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Amazon.co.jp ・本 (198ページ) / ISBN・EAN: 9784000615044
作品紹介・あらすじ
■編集部からのメッセージ
この本にはMOMENT JOONという不世出のラッパーが、日本で十年を過ごすうちに体験し、思考したことが詰まっています。
ヒップホップには「セルフボースト」と呼ばれる文化があります。一言でいえば「自分であることを誇る」ということです。ただし、抑圧された人間が「自分であることを誇る」ためには、多数派で構成された社会から、自分の声、自分の表現、自分の歴史と呼べるものを見つけ、再定義し、奪い返さなければなりません。
2020年発表のアルバム『Passport & Garcon』は、MOMENT JOONが「移民」としての自分を表現したアルバムでした。日本社会における排外主義の興隆や差別意識の蔓延、同調圧力、シニシズムといったものを怒りや不安とともに突きつけ、その上で「君が居るから日本は美しい」と歌っています。このアルバムは、これまでの日本のヒップホップでは描かれなかった世界を表現したものとして絶賛されましたが、いっぽうで作品そのものに向き合うことなく、「社会派」や「シリアス」といった狭い領域に押し込めてしまうような批評も散見されました。
それは作品に原因があるのではなく、差別や排外主義について真正面から語られたときに、その当事者の言葉を及び腰にしか受け止められない、この社会の側に問題があると私は思っています。
帯の惹句には「日本語表現に新たな地平を切り開く」と入れました。日本語の外の世界で生まれ育って、日本社会に来た経験を持つMOMENTの言葉にぜひ注目してほしいです。それはたとえ耳が痛い指摘であっても、この社会の狭さを改めて気づかせてくれるものであり、大きな希望であると考えています。
連載では十年間考えてきたことを惜しげもなく吐き出してくださいました。これは日本のヒップホップに金字塔を打ち立てたアルバム『Passport & Garcon』とあわせてこれまでの経験の総括であり、これからさらに活躍が見込まれる表現者の今後の十年にとって、大きな出発点になる本だと思います。ぜひご一読ください。
みんなの感想まとめ
人間の尊厳やアイデンティティを探求するこの作品は、著者が日本での十年間の経験を通じて感じた移民としての苦悩や葛藤を力強く表現しています。読者は、社会の無意識に潜む差別意識や排外主義に直面し、他者を「外...
感想・レビュー・書評
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この先、何度も思い返すだろうと思う。
せめて私自身にそうあって欲しい。
どの章も、心を削るようにして書かれている。
その切実な言葉に、せめて向き合おうとする私であって欲しい。
そうありたい、と言うとそれは自分の意志の話だけど、無意識のところからそういう私でありたいのだ(ここは意志)。
人をこんな苦しめ方をしているのがこの社会なんだ…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「外人」ではなく「移民」という概念。
「日本語上手ですね」「日本人の心をお持ちですね」という何気ない会話。それがこんなにも、もどかしい思いをさせてた可能性があったとは…(反省)
「◯◯人って◯◯だよね」とキャラクター化して理解した気になってしまう弊害と、「わたし」「あなた」という生身の人間として対峙してもらいたいという著者の渇望を強く感じた。
幾多の日本人アーティストが様々な物事を歌ってきたが、それは安全な場所にいるからこその表現であり、失うものがない環境下で平和を叫んだり挑発するのは簡単なことだ。反対に、著者のようにヘイトや立場の危うさのリスクを抱えながらも表明するアーティストの勇気に、敬意を抱かざるを得ない。
日本のエンタメ内容において社会性が希薄なのは「社会派」や「シリアス」と境界線を引く風潮や、大衆側も「何マジになってんの」と冷笑的になる虚しさ。なのに「泣ける」とか、安易な感動は、いつだって需要と供給がある。
大多数の側にいれば、深く思考することもなく、ラクに生きていられる。でも「こんなのおかしい」とあがいている人の視点や考察は、この社会に漂う無意識の差別意識を言語化し、大多数には見えないこの国の輪郭や本質を浮かび上がらせてくれるので、これからも耳を傾けていきたい。 -
普通に日本で暮らしているだけではわからない、マイノリティの視点から見た「日本人」のヘンテコな部分に気づかせてくれる。と同時にヘイトスピーチ(=異質なものに対する恐怖と怯えからくる攻撃的な反応)をする人がこんなにも多いのかとショックを受ける。それを浴びせられながら暮らしている人がいるということを忘れずにいたい。
