破果

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  • 岩波書店 (2022年12月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (278ページ) / ISBN・EAN: 9784000615761

作品紹介・あらすじ

稼業ひとすじ45年。かつて名を馳せた腕利きの女殺し屋・爪角(チョガク)も老いからは逃れられず、ある日致命的なミスを犯してしまう。守るべきものはつくらない、を信条にハードな現場を生き抜いてきた彼女が心身の揺らぎを受け入れるとき、人生最後の死闘がはじまる。韓国文学史上最高の「キラー小説」、待望の日本上陸!

みんなの感想まとめ

老いと向き合うベテランの女性殺し屋の物語が描かれています。65歳の爪角は、45年のキャリアを持ちながらも、老いによる身体的な衰えや心の揺らぎに直面します。彼女が犯した致命的なミスと、医者との出会いが彼...

感想・レビュー・書評

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  • 人生の終焉が見えつつある高齢の女殺し屋の運命… 力の衰えと意地の間で揺れ動く心情はいかに #破果

    ■あらすじ
    主人公、爪角(チョガク)は、女性で高齢ながらも殺し屋として生活を送っていた。徐々に老化の衰えが見えてくる彼女だったが、いつも殺し屋の信条や心得は忘れずにいた。
    ある日、彼女は殺しの依頼でミスをしてしまい、重症を負ってしまう。殺し屋御用達の病院に駆け込み、馴染みの闇医者に治療を行ってもらうつもりだったが、治療をしてくれたのは若く穢れのない医者であった。
    彼との出会いで、人生の終焉に近い殺し屋の運命はどうなっていくのか…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    人ひとりの人生、まるごとずっしり体験できる作品。いやぁ…痺れました。

    殺し屋の犯罪小説よくありますが、エンタメに寄せたり、ハードボイルドに決めたり、家族の絆ものが多いです。しかし本作は殺し屋ひとりの背景から、葛藤や心の機微をつぶさに綴っていく、人を描いていく物語です。

    今まではできていたことができなくなる、避けられない老い。自分とは価値観が違う殺し屋仲間との確執。何十年も守ってきた自分へのルールが揺れ動き、徐々に崩壊しつつある自分を憂いでゆく。読めば読むほどジワジワと負の情動が侵食していくんです。

    とにかく本書の読みどころは、主人公の爪角の心情描写です。
    どんな卑劣な職業であっても、愛らしいものや可憐なものには心がときめいてしまう。張り詰めた緊張感のある生活、自らの運命や約束。現実に戻ってきた時の悲しさたるやなんと切ないことか…

    また小道具の描写も非常に文芸的でイイんですよね。
    美しさと残酷さを象徴としたネイルや、熟れ過ぎた桃と自身の対比描写。我々が望む希望と現実の差が、いかに無情なものか。いつまでも春の桜のように咲いていたいものです。

    個人的な好みとしては、もう少しエンタメに寄せてくれると楽しみやすかったのですが、人の描き方やメッセージ性としては一級品でしたね。心に刺さる、めっちゃ素敵な作品でした。

    ■きっと共感できる書評
    人生いろいろな経験したり、職業についたり、人間関係を築いたり、年齢を重ねていくと、つい忘れてしまうことがある。理由は経済的な問題だったり、憎しみや辛さだったりする。

    しかし自分が大切だと思っていることは、やはり守っていくべきだと思う。
    いや、守っていくべきだと思っていること自体に価値があって、それが自分自身を強くしてくれる。決して老いは弱っていくことではなく、人格をさらに磨いていくことだと信じたいです。

  • 65歳の爪角(チョガク)は、平凡な老女かと思いきや実は45年のキャリアを持つベテランの殺し屋である。
    電車のなかから始まるターゲットを狙った行動を目の当たりにすることから始まる物語。

    だが老いを感じていた矢先にミスを犯し、たまたま秘密を共有することになった医者との出会い以降、少しずつ歯車が狂い始める。

    身体がいうことをきかなくなっただけではなく、心までもがいうことをきかなくなる自分に気づく。
    よろめく老人の姿を追い、手を貸してしまう自分に…。
    ターゲットを苦しめずに殺す方法に…。
    殺し屋になる前の自分を思い出したり、とうの昔に捨てたはずの恋慕に近い感情までもが蘇る。

