- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000615266
作品紹介・あらすじ
受刑者が互いの体験に耳を傾け、本音で語りあう。そんな更生プログラムをもつ男子刑務所がある。埋もれていた自身の傷に、言葉を与えようとする瞬間。償いとは何かを突きつける仲間の一言。取材期間一〇年超、日本で初めて「塀の中」の長期撮影を実現し、繊細なプロセスを見届けた著者がおくる、圧巻のノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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島根あさひ社会復帰促進センターという、犯罪を犯した男性たちを収容する刑務所がある。
そこの画期的な更正プログラムを撮ったドキュメンタリー映画『プリズンサークル』の十年に及ぶ撮影秘話と後日談が収められたノンフィクション。
犯罪を犯す人間はどういう環境で育ち、どういった思考を持ち、どうやって罪を犯してしまったのか。
彼らが語る、信頼できるはずの大人からの虐待、周囲からのいじめの被害、自身の加害体験に暗澹たる思いがした。
暴力は連鎖する、とはアリス・ミラーの言葉。
犯罪の加害者たちに与えられたのが暴力ではなく、ぎゅっと抱きしめる愛情深い手だったら、と思わずにはいられない。
みなさん、よくぞ話してくれました。
坂上さん、よくぞ書いてくれました。
塀の向こう側にサンクチュアリ(安心できる場所)を作ることができたんなら、塀のこっち側にも作れる。
それにはこっち側の許容と理解が必要だ。
読み終わったあと、あらためて、帯の教育学者の上間陽子さん(『海をあげる』)の言葉が突きつけられる。
「私たちもまた泣いているあの子を見捨てた加害者のひとりではなかったか?」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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◆安心して過去 語れる場[評]河原理子(ジャーナリスト、東京大特任教授)
プリズン・サークル 坂上香著:東京新聞 TOKYO Web
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プリズン・サークル 坂上香著:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/180105?rct=book2022/05/30
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出版のタイミングで期間限定の配信があり、同名の映画と監督のトークイベントを先に見たのが大正解。このふたつはそれぞれ完成された作品なのだけど、併せて鑑賞することで見えてくるものが立体的になってくる。個人的な傾聴経験からも、社会には「安全に語り合える場」が必要だと常々感じるところでもあり、「今ここ」で、自分にできる事を続けたい。
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2008年に「新しい刑務所」として開所された「島根あさひ社会復帰促進センター」で行われているTC(回復共同体)という更生プログラム。それは、受刑者同士が互いの話に耳を傾け本音で話し合いながら罪と向き合う。
日本で初めて刑務所内での長期撮影を行った模様が映画化された『プリズン・サークル』(坂上香監督)の書籍版。映画で登場した彼らの「その後」を知れ、罪とは、罰とは、更生とは何か?ということを問いかけてくる。昨年、映画を見ましたがその衝撃が大きく、このように書籍化され冷静に自分自身に向き合えました。 -
衝撃的だ。犯罪者といえば忌むべき恐ろしい存在で厳しい懲罰と管理が必要だ、というのが固定観念だったことに驚かされる。本書を読むと、刑務所に収容されている受刑者こそ、世代間連鎖の被害者であり、社会的弱者であり、刑務官、弁護士、社会常識のほうが冷酷で無慈悲な悪だと感じ、映画の主人公たちに感情移入し、エールを送りたくなる。成熟した社会は、加害者をうみださないのだろうか。映画を見てみたい。
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4.45/289
『受刑者が互いの体験に耳を傾け、本音で語りあう。そんな更生プログラムをもつ男子刑務所がある。埋もれていた自身の傷に、言葉を与えようとする瞬間。償いとは何かを突きつける仲間の一言。取材期間10年超、日本で初めて「塀の中」の長期撮影を実現し、繊細なプロセスを見届けた著者がおくる、圧巻のノンフィクション。』(「岩波書店」サイトより)
冒頭
『 プロローグ「新しい刑務所」
少年には、嘘しか言えない理由がありました。「嘘つきの少年」より
ドキュメンタリー映画の制作過程には、「映画の生まれる瞬間」がある。完成や劇場公開といった物理的な誕生のことではなく、撮影や編集段階で起こる予期せぬ何か。映画にとって決定的な要素――それがあったから映画が成立したとまでいえるような重要な場面――で、一度とは限らない。』
『プリズン・サークル』
著者:坂上 香(さかがみ かおり)
出版社 : 岩波書店
単行本 : 300ページ
発売日 : 2022/3/25
ISBN : 9784000615266 -
受刑者が互いの体験に耳を傾け、本音で語り合う、そんな更生プログラムを持つ男子刑務所がある。そこで2014年夏から2年間、出所後の取材を含めると5年余り監督としてカメラをまわし、2020年に映画として公開した著者の渾身のノンフィクション。
舞台は島根あさひ社会復帰促進センター。日本で4つしかないPFI刑務所のひとつで、ドアの施錠と食事の搬送は自動化され、ICタグとCCTVカメラが受刑者を監視するなど、従来の刑務所にないシステムが取り入れられている。
著者が取材したのは、ここで実施されているTC(セラピューティック・コミュニティ)と呼ばれる更生プログラム。受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り、更生を促すことを目的としている。受刑者は犯した罪だけでなく、幼い頃の貧困、いじめ、虐待、差別などの記憶をたどり自らの感情に向き合い、それらを表現する言葉を獲得していく。これはエモーショナル・リテラシーと呼ばれ、感情の読み書き能力を鍛えること。そして、隠してきた辛さや隠されてきた恥をグループの中で明かし、サンクチュアリ(安心できる場所)としてグループ全体がそれを包摂するというもの。「暴力を学び落とす」ことにもつながる。日本の刑務所を特徴づける沈黙とは真逆の「対話」をキーワードに受刑者の人間的な成長を目指し、ひいては再犯防止に繋げようという取組だ。受刑者の再犯率が高いということは、これまで頭にインプットされていたが、今後、再犯防止へのTCの効果が広く認められ、定着していくことを願いたい。また、子どもの頃に受けたいじめ、虐待、暴力で無力感が身に付き、それが自分より無力な相手に対する暴力を振るうようになるという連鎖についても強く胸の中に残った。
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