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ソウル生まれで日本在住12年の筆者が、日々の暮らしや活動の中で感じた違和感をベースとして綴ったエッセイが基になっている。
その違和感は、日本語の微妙なイントネーションの違いや髪の色から、地球温暖化問題への意見まで、様々な領域にわたっている。
あらゆることに「普通」とそうではないことの線引きを行いたがる一方で、アイドルの好みからラーメンの味までいろいろな場面で「〇〇派」と言ってスタンスの違いをアピールしたりする日本の社会の中で生きていく中で、筆者自身が落ち着く場所のなさを痛切に感じている様子が伝わってきた。
どちらの態度も、「内と外」をつくり、その中にいることで安心感を得ようという心の動きなのではないかと思うが、そのような境界線が一方で差別や孤立、排他的な言葉や行動を生むことと紙一重であるということには、われわれも自覚的になっていた方がよいのだろうと思う。
筆者はラッパーとして活動することで、時にはこの境界線を突き破ろうとし、時にはこの境界線によって阻まれた辛い思いを伝えようとしているように感じた。
本書の中心に置かれているラップにおける差別用語の使われ方とその意味に関する修士論文にも示されているように、ラップ世界では、差別を受けている人自身が歌詞の中でその差別用語を使うことで、その意味を取り戻す(Reappropriate)ということがある。
しかし、日本語ラップの世界ではそのような事例が見当たらないと筆者は述べている。
「使ってはいけない」言葉だからなのか、声を上げられないのか、それとも我々がそれを聴こうとしていないのか。ここにも「内と外」を分けてその外側にあるものには触れないようにするという作用があるように思える。
この本によってこのような境界線を間近に感じながら日々暮らしている筆者の言葉を聞くことで、我々自身に境界線の存在を再認識させてくれるように感じた。 -
日本語は単なるツールではないという指摘は身近過ぎて気が付かなかった。日本では「心が日本人」でないといくら日本語を流暢に話そうが日本人として受け入れられない現実がある。
なにがその人を「日本人」にするのかということを考えながら読んだ。この島国の「よそ者」への警戒心は半端ない。逆に身内同士の警戒心はものすごく弱い。「日本人」という個として、「よそ者」を警戒することしかしていなくて、一人一人の人間は「日本人」という個の中に安全に収納されている。
でも現実には「移民」がたくさん存在している。少子化が回復する可能性は低く、これからの日本社会を維持するには「日本人」の意識を変えて「移民」と共に社会を作っていくしかないと思う。そうは思うが、この島国が何百年と形成してきた「日本人」観を、急速に進む少子化と同じスピードで変えていくことが可能なのか正直分からない。まずは自分が「よそ者」に反応する瞬間に気が付き、人をキャラクターで判断しないというところから始めたいと思う。 -
彼の切実さにリアリティが持てなかったのが悲しい
こういう自分のような人が考え無しに傷つける言葉を使ってしまうのかも、と思うと背筋が凍る
でも知った。スタートラインには立てたと思っている -
もともと曲(声やフロウ)が好きだったが、これを読んだあとだと歌詞がいかにリアルな彼自身の言葉なのかが分かった。日本人にとって差別用語も銃の表現も差し迫った問題ではないはずなのに、なぜか日本HIPHOPにおいては頻出しているという状況のなかで彼が発する「チョン」や「移民」には軽さがないことがわかるだろう。
移民や韓国の話題が中心とはなっている。個人的には移民問題をもっと広く捉え「キャラクター」と「個人」の乖離について述べている部分の洞察や悩みの部分が面白かった。 -
ウェブ連載が書籍化したので読んだ。他のウェブ記事と同じように流し読むのはもったいないと思って取っておいたので書籍化は大変嬉しい。昨年リリースされたアルバムの製作ノートのようなエッセイでめちゃくちゃオモシロかった。
10章+αという構成で彼が日本で11年間暮らして感じた違和感、苦しみなどが様々な形で表現されている。ウィットとアイロニーてんこ盛りで、ですますかつ読者に語りかける文体なので読み手にぐいぐい迫ってくる。一番強く感じたのは自分自身が持っている日本人としての権利に対して無自覚なんだなということ。国家の政策として移民を制限していることもあり、周りには日本国籍を持った人がほとんどでその特権が相対化される機会がなかなかない中、彼の言葉で綴られる「外国人」が日本で暮らす苦労・苦しみは正直分かっていないことばかり。何となく社会がスルーしていることを仔細に言葉を尽くして説明している。これはアルバムも同様で彼の提起していることや意見していることは露骨な差別主義者だけではなくて、無関心な人やなんなら「リベラル」を自称する人の心に巣食う無意識な差別の意識の話であり誰も他人事ではないのだと、どの章を読んでも感じた。