    そんな爪角に敵意を剥き出しにするトゥは、彼女を挑発し最後には死闘を繰り広げることになり…。


    もともと殺し屋の素質があったのだろうかもしれないが、このような生き方しかできなかった彼女の人生に凄さや重みを感じながらも死ぬまで殺し屋なのか…と思わずにはいられない。

    印象を残すような身なりをせずに生きてきた彼女が、最後にネイルアートをした爪に一瞬だけでも輝き消えていくものに笑顔を見せたことが、少しだけわかる気がした。




  • 韓国の女性の小説家ってすごいなと思うことが続いている。
    出生率が日本より低いことから、家父長制とそれによる分断が、日本よりキツいのだろうなと、推測されるのですが、「自由を奪われている人は、自由を謳歌している人より余程、世の仕組みについて明確に知ることができる」と丸山眞男先生もおしゃっる通り、抑圧された韓国の女性作家の小説からは。鋭い人間観察と深い人生観がバシバシ感じられます。

    老境に入った女性が子どもを守るという設定は、映画の「グロリア」を思わせる。「グロリア」もメチャクチャいい映画だけど、この小説の主役「爪角」は「グロリア」よりも年齢はるかに上の65歳!なのに若い男に惚れちゃうし、急に気弱になって今までの信念を忘れちゃうし。プロとしては、ダメになっちゃったおばあちゃんなのですよ。
    その設定が新鮮!確かに男ではそういう設定はあったのだけど、女では今までなかったですね。

    エンターテイメント性を持ったノワール小説なのだけど、文学の香りが濃厚にする。
    最強ではないでしょうか?

  • このミス2024の海外編で韓国版ノワールとのことで興味津々。早速読んでみました。
    65歳の殺し屋女性、業界歴45年のベテランも老いには勝てず。体だけでなく心もいうことをきかなくなってきて・・・
    仕事のミス、老いの生活、
    ラスト、因縁のある若い殺し屋との闘いもヨカッタ!
    韓国の翻訳小説は初めてだったが、とても良い作品に巡り会うことができました~



  •  この作品を読んで、真っ先に思ったのが、イギリス映画みたいだ。イギリスの映画では、年配女性を主人公にした作品をよく目にする。はじめは、疑問を感じていたが熟練こその深みを感じる。
     表紙に惹かれてこの本を手にし、爪角の静なる強さに魅力を感じたし、かっこいいと惚れ惚れした。何と言っても、ノアールおばあちゃんという新ジャンルが新鮮で、物語の世界にのめり込んでしまった。続編もあるようなので、続けて読んでみようと思う。

  • 最近話題の韓国文学。
    主人公は年老いた殺し屋の女性で、何者かに狙われる彼女の戦いを描いたもの。いわゆるノアール小説ということになるのだろう。
    そこそこのページ数だが、テンポがよいのでするする読める。主人公の描き方も上手く、結末はどうなるのか、ドキドキはらはらした。
    しかしそれ以外の部分で雑だなぁと思うところも多々あり。
    読後感がよかったのが救い。

  • 非情であるべき殺し屋のベテランにしては、爪角は感情の揺れが大きすぎて、そんなんで45年もよくやってこられたねぇ…と訝ってしまうけど、それを差し引いても最後まで引き込まれるように読み切ったのは、爪角が自身の生き方にどんな風にケリをつけるのか見届けたいと強く思わされたから…でしょうか。

    ここに描かれている爪角は、甘いし、ゆるいし、迂闊だし、そんなんじゃダメでしょ⁈ってツッコミどころはたくさんあります。が、それが老いの結果ということなのだとしたら、人間とはかくも愛おしいものなのか…と思ってしまいました。ノアール小説でこんな風に思うなんて、とても不思議です。でも、自分に置き換えると、57歳で未経験の仕事に採用していただき、落ちた記憶力や、咄嗟のときに全然回らない思考力にガッカリしながらも、なんとか楽しんで働いている自分も、ポンコツだけどけっこう愛おしいじゃん?

