コロナ禍の東京を駆ける: 緊急事態宣言下の困窮者支援日記

制作 : 稲葉剛  小林美穂子  和田靜香 
  • 岩波書店
4.55
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本棚登録 : 108
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000614412

作品紹介・あらすじ

「ステイホーム」する家がない——。コロナ禍による派遣切りに遭い、ネットカフェなど拠り所を失い、追い詰められ、助けを求める人たち。対する行政の「水際作戦」の横行。緊急事態宣言発出日以降の支援者の日記から浮かび上がる、福祉の貧困と、それに抗い、つながる人たち。この社会の実態を突きつける貴重なドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • ◯表紙が絵本のようでとても可愛い。絵本のように現実を風刺化している、というには直裁的ではある。
    ◯行政機関、主に福祉事務所の水際対策に憤る支援者たち。コロナで感染の恐怖もある中、要であり急である支援なために駆け回る姿には感動すら覚える。
    ◯しかし福祉事務所の水際対策はなぜ起きるのか、福祉に携わった経験のある人間としては、やはり気になる。
    ◯保護を受けたいという人でも、それまで税金(それこそ消費税だって)を支払ってきたのであるから、生保を受けるのは当然である、これは分かる。しかし、もしも福祉事務所が税金であるがため、平等に接することに徹しているのだとしたら、福祉事務所の考え方も分からないでもない。税金で給料をもらっているということは、税金の番人であり、公平を突き詰めているのではないか。(この本に出てきた役所の対応はどうかと思うが)
    ◯しかし、以前何かの本で読んでいたが、税金という観点から考えれば、捕捉率との兼ね合いで考えても、そこまで保護費が逼迫するのかは分からない。この際全員助ければ良いという発想に、世の中がなれば良い。それでも、福祉事務所の人員不足は確かにあるが、それは委託等でこなしていくのか。
    ◯そして、役所の人間が次に心配しているのは騙されることではないか。しかし、それと助けるべき人を助けないこととはちょっと筋が違う。違法は罰すれば良い。
    そして不正受給が起きることと、助けられた人が無事な生活を営めるようになることでは、後者の割合の社会的な貢献度は大きいのではないか。そういう発想も重要だと思う。
    ◯福祉の未来はまだまだ前途多難であると感じた。支援者の方々は、第一波よりも過酷な第二波、第三波の渦中で、かつ、緊急事態宣言の中で、今でも支援をしているとしたら、自分だってその場に駆けつけたい、そんな気がしてくるのだ。

  • 【寄稿】コロナ禍で増加する相談者、ウソで追い返す福祉事務所(小林美穂子) | マガジン9
    https://maga9.jp/200930-2/

    コロナ禍の東京を駆ける - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b539123.html

  • 表紙が好きで衝動買いしましたが、内容も素晴らしかったです。何より読みやすいですし、東京がこうなら大阪もやばいかも……と思いました。

  • コロナ禍は、多くの人に不自由を強い、不利益をもたらしたが、厳しい社会情勢の中で最も影響を受けるのは、得てして、不安定な立場の人たちである。
    「つくろい東京ファンド」は、こうした弱い立場の人たちに寄り添う組織である。社会支援にもさまざまな形があるだろうが、この組織の特色は、ハウジングファースト、つまり、「住まい」を基本においていることである。安定した生活はまず安定した住まいから。その理念を胸に、路上生活の人々が、アパートなどの独立した住居に入居できるよう支援する。
    コロナ禍で、生活困窮者がよく利用していたネットカフェが軒並み閉鎖された。潜在していた困窮者があぶりだされる形になったわけだが、そうして表に出てきた彼らが福祉事務所に行くと、ここで紹介されるのは往々にして無料低額宿泊所と呼ばれる施設である。戦後、篤志家による支援をモデルケースとした仕組みだったが、近年は悪質な業者が多く参入し「貧困ビジネス」と称されるものが増えている。悪質なところに入居してしまうと、困窮者は生活保護費をむしりとられるだけで、碌な支援も受けられず、そこから抜け出せなくなる。衛生状態もよくない中での集団生活であり、コロナ禍では重要となるソーシャルディスタンスも保てない。
    感染対策として、行政がビジネスホテルの借り上げもするようになったのだが、実際の利用へのハードルは高い。福祉事務所はあまり紹介をしたがらないのである。
    困窮者とともに福祉事務所へ出向き、まずはビジネスホテル、そして独立した住居に住めるよう、制度への橋渡しをするのが彼らの仕事である。

    本文の大半はファンドのスタッフであり、代表・稲葉剛のパートナーでもある小林美穂子がFacebookに上げていた日記。これをライター・和田靜香が抜粋してまとめている形である。
    行政によるたらいまわし、論理のすり替え、冷淡さと闘う日々の記録といったところだろうか。怒りももどかしさも辛さもありつつ、エネルギッシュにユーモアも交えてつづられている。
    制度はあるのに、なかなか実際の利用にまでたどり着けないのが実情。あまりに対応のひどい行政区は実名も出しているが、全体には、個々の担当者の資質や個々の行政区が抱える問題がどうこうというよりも(それがないというわけではないのだろうが)、制度の問題があるのではないかという印象を受ける(理想的には、どんな人が担当者であろうとも、適切な運用がなされる「べき」だろう)。本書の視点からでは、もちろん、行政側の言い分は見えにくいわけで、それはそれで聞いてみたいような気はするが。
    いずれにしろ、困窮し、疲弊した人に寄り添い、時には彼らの代わりに、彼ら以上に熱く戦う存在というのは、困窮者にとっては心励まされる存在だろう。
    同時に、支援する側の精神的な負担の重さも窺われ、息の長い支援を続けていく困難さを思う。

    コロナ禍があぶりだした生活困窮者支援の問題は、コロナ禍が収束してもなお続く。
    今、そしてこの先、社会が備えるべきセーフティネットとはどのようなものだろうか。
    さまざま考えさせられる1冊である。

  • 医療と福祉は表裏一体,隣り合わせだと思っていた.だから,「何となく」分かってるつもりでいたけど,勘違いも甚しかった.
    福祉の入り口で,何が行われているのか…恐ろしい国に生きてること,思い知った.
    生活保護制度の悪用なんてほんの一部だし,受給者は「自己責任」ではない事,頭で分かってても何処かでフィルターかけてた自分に気がついて,恥ずかしくなるやら情けないやら…
    とにかくとにかく,大事な大事な一冊です.
    みんな,借りてでも良いから読んで!
    いや,買って読んで応援してほしいです!

  • 自分の体調も省みず、困窮した人たちのために、まさに走り回っておられる姿に、いくら頭を下げても下げ切れないくらいだ。
    それに対する行政の対応は呆れるばかり。どうしてそんなことになってしまっているのか。本当にわからない。ギリギリで生活していた人たちが、コロナ禍で仕事を失い、住まい(ネットカフェ)を失ってしまう。その人たちに住居や生活できるお金を与えないって、どういうこと?生活保護がすんなり通らない国で、うかうかと生きていられないではなあか、国民全員。税金の使い方が間違っているとしか思えない。
    絶望的な気持ちになるところだが、自分の時間、身体、心のすべてを投げ出して奮闘する、フルタイムの仕事をしながら支援を続ける、組織を作って、ネットを張り巡らせ、世間に訴え、支援を広げる方々は何よりも希望になる。
    本当はそこまでが国の仕事と思うけど。

  • 選書番号:317

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/535956

  • 学術書ではないけれど…福祉関係者には読んでほしい内容.たぶん,ソーシャルワーク実践そのもの

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