違うこと、日本では訓読みという独自の漢字利用法があること等を理解していたので、非常に楽しく読めた.人種が違うと同じ植物でも感じ方が違っており、さらに年代が離れているとかなりの齟齬が発生する事例も紹介されていた.四季折々の植物に触れる機会を積極的に作っていく必要性を痛感した.
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漢和辞典じゃなくて広辞苑を使っているところがさすが岩波書店、というところは本筋ではない。植物の名前に使われている漢字を読み解くエッセイということで、こういう枝葉末節本は大好きです。
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漢字が楽しい。「本草綱目」が欲しくなる!
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九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1348010 -
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辞典などの編集を担当する著者による辞典・広辞苑に載っている植物についてのエッセイ。植物そのものの特性は広辞苑から拾っているのだが、なぜこの漢字になったのかという考察は、広辞苑だけでなく著者なりに調べている。そして植物園や公園に実物を見に行ったり…。
岩波の雑誌「図書」に連載されていたころから、時々読んで楽しみにしていた。思わず漢字を見直してしまうようなエッセイの雰囲気が好きだ。