    老いを常に自覚させられて、厳しい現実をつきつけられる毎日ですが、そんな自分を愛おしいと思わせてくれた爪角に感謝。

  • また新たな韓国文学の深みにはまった。

    主人公でベテランの殺し屋、爪角は65歳を迎えた老女。
    守るべきものをつくらないことを信条に稼業一本で生きてた彼女の、老いによるままならなさが胸に迫る。

    「破果」というタイトルに込められた意味に、心身の老いは瑞々しい若さには劣り、価値がないものという固定観念への疑問視が感じ取られる。
    ベテランとはいえ老いを迎えた爪角と若き殺し屋トゥとの死闘の場面、そしてラストは特に読み応えがあった。

    ノワール小説でありながら、女性や老いへの蔑視、弱者を叩くことが黙認される社会への痛烈な批判も込められた作品。
    爪角がリュウのもとに行けるまで、老いも弱さも抱えながらそれでも生ききってほしい。

  • 翻訳物にありがちな余計な言い回しが多すぎて、まどろっこしく感じた。
    そのせいか女殺し屋の心理が私には伝わりにくかった。
    トゥが結局何をしたかったのかも、いまいち理解ができなかった。

  • 65歳のベテラン女性殺し屋が主人公。とは言っても、”見かけに反してめちゃくちゃ強い”みたいな展開ではなく(そういうのも好きだけど)、加齢による体力、判断力の低下を自覚し、仕事の限界も感じる姿がリアル。
    死の入口を感じながら、変化した自分の体や意識や周囲の状況を嘆くわけでもなく、ただ受け止め淡々と現状を処理していく。かっこいい。

    あとがきによると、著者はあえて読みにくく書いているそうだけど、そんなことはなく、抑えた文章の連なりは読んでて心地良い。
    ストーリーも淡々と進むのだけど、その中で主人公の経歴、周囲の思惑が徐々に明らかになってどんどん面白くなり、一気に読んでしまった。

    私も年齢を重ねて、体力・知力の低下をよく感じるし、他人からの扱いに蔑みを感じることが増えた。爪角を心に留めていきたい。

  • 稼業ひとすじ45年。かつて名を馳せた腕利きの女殺し屋・爪角(チョガク)も老いからは逃れられず、ある日致命的なミスを犯してしまう。守るべきものはつくらない、を信条にハードな現場を生き抜いてきた彼女が心身の揺らぎを受け入れるとき、人生最後の死闘がはじまる。とにかく爪角がカッコいい。でも(韓国の)人の名前がなかなか頭に入ってこなくて…苦戦しました。

  • <檄>

    韓国女性作家の小説を読むのは我が人生で多分はじめてだと思う。(読んでいない証明もいわゆる不可能証明なので断言不能…)。で,いつも通り巻末の訳者あとがきから読み始めた。長い,なんと長い訳者あとがき なんだろうと驚いた。この訳者小山内の書いている内容で気になったのは一点。それは「理解しづらい小説です」ってところ。翻訳を担当した人がそんな事云うか!と思いつつ冷静に再度その説明を読む。ふむふむ理解しづらくなかなか物語が進まないのはどうやら原作がそういう意図を持って書かれているからみたいだな。

    で,なるほどその通りだった。その「あとがき」や帯を先に読んだのでおおまかなストーリーは分かっているつもりだったが,のっけで そのメインストーリーはなかなか進まずその周辺(脇)の事柄が実に多く書かれているのだ。こののっけのメインストーリーとその周辺(脇)事は後々も多分何の関係も無いのだろう。では只ページ数を稼いでいるだけか,と云うとどうやらそうでも無い様子。何かがその「周辺事」にはある感じだ。うーむ韓国の女流作家って事だけで構えてしまうのにのっけから大変だりゃ!

