完全版 チェルノブイリの祈り――未来の物語

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感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000614528

作品紹介・あらすじ

一九八六年四月二六日、その事故は起こった。人間の想像力をこえる巨大な惨事に遭遇した人びとが語る個人的な体験、その切なる声と願いを、作家は被災地での丹念な取材により書きとめる。消防士の夫を看取る妻、事故処理にあたる兵士、汚染地に留まりつづける老婆——。旧版より約一・七倍の増補改訂が施された完全版。解説=梨木香歩

感想・レビュー・書評

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  • ナルホド、そう言うコトか、、、完全版と言うのは
    「巨大な原発事故に遭遇した人びとの証言集。旧版より約一・七倍の増補改訂。ノーベル賞作品。解説=梨木香歩」

    ※2015年の記事
    ベラルーシ作家がノーベル文学賞 - ロシア・ビヨンド
    https://jp.rbth.com/arts/2015/10/11/481687

    完全版 チェルノブイリの祈り - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b556134.html

  • 『アレクシエーヴィチとの対話』刊行記念公開オンライン研究会に参加するために読んだ。
    『チェルノブイリの祈り』は既読だが、本書は旧版の1.7倍の増補改訂版だということで、どうしても読んでおきたかった。/

    2021年6月23日、運転開始から40年を超えた福井県にある関西電力の美浜原発3号機が、再稼働した。
    また、7月21日、経産省は、改定「エネルギー基本計画」の素案を発表した。
    そこでは、原子力発電は、安定的なエネルギー供給源を確保する観点から、20~22%を維持することとされている。
    「フクシマ」では足りないのか。
    このうえ、まだ、「チェルノブイリ」が必要だというのか?/


    《一九八六年四月二六日(略)ーー一連の爆発によってベラルーシ国境近くにあるチェルノブイリ原子力発電所四号機の原子炉と建屋が崩壊した。
    (略)
    チェルノブイリのあと、わが国(ベラルーシ)は四八五の村と町を失い、そのうち七〇はすでに永久に土中に埋葬された。
    (略)
    今日では五人に一人が汚染された国土に住んでいる。その数は二一〇万人で、そのうち七〇万人が子どもである。
    (略)
    チェルノブイリの惨事の被害がもっとも大きかったゴメリ州とモギリョフ州では、死亡率が出生率を二〇パーセント上まわっている。
    事故の結果、大気中に五〇〇〇万キュリーの放射性物質が放出され、そのうち七〇パーセントがベラルーシに降った。国土の二三パーセントが放射性物質に汚染され、(以下略)》/

    《チェルノブイリ事故以前‥‥腫瘍疾患はベラルーシ国民一〇万人あたり八二人であった。今日の統計では、一〇万人あたり六〇〇〇人。ほぼ七四倍に増えている。》/


    《あの日‥‥。わたし、ベラルーシ科学アカデミー核エネルギー研究所実験室長は、職場に着きました。研究所はミンスクの郊外、森のなかにあります。すばらしい天気だ!春です。窓を開けた。

    ー中略ー

    このとき、研究所の原子炉ではパニックが起きていたのです。放射線モニタリング計器が放射能の上昇を示し、空気浄化装置のフィルター付近では二〇〇倍にはねあがっていました。(略)いったいなにが起きたのか。

    ー中略ー

    昼ちかく、あきらかになった。ミンスクの上空一帯に放射能雲がある。(略)
    どこかの原子炉で事故が起きたのです‥‥。
    まっさきに考えたのは、自宅に電話して妻に注意しなくては、ということ。しかし研究所の電話はすべて盗聴されている。
    (略)
    それでもやはりがまんできず、受話器をとる。
    「いいか、よく聞いてくれ」
    「なんなの」。妻が大声で聞きかえした。
    「大声をだすな。換気窓を閉めろ。食料品はぜんぶポリ袋に入れろ。ゴム手袋をして、濡れぞうきんでふけるものをぜんぶふけ。ぞうきんもポリ袋にいれて、はなれたところにしまっておけ。ベランダに干した洗濯ものは洗いなおせ。パンは買うな。(略)」
    「そっちでなにがあったの」
    「大声をだすな。コップいっぱいの水にヨードを二滴たらして溶かせ。頭を洗え‥‥」》/


    ここに引用したのは、僕が特に感動した箇所という訳ではありません。
    引用したい部分があまりに多かったため、本書の副題である「未来の物語」という観点から上記の部分のみを選び、他の部分については、泣く泣く割愛しました。
    旧版『チェルノブイリの祈り』の感想

    https://bookmeter.com/reviews/55222016

    https://www.honzuki.jp/book/188552/review/247495/

    でも二〜三引用していますので、よろしかったらそちらもご覧下さい。

  • “ここでは私たちみんながチェルノブイリの被災者です。庭の畑のりんごやキュウリをごちそうされてもお互いに驚いたりしません。もらって食べます。あとですてようと、きまり悪そうにバックやポケットにいれたりしない。私たちは記憶をともにし、運命をともにしています。ところが、よそではどこでも私たちはのけ者にされる。〈チェルノブイリの人々〉〈チェルノブイリの子どもたち〉〈チェルノブイリの移住者〉。もうすっかりおなじみのことばです。”

  • 完全版の前の版を読みました。
    チェルノブイリ原発事故の事実は世界中誰でも耳にしたことはあると思う。
    社会主義国家による情報統制下でこれまでの35年間、そして今後も何百万人ものベラルーシ国民が悲惨な状況下で、日常生活を送るさまになんとも言えない無力感を感じる。こんな世界が普通に存在するのかと。
    政府だけでなく、医師、科学者、教育者誰ひとりとして真実を国民に伝える事が出来ず、ただ、ひとりひとりが目の前で起きたことを語る。それが国民が知る唯一の真実だから。
    先の福島第一原発事故を国会事故調査委員会は人災と報告したが、チェルノブイリ原発事故もここまで被害が広域かつ長期的となり、多くの国民を苦しめる状況となったのは、まさに人災によるものではないかと思う。

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