- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000614832
作品紹介・あらすじ
大学などの学術界から「外」に出た博士たちは、何を感じ、どう生きているのか。研究の経験は、その後にどう活かされるのか。企業の研究職から官僚そして指揮者まで、主に理系の博士号取得者たちが、酸いも甘いもひっくるめて語りつくす。21人の目は「外」の世界をいきいきと映し出し、そしてアカデミアのいまを見つめる。
感想・レビュー・書評
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なかなか面白い。
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博士課程後、世間的には(あるいは、博士を取得した当事者にとっても)それ以降の道はアカデミア職しかないのでは、という思い込みを良い意味で払拭してくれた。よく言われる、生存バイアスについても、コラムを寄せている方々が非常に気をつけて話してくれているのだろうな、というのが伝わってきた。これまで、博士を出た当事者たちの声を多方面からまとめた本はなかったように思うので
ありがたい。
一方で、これは完全に私個人の感想なのだが、もう少しキャリア形成のジェンダーギャップに触れても良いのではないかと思った。男性研究者の方が語るキャリア転換期には、当然のように配偶者の方がついてきてくれることが前提として語られていた。一方で、女性研究者の方は出産後にかなり男性のそれとは異なるキャリア上の困難が語られているにもかかわらず、編集者の方がノータッチなのがなんだかな。。という感じはした。各コラムの最後に、その人たちの略歴が書かれているのだが、女性研究者がn児の母的な紹介がある一方で、男性研究者だとお子さんがいてもその紹介文がないのは、編集部として無意識なのだとしたら結構やばい感覚なのではおもう。 -
パッケージングとして面白いし重要な仕事だと思う。ノンフィクション本としてフラットに見ると、最初のエピソード以外は特に面白くはない。いろんな業界、いろんな時代にいろんな仕組みがあるなと思う。ベンチャーキャピタリスト、弁理士、行政官、URA、初めて聞いたり説明できなかったりする職業ばかりで、なるほどどれも重要そう。
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博士号を取得しても、大学をはじめとする研究機関に残れるとは限らないわけですが、この本では、研究機関から離れてしまった方たちの生き方が取り上げられています。
中には、大学の教員だった人がアカデミアを離れるケースもあり、博士号を持つ人たちの、いろんな人生に触れられる一冊になっています。
自分自身、大学4年生ぐらいまでは、「博士課程に進みたいな」と思っていたのですが、修士課程に進んだ直後に、「研究者は自分には合っていないようだ」と思い始めました。
それでも何とか、修士課程は修了しました(就職が決まっていたので、修了させてくれたのだと思います)。
この本には、博士課程に進んでから「向いていない」と気づく人が、割と多めに取り上げられているように思います。
修士課程で「向いていない」と思った自分には、博士課程でようやく「向いていない」ことに気づくことは、自分の理解を越えているのですが、実際に博士課程に進学しないとわからないこともあるのでしょうね。
ちなみに、この本に取り上げられている人たちは、成功者といってよい人たちなので、皆さん、アカデミアを離れて苦労はしていても、充実した日々を送られているようです。
そういう意味では、勇気を与えてくれる本だと思います。
慣例に縛られたり、自分の過去に縛られたりすることなく、自分自身を信じて生きることの大切さを教えてくれたような気がします。 -
p31 大隅良典先生 人生のコントロール実験はないんだよ
p112 すべての分野の論文を統一的はかることができる指標
iMD index for measuring diversity -
博士号を取得した後に大学での研究以外の道に進まれた方たちの体験談。高校生の時に読んだ“東大合格者の体験談”みたいなものを思い出した。体験談を書けるということ自体、こちらにも“生存者バイアス”はあるだろう。そのため本書が博士課程に居る、あるいは進む人たちを勇気づけるものかはよくわからないが、いろんな職業や生き方があるんだと参考になった。
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ジョブ型雇用は専門性を活かせ博士号取得者の就職には追い風になっている。アカデミアを離れたら好きな研究が続けられない想いと引き換えではあっても、分野の最先端にかかわってきた経験と今現在との結び付きについての語り口は、それぞれ個性的でありながら雄弁かつ分かりやすい。アカデミアで過ごした時間はそれぞれの魅力になって一生続くと思われました。