    ちょっとここでその訳者あとがき から仕入れて来た情報を書き置く。本書がク・ビョンモ女史によって書かれて発行されたのは2013年。当初はあまり話題にもならなかったらしい。その後数年経ってSNSでひょんなことから話題になって2018年に『破果(改訂版)』発行。そしてようやく2023年に小宮山の手で訳された日本語翻訳版が刊行された。つまり まあおよそ10年以上前に書かれた本が日本では今流行っているという事なのだ。

    訳者あとがきを読むにあたって。 本編物語の最終ラスト場面は見開きの右ページで終わっていた。そしてそのすぐ左横のページから「訳者あとがき」が始まっていて僕はたじろいだ。先に「あとがき」を読もうとそのページに行ったら本編最後のシーンの記述が右横ページにチラチラと見えるではないか。これでは落ち着いて「あとあがき」(ん?「あ」が多いな。でもなんだか面白いからこのままにしとこうw)が読めないではないか。

    で,とっさに僕は何をしたか,というと。慌てて一旦本を閉じ,そして他の薄めの本を持ってきて件の見開きの右ページ上にかぶせて本編物語のラストが見えない様にした。えっ,一体何が言いたいのか,って。そりゃあ あれですよ,ミステリー仕立ての雰囲気もあるこの手の小説作品において先に「あとがき」を読もうとしたらラストの結末ページを一緒に覗かされてしまう,ってどーよって事。こんなのには初めて出会った。

    プロローグらしき話が本文のっけ10ページでようやく終わり 次のページから本文が始まる。と,これが実に変わっている。その始まる見開き左ページ(11ページ)はその半分くらいが白紙で本文はその後から始まっている。その半ページ程度の白紙部分には 表題や章のお題目が書いてあるわけでも無く,何も印刷されていない白紙がおよそ半ページ分そこにあるだけ。一体なんだこれは。韓国の小説本ってぇのは全部こういう具合の装丁になっているのか。分からない。狙いは一体が何処にあるのだろう。

    そこまでのプロローグを読んでいて感じたのは,ほとんど改行も無く思い切り字を沢山詰め込んだ本だなぁ。紙を出来るだけ節約して本が分厚くならない様にしてるんだろうなぁ。それにしても改行無しで長く続く文章は読みづらいなぁ,という具合だった。なのに前述の急に無駄な半ページの白紙。何なのだ一体。いつもの疑問,なんで僕はこの本読んでるんだろう,が頭をよぎる。まあたぶん 本の雑誌 で紹介されていたのだろう。その解釈が正しいかどうかは面倒なので調べない。調べたところでこの本の面白さが変わるわけも無く。

    そういえば本書の厚さはまあ普通なのだが値段はなんと2700円もする。欧米の翻訳本は往々にして高いが韓国の翻訳本も高かったか。まあ売れるか売れないか未知数なので出版社のリスクヘッジとしては仕方ないのだろう。あと本書の出版は『岩波書店』である。文庫で有名な出版社ではあるが本書の様な単行本には滅多にお目に掛からないなぁと僕は思った。値段。国産本だと,この厚みで売ろうかな!という意気込みが出版社側にあるなら まあ1800円 ってところだろう。

    この本も先日読んだ 『富士山』 平野啓一郎:著 と同じく一枚の紙が厚い。本全体の厚みの割には総ページ数が少ないのだ。ちなみに274ページしかない。良い点はページがとてもめくり易い(あれ?『富士山』感想にはめくりづらい,と書いてある。どっちだぁw)のと,思いの他どんどん読んだページが進んでゆくのだ。なんだかめちゃ自分の読書速度が速くなった様な錯覚を覚える。

    本書は韓国産なのにハングル文字は4文字しか出て来ない。表紙カバーに二文字 多分『破果』というハングル文字が載っているのと 物語中には,医者であるチェン博士とハン博士の診察室に掛かった表札(名札か?)のハングル2文字が出て来るのみ。この二人の名のハングル文字の形?がとても似ていて主人公 爪角(チョガク)は診察部屋を間違えてしまった,という件りなのである。

    でも考えてみればそりゃそうだわな。普通の日本人は数字と漢字,ひらがな,カタカナそして少しのアルファベット以外の文字はそこに書かれてもサッパリ分からないのだから。その日本人には理解不能の代表文字がハングルとアラビア文字なのだろう。ちなみに二人の医者名チェン:장, ハン:강, の筈。なるほど,似てる形wだねぇ。笑う。