中盤に彼が修論で取り組んでいる楽曲におけるカースワード使用に関する研究もオモシロい。これだけ言葉を定性的・定量的に研究している人がラッパーで、しかもその研究内容を自ら実践しているだなんて!優れたラッパーは他人のラップを貪欲に吸収する姿勢を持っていると思っているので、彼はまさしくそれをガチでやっていて興味深かった。
あと「在日」に関する考察も自分の理解を深める一助になった。恥ずかしながら昨年「パチンコ」という小説を読んで初めて在日の実態を知った。本著ではある程度成長した大学生として日本へやってきた彼の視点から「在日」を再定義するような論考になっており、またその何重もの複雑な構造は日本社会が構築してしまっていることも知り、うーん…という気持ちになった。そして、ここまで述べてきた読者の気持ちをまるで察するかのようなパンチラインがぶち込まれており、これを言えるラッパーがMOMENT JOONという日本を代表するラッパーだ。
あなたが「何となく分かっている」と思っているものを「それって実はこうなんですよ」とさらに明快に答えるのは、政治家、またはプロバガンダの仕事です。あなたが「何となく分かっている」ものは、実はあなたが想像するよりもっと複雑で敏感です、と理解させるのが芸術家の仕事です。 -
自意識の密度がすごい。それをラップにするだけでなく、研究にまでする。自意識が止まらない自分をラップにする自分を研究する自分をエッセイにする自分…。いわゆる「差別語」や「在日」について、底なしに突き詰めていく様もすごい。
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4章〜特に良い。
著者にとって第3言語である日本語でこんなにも自分の言葉でテーマを持てる、闘う存在。ラップもとってもうまい。阪大の修士論文でHIPHOPにおけるNワードの使用のされ方を研究していたのが興味深く、この本に一部書いてくれてありがたい、論文を全部読みたい。プラグマティズム言語哲学なのですかね。
モーメントは自らを「移民」と意識的に名乗り、「チョン」はラップのなかで自分には言うが同胞には決して使わない。
ここで同胞と書いた広くイメージしやすい「在日コリアン」については、その定義は統計上のためになし崩し的には存在するものの、自己認識や名乗り方(当然、名乗るかどうかの選択も含め)は画一的で全くないらしい。差別問題に意識的に取り組むモーメントは、レペゼン「在日コリアン」でゲンロンしているわけではなく、どちらかというと、トリリンガルで頭脳も明晰で"言いたいことを言っていける"彼とそうではない在日コリアンの大勢との間の、強く言えば階級的な分裂のようなものにどうしようもなく佇んでいるようにも見え、その葛藤や孤独がリアルな記述だったように思えた。
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うーんまさに3年前の若者ってぽい感じ。読書が抱きそうな感想を先読みしたり操ろうとする文章苦手だったしユーモアが足りてないけど若者はまあ怒りだけでユーモラスに見えるのかもとは思った
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岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00633283
韓国出身の移民として生きる経験に根ざし、日本語表現の新たな地平を切り開くラッパー、MOMENT JOON。日本のヒップホップ、「外人」であること、差別語、詩人・金時鐘との出会いなど、日々の経験と思索から見える日本社会の風景を、鋭く率直な言葉で綴る。硬直した社会にくさびを打ち込む、待望にして初の著作!
(出版社HPより) -
767.8||Mo
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女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055813
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東2法経図・6F開架:KW/2021//K
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東京新聞202219掲載 評者:いとうせいこう(ラッパー)
日経新聞2022115掲載
読売新聞2022328掲載 評者:柴崎友香(作家)
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