日没

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 145
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000614405

作品紹介・あらすじ

小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末は——。
装丁:鈴木成一


■ 推薦のことば

筒井康隆
これはただの不条理文学ではない。
文学論や作家論や大衆社会論を内包した
現代のリアリズム小説である。
国家が正義を振りかざして蹂躙する表現の自由。
その恐ろしさに、読むことを中断するのは絶対に不可能だ。

荻上チキ
息苦しいのに、読み進めずにはいられない。
桐野作品の読後には、いつも鈍い目眩が残ると知っていても——。
自粛によって表現を奪い、相互監視を強める隔離施設。
絶巧の文章が、作中世界と現実とを架橋する。

石内 都
個人的な価値観、個人的な言葉、個人的な行動をもとにして作品を創る。
それは自由への具体的な希求であり表現だ。
その基本がいつの間にか奪われ拘束される。
『日没』は桐野夏生でさえ越えられない身のすくむ現実がすぐそこにあることを告げる

武田砂鉄
絶望の中でも光を探すことができる、と教わってきた。
だが、この物語にそういう常識は通用しない。
読みながら思う。今、この社会は、常識が壊れている。
どこに向かっているのだろう。もしかして絶望だろうか。


■ 著者のことば
私の中の「書かなくてはならない仕事」でした。
桐野夏生


■『日没』Twitterアカウント
☞ @nichibotsu2020

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃度高しの一冊。

    明るさとは無縁だと思っていたが案の定衝撃度高し。

    小説家の元に届いた、政府からの一通の召喚状。
    わけもわからず療養所という名の収容所へ主人公と共に収監された気分。
    これは心まで鎖に繋がれた監禁。

    言葉、自由を奪われるということは心を喪いやがて自分自身も喪われること。

    その中での理不尽な要求に誰が通常精神で耐えられるというのだろう。

    言葉が出ず、一筋の光を、願わくば夜明けを求めてただ文字を追うしかなかった、追わされた。

    光さえも暗闇に変わる衝撃。
    心が空っぽになった瞬間。

    これはある意味忘れられない作品。

  • わぁとても正月に読む本ではない。
    いや、現状を認識すれば、この本に比べれば
    パラダイス、天国、極楽だ。
    まず自由がある。食するものが山のようにある。食べたいものを食べたいだけ、自分の意思で、口で手で食べられる。
    だから正月こそ読んでよかったのかもしれない。

    1月6日期限だったから優先順位なく読んだ。
    とにかく恐ろしかった、不気味だった、気分悪くなった。
    しかしあり得ないとは言えない。
    召喚、ーこんな恐ろしい言葉ある?
    召喚され、何処かに隔離されたらどうなる?
    言論統制?

    クリエイターではないから、現状を把握できてないがこんな危機が押し寄せてる?

    本文よりー
    どうやら未来への希望が生まれると、人は過去を反芻するようにできているらしい。
    経験則が
    来るべき未来への、心の準備を整わせるのだろうか。ー納得してるわけではない。けどそうなの?

    悪人しか出てこない。
    いかに自分が甘ちゃんか「知ってるけど」骨の髄まで知らされる。
    最後に希望はと読み進める、
    希望は
    希望がない
    絶望感しかない。悪しかない。怖れしかない。
    うーなんだろう
    怖い怖い怖い。
    作者の意図は?
    誰か教えて。

  • 桐野夏生さんの小説、初めて読みました。
    長年にわたって人気作家として活躍されていることは知っていました。

    いや、さすがだと思いました。
    面白くてどんどん読んでしまいました。
    途中読めない漢字に何度もぶち当たっても
    調べることなく「そんなの気にしない」
    ハードルを倒しながら走るみたいに
    だって、先が気になって気になって。

    感動したとか、勉強になったとか
    生きていく上で大事なことを教えてもらったとか
    そんなの全然ないけど
    最後の最後まで楽しかったので
    読んで良かったです。

  • 新聞のインタビュー記事を見て図書館予約
    やっと手元に

    うわ、これはなんだ!
    こわい
    ありえない
    信じられない
    と思いつつ 
    もしかして 現実?
    そう思わせるリアル感がある

    出版の自由ってきっと脆いものなんでしょう

    余りにも残酷な描写
    でも著者の力量で読み進めさせられる

    そして 光を求めて読んでいた
    私を ラストが……

    ≪ 日没が もはや明けない 断崖に ≫

  • かぎりなく半端なく桐野夏生は容赦ない。
    政府の機関である「文化文芸倫理向上委員会(ブンリン)」からの召喚状が届いた小説家マッツ夢井の極限の収容生活。小説家にとって表現の自由を認められないこと、「悪い小説」を書かないように強いられることってそれは小説家の死を意味するのではないのか。
    でも、刑務所の方がまだましだ、生きてここを出るより死んだほうがましだと思わされる劣悪な環境。そもそもここを生きて出られるのか…という不安に「転向」も頭をよぎる。そりゃそうだろう。
    なんだこれ、そんなアホな、いや、これはひどすぎる、こわいこわいこわい、と他人事のように読んでいるけれど、本当にこれは他人事なのか?
    そもそも「ブンリン」の存在そのものも、架空のものなのか?なんとなく不安になる。すでにあるんじゃないか。もしかするとすでに何人もの作家さんたちが本当はブンリンに強制収容されているんじゃないか。なんて。
    でも、これはある意味すでに別の形で行われていることだよな、とも。
    この表現によって誰かが傷ついています。この表現は倫理的に問題があります。この表現は反社会的です。だから私が正してあげます。
    そういう強い意志の元、眼に見えない場所から投げつけられる石。どこかで標的の名前が上がったら徹底的に攻撃する言葉たち。「更生」されるまで続く「正義」という名の暴力。
    「悪い」小説はその小説そのものではなく、書いた本人に責任があるのだから責めて叩いて矯正するべきらしい。でも、「良い」と「悪い」は誰が決めるんだ。それが、怖い。
    何か大きな力でもって知らない間に都合のいいレールに乗せられている。同じ方を向いて、同じ考えをもって、同じものに頭を下げて。そういう社会に、もうなっているんじゃないのか。日は、沈んでしまったのか。