    翻訳者小山内園子さんについて調べている最中に『破砕』という本書の 最近書かれた外伝が存在することを知った。面白そうだ。 読みたい 読むか。読もう。 そう云う事になった(夢枕獏R)

    本作 章立て構成にはなっていないのだが,それでもその章らしきものの変わり目はあって,その最初は必ず見開きの左側ページから始まる。そして先にも書いたがなぜかそのページののっけの半分は白紙なのだ。だから多い場合は見開きの1ページ半が白紙となる。

    主題『破果』の意味は件のあとがき で丁寧に解説されているので読まれたし。そして日本語で「はか」と云うとこっちの方が一発で漢字変換されてくる。それは『破瓜』。爪と云う文字が入っていて本作品にはこっちの題目の方が近しいだろうなぁと思えた。でもたぶんク・ビョンモは明確に『破果』と書いたのだとうから詮無きことなのだろう。本書,物語がなかなか進まなくて途中読み続けるのが辛くて挫けそうになるが、ラス前の格闘シーンは凄い迫力だ。読み応え有りの一冊。是非女性に読んで頂きたいのです!

    エピローグの様な最終章に海兵隊上がりの人物が登場する。メインストーリーとは何の関係もない人物なのだが,僕はこの「海兵隊」に反応した。韓国にも米軍と同じ海兵隊があるんだな,と思った。僕の解釈では海兵隊とは自前の船で移動する特別な陸軍,って感じ。第二次世界大戦/太平洋戦争では米軍海兵隊は大活躍した。なぜならアメリカ陸軍は,もしかするとヨーロッパ戦線へは派遣されてナチ軍と戦ったのかもしれないが,太平洋戦争でアジア圏への陸軍の派兵は皆無だったと思う。陸上の作戦行動は全部「海兵隊」が実践したのだと思う。

    日本の大東亜戦争は陸軍が中国大陸や南方諸国/島へ進撃して陸上戦を戦った。当然だが「海兵隊」という組織は日本には無い。飛行機は陸軍も海軍も航空隊として存在していた。 また二次大戦当時アメリカは空軍が無くて海軍と陸軍とそして加えて「海兵隊」だったのだと思う。素朴な疑問は米軍のほとんどの飛行機は海軍所属だったと思しいが陸軍は全く飛行機を持っていなかったのだろうか。アメリカ本土での戦闘は歴上無いのでそこが分からないのだ。アメリカに空軍が正式に出来たのは僕は別の本で読んだけど1947年だ。

    ヨーロッパの英国とドイツは二次大戦当時 既に空軍を持っていた。まあそうだわな自国内の航空基地からスピットファイヤーやメッサーシュミット/フォッケウルフを相手国まで飛ばして戦闘して戻って来る軍は「空軍」以外に考えられないわな。まあ代わり という訳でもないが「海兵隊」は英独には無かったと思しい。つまりここまで書いてきて海兵隊があるのは米国と韓国軍だけなのだ。本当は他の国にもあるのだろうけど…笑う。もう一度書く「海兵隊」とは自前の船で移動し陸戦を主体に戦う軍隊!

    ありゃ,最後は何故か戦争のウンチク話で僕は終わろうってのね。なんか変な感じ。番外新作『破砕』に期待してではサヨナラサヨナラサヨナラ(淀川長治R)。 すまぬすまぬ。

  • いい、すごくいい。あえてサクサク読ませてくれないところが。
    硬質で乾いた文体ゆえ、主人公チョガクの心情が語られる部分はひときわ鮮やかで生々しく感じられた。

    チョガクにひっそりと寄り添う老犬に、胸がきゅうっとなりました。犬好きには刺さります。

    黒い表紙の内側が鮮やかなサーモンピンクの装丁で、作品の内容が反映されていてとてもいい。

  • 65歳の爪角(チョガク)は、一見普通の老婆だが実はいまだ現役のプロの殺し屋。しかし加齢とともに肉体や判断力の衰えを感じている。ある任務遂行時にターゲットの反撃にあい負傷した爪角は、エージェントと契約している医師のもとへむかうが、そこにいたのは事情を知らない別の若い医者カンだった。だが彼は爪角に何も聞かず傷の手当てをしてくれ、その後も誰かにそれを漏らした様子はない。一方で、同じエージェントに所属する30代の殺し屋の男トゥは、やたらと爪角に絡み、任務の妨害までしてくるように。実はトゥは爪角と関わったある過去があり…。

    65歳女性の殺し屋という設定に惹かれて読み始めた韓国女性作家によるノワール小説。クールで非情な殺し屋として孤独に生きてきた爪角のキャラクターがシンプルにカッコいい。

    貧乏子沢山の家から口減らしのために親戚に下働きに出され、そこではからずも起こってしまったトラブルにより追い出された少女時代の爪角を拾い、殺し屋の技術を仕込んだのは裏社会で生きるリュウという男。リュウは既婚者だったため、爪角はリュウへの淡い想いを押し殺して仕事のパートナーに徹していたが、仕事柄恨みを買うことも多いリュウの妻子は、何者かに殺害されてしまう。以来、リュウと爪角は、失うのが怖いほど大切なものは作らないと誓い合い仕事に打ち込んできた。だがそのリュウも、何者かの報復にあって、爪角を庇い命を落とす。以来、爪角は、自分のお腹の子の父親でさえ殺せと言われれば殺すようなハードな人生を送ってきた。

    しかしそんな爪角が肉体の老いとともに心も揺れはじめ、なんと30歳近く年下のカン医師に惹かれてしまう。カン医師は妻を亡くしてから幼稚園に通う娘を祖父母に預けて一緒に育てている。実家は昔ながらの商店街の果物屋。爪角は最初は万一の時に備えてカン医師の弱みを握ろうと家族に探りを入れに行くが、この家族に平凡な幸福の夢を重ね合わせるように。あれほど失いたくないほど大切なものを作らず生きてきた爪角が、65歳にして弱点を持ってしまった。

    そしてこれに目をつけたのが、なにかと爪角に絡んでくる同業者の男トゥ。実はトゥは、子供の頃に父親を自宅で殺し屋に殺害されており、逃走する殺し屋を目撃していた。それが爪角だったのだ。しかし爪角のほうでは、大勢の被害者の一人のことなど覚えていない。このトゥという男、最初はいちいち絡んで来たり仕事の邪魔をしたりしてただの面倒くさくて嫌な奴なのだけど、爪角がカンに惹かれていることを察してからは、さらにエスカレート、最終的にはカンの幼い娘を誘拐して爪角に挑戦状を送り付けてくる。

    最大の山場はもちろんこの爪角とトゥの殺し屋対決。爪角はカン医師の家族を守るために命がけで戦う。殺すためではなく守るための戦い。トゥは、最初は単純に復讐のために爪角に近づいたのかと思いきや、その心理はもっと複雑。彼は親の仇にも関わらず爪角に一種の憧れを抱いているように思われ(もはや初恋と言っても過言ではないかも)、同じ職業についてしまったのも潜在的な爪角への恋慕ゆえかと思った。だから爪角がクールで非情な殺し屋でいるうちは、彼はちょっかいをかけるだけで復讐までは考えていない。しかしそんな憧れの爪角が息子のような年齢のカン医師に恋し、ただの平凡な女に成り下がった(と彼が感じた)ことで、裏切られたように感じたのだろう。そう思うとちょっと切なかった。

    ラストは意外にもハッピーエンドというと語弊があるかもしれないが、爪角自身が幸福そうでホッとした。なのでノワール小説のわりに後味は悪くない。フェミニズム的に読むならば、社会的弱者とされる女性+老人=老婆という本来最弱の存在であるはずの爪角が実は最強の殺し屋、という痛快さがありました。