  • 桐野さん、またまた衝撃的な度肝を抜く作品です。
    文化文芸倫理向上委員会という政府の組織があり、そこから召喚状を受けると出頭しなければならない。
    いわゆるエンタメ作家のマッツ夢井が召喚され向かった先は・・・断崖の海辺に立つ療養所、とは名ばかりの中身は全く自由のない収容所。
    意に沿わない言動をすると減点が課せられ、減点によって収容日数はどんどん伸びていく。
    召喚された理由というのは読者からの告発で、犯罪や暴力を肯定的に描いている、つまり社会に良い影響を与えないという理由。
    言論の自由とは言いながら、映画が年齢制限などで管理されているように書物も同じような扱いをしなければならないというのがその機関の言い分。
    読者からの告発にショックを受け、そんな法律がいつの間にかできていることに呆然。混乱しながらも抗うことができず、収容所での生活が始まる。
    社会から完全に分断された中で、粗食、屈辱、不自由、などに耐えながら、わずかに漏れ聞く情報も本当なのか嘘なのかわからないまま、最後まで正気を保つ事だけに腐心しながらの毎日。

    話の展開にあっけにとられながら読むのをやめられません。本当にそういう施設がどこかにあるんじゃないかと思わせるような。
    作家である自身をそこまで貶めるとは・・・
    桐野さんは本当に世に問うておられるのでしょうか。
    皮肉で、風刺的な作品でした。

  • 久しぶりの一気読み作品。
    表現の自由と、法規制の問題がガチンコ。
    星5つかな?と思いつつ、エンディングがなあ、、、4.5かなあ。

  • 中堅エロ小説家マッツ夢井こと私にブンリンから召喚状が届く。よく分からないながらも訪れたその療養所では、作家を社会に適応した作品を書かせるために刑務所以上の虐待が成されていた。社会に阿った医師やスタッフたちのいやらしい言葉、度が過ぎるほど制限された軟禁生活。これは全ての作家の脳裏にへばりつく恐怖ではないか。そして不条理に対するマッツの反抗的な態度は作家のダイレクトな声ではないか。また読んでいて多少マゾ心をくすぐられもするがやはり嫌な気持ちになる。これ以上長いと辛くなりそうなので、本書の長さはちょうどいい塩梅である。

  • クスリとも笑えない。
    いろいろつらかった。

  • じわじわ怖い。
    息苦しくなるような。

    舞台は、近未来。

    政府が提唱する
    『正しい文学』の定義を
    推し進めるため

    失格の烙印を押された
    作家たちが
    監禁され 洗脳される
    断崖絶壁に立つ"療養所"。

    特に 激しい暴力や拷問を
    受けるわけでは無いのですが 

    何なのでしょう…

    このジワジワと
    心を蝕まれていくような
    不快感と恐怖心は。

    「自分が正しい」と
    思い込んでいる相手との
    不毛なやり取り。

    もしかしたら、自分の方が
    間違っているとしたらーと
    つい 読者までもが
    不安になってしまうのは

    主人公の作家が
    とりわけ 魅力的な女性
    というわけではなく

    才能ある作家への妬みや
    成功を羨む世俗的な部分を
    持ち合わせ

    無礼で狡賢いところもある
    決して 手放しで
    応援したくなるような人物
    ではないからかもしれません。

    そこに、とても
    リアリティがあって。

    高邁な思想を持った
    尊敬すべき人物ではないけれど

    『表現』ということに対する
    情熱と信念だけは、揺るがない。

    監禁と言っても
    政府機関から召喚状が届いて
    自分の足で入館するし

    職員も 一見普通の
    市井の人たちで

    なのに、何故
    こんなにも怖いのでしょう。

    きっと、すぐそこにある
    日常に隠れている恐怖だから。

    家の扉を開けて
    いつもの道を歩いていたら
    いつの間にか 

    巻き込まれてしまって
    いるような。

    最近 『同調圧力』という
    言葉を よく耳にしますが

    個人の小さな信念なんて
    その気になれば

    数の力で

    簡単に踏み潰すことが
    できるんですよね。

    だからこそ
    世の中の大きなうねりの前では

    なるべく 警戒心を持たなくては
    いけない。

    『善』という言葉の多面性に
    要注意です。

    私にとっての善が
    あなたにとっての善とは
    限らない。

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著者プロフィール

1951年金沢生まれ。成蹊大学卒。93年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞を受賞。99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞、10年、11年に『ナニカアル』で島清恋愛文学賞と読売文学賞をダブル受賞。1998年に日本推理作家協会賞を受賞した『OUT』は2004年エドガー賞候補となる。15年紫綬褒章を受章。

「2021年 『インドラネット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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