  • ずっと殺し屋をやっている65歳の女性、爪角(チョガク)が自らの身体の衰えなどが原因で少しずつ生き方・考え方が変容していく時に、同じ殺し屋「防疫」グループの一人、トゥから絡まれるようになる。実はその30前半のトゥとは因縁あり、トゥは爪角が自分を思い出せないことに苛立っている。
    爪角の生き方が格好いいのと、殺人などのアクションシーンが読みごたえありです。そういうのが好みの人は当たりの本だと思います。不幸な生い立ちの爪角の人生でリョウに拾われて、成長しながらリョウを慕う気持ちと相反する仕事の内容。立て続けに起こる不幸。更に老いてから失敗した仕事で負った怪我を治療してくれたカン博士(医者)への思慕。その辺が話を展開させながら織り混ぜられて語られます。
    殺人を普通にやってるお話なので、高校からかなぁ。性的な描写少しです(リョウに拾われる事件あたり)。

  • 老いた女性の殺し屋が主人公。殺し屋稼業なのでひっそりと目立たない生活をしているが、加齢の為にその生活や生き方に変化が起きている。
    ヒタヒタと押し寄せる老いの恐怖が、まさに敵対者を暗示するかの様。翻訳が素晴らしくて高齢者への固定観念を払拭し淡々と描いているのが好感が持てた。最後らへん「もう錠剤、のみこめるのかい」が切なかったし、最後のネイルのシーンまで無駄なく味わい深かった。

  • タイトルの「破果」は韓国語では「傷んでしまった果実」と「女性の年齢の十六才」を意味すると言う。
    65才の女殺し屋爪角の壮絶な人生を、現代の体力的に衰えだした中での死闘の中に、そこへ行きついた彼女の生涯を散りばめながら進む。
    同じ年の自分には、彼女や周りが「おばあちゃん」として卑下するのが気になるが、壮絶な人生の中の恋心や「血迷って」世話をし出した一匹の犬との関係を通して温かさを感じる。
    比喩や飾り言葉の多い文章だが、慣れると心地良い。一気に読んだが、もう一度ゆっくり味わいたくなる作品です。

  • ノワールというジャンルにおいて、女は男主人公の添え物で性的対象かつ若いと設定されがちなところ、本作は老女が主人公とは。そうそう、こういうのあってイイよね!と概要だけで好感を持つ。

    女は情に弱いだろ、殺し屋なら冷徹だろ、老女が年下男に恋慕を抱くはずないだろ…等の「あり」「なし」や「ゼロ」「100」で人は判断されがちだが、実際のところ出会いや状況あるいは年齢によって偏りや度合いが変わるものだ。それを老女の過酷な人生と目眩のようにぐらつく心理状態とリンクした文学的な描写ーー輪郭的な分かりやすい文章ではなく、訳者あとがきに「まるで壁を伝う蔦のように」とあるように、分かりやすさを求める人にとって疎ましく煩わしく思う蔦のような文体こそが、人生のままならなさそのものとして、心に沁みる。

    韓国文学は、登場人物の人生の重さをきちんと重く描いていると感じることが多く、それを伏線回収だとか恋愛や母性で解決だとか安易に終わらせないところが、本当に信頼できる。

    本書に倣った設定の小説が日本や欧米から今後出てきそうだけど、カジュアルに軽く扱ったり、あるいは無闇に過激にしそうだなぁ…。

  • キャリア45年の殺し屋(65歳女性)
    純文学といえる文章の美しさがある、一筋縄では行かないエンタメ作品
    女で高齢者だとナメられることが多い世界だが、それさえも抱えてなおかつ若い男性への愛も描いている
    みごとな小説だった


    ク・ビョンモ作品がもっと邦訳されたらいいのにと思う

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著者プロフィール

慶煕大学国語国文学科卒業。2008年、長編小説『ウィザード・ベーカリー』でチャンビ青少年文学賞を受賞し、作家活動を始める。ほかに長編小説『一さじの時間』『えら』『破果』『バード・ストライク』、短編集に『それが私だけではないことを』(今日の作家賞、ファン・スンウォン新進文学賞受賞)、『赤い靴党』『ただ一つの文章』など。邦訳に「ハルピュイアと祭りの夜」(『ヒョンナムオッパヘ』白水社)がある。
リアリズム小説、SF、ファンタジーなど、ジャンルを超越した多彩な作品を発表し続けている。

「2019年 『四隣人の食卓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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