ガブリエル・ガルシア=マルケス ある人生

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  • 岩波書店 (2023年3月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (766ページ) / ISBN・EAN: 9784000615884

作品紹介・あらすじ

長編『百年の孤独』などの作品でラテンアメリカ文学の名を一層高らしめた巨人、ガルシア=マルケス。若き日の貧苦、ジャーナリストとしての日々、政治的セレブリティたちとの交流、恋愛、名声とその対価、ノーベル賞受賞の裏話など、読むほどに圧倒されるマルケスの生涯に迫る決定版伝記、いよいよ登場。

感想・レビュー・書評

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  • コロンビアのノーベル文学賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケス(以下ガボさん)の伝記。図書館で借りてみたら700ページ以上のどっかりした本が来ちゃった(>▽<;)返却期限2週間で読み切るために飛ばし読み気味です(^_^;)

    著者はガボさんから「公式」のお墨付きをもらっている。まあ言い方がガボさんのユーモアっぽい感じですが。
    公認だけあって、ガボさんの関係者たちにも出会って話を聞いているし、写真も多数収録されています。

    私はガボさん自身が語る過去や経験についてはいくつか読んできました。
    自伝『生きて、語り伝える』
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4105090186#comment
    インタビュー『グアバの香り』
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4000226371#comment
    これらでガボさんのことはある程度読んできたと思っていたのですが、これらはガボさんの言うところの(P255から抜粋)三種類の人生である「公的な人生、私的な人生、秘密の人生」であるうちの「公的な人生、私的な人生」だったのですね。
    そして伝記作家は「秘密の人生」も語ります。
    そしてガボさんが自伝などで言ってきたことをまた別の側面から語ることもします。
    例えばガボさんは「『百年の孤独』を書くために18ヶ月部屋に閉じこもったよ」と言っていて、それはガボさんを語る伝説の一つになっています。
    そこを伝記作家は冷静に「本当は1年ちょっとで、中断したり、別の仕事をしたりしてたけどねー」ということを書くわけです 笑
    「自分の語り」と「客観的な語り」って違うんだなあ(^o^;
    しかし個人的や歴史上の本当にあったことをあのように神話的に、幻想的に、真実よりも真実らしく書き語るガボさんの才能にはさらに感服させられたわけで。
    ガボさんは「作家の秘密の人生はその本の中に入る。そしてその本を読んで書いた伝記の中に入る」と言っています。

    ❐ガボさん
    ●呼び名。ガビート、GGMとか。
    ●『百年の孤独』くらいの時期の小説だと、ガボさんはユーモアというかどんなに大変な現実も余裕を持って語れる人だと思っていたんですよ。しかし初期の短編集はかなり切実な「死」が現れていて。ガボさん本人は若い頃は神経質とか鬱病気味とかで苦しんだみたいなので、それが直接出ていたんですね。
    ●ガボさんは若い頃から世界中を旅行や仕事や移住などで回っている。政治的見解はそれで作られた。ガボさんの小説には世界を見聞きしたことが現れているんだろう。


    ❐親族
    ガボさんは7歳まで祖父母の元でアラカタカという町で育った。

    ●父
    ガブリエル・エリヒオ=ガルシア
    ボリーバル出身(社交的で騒々しい気質)
    ガボさんと父親とはあまりうまくいっていなかったっぽい…。

    ●母方
    ・祖父:二コラス・マルケス=メヒーア大佐(以下ニコラス大佐)
    祖父と祖母は従兄妹結婚。ニコラス大佐は自由党の兵士として戦い、戦地に私生児をたくさん作り、故郷に戻り、人を殺して、故郷を出てアラカタカに住んで顔役となった。バナナ農園のデモの時は会社と労働者(デモ隊)の調整役を務めた。自由党兵士時代の恩給を待っていたが出ることはなかった。
    おお、「一人で百年の孤独」が出来上がった。しかし『百年の孤独』ではかなり美化されている感じもあることを伝記作家は語る…。
    ガボさんはニコラス大佐を現実主義で勇気があり自信に溢れた人間といって、おじいちゃんと孫の関係を「共犯者」と語る。お祖父ちゃんはガボさんのヒーローだったのかな。そして祖父の性格が一番出ているのは『落葉』の大佐だそうだ。
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4105090097#comment
    ・祖母:トランキリーナ・イグアラン=コテス=デ=マルケス
    予言めいた言葉を話し、家にいる幽霊と会話をする。
    『百年の孤独』に書かれていることは祖母の言葉から出ているという。
    ・母:ルイサ・サンティアーガ・マルケス=イグアラン=デ=ガルシア
    ガブリエル・エリヒオ=ガルシアとの結婚を反対されて…のあたりは小説『落葉』『コレラ時代の愛』に書かれている。
    『コレラ時代の愛』
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4105090143#comment
    ガボさんは、この両親の11人兄弟姉妹の一番上。(他に父には庶子が多くあり(^_^;)
    ・叔母たち
    土壁を食べる叔母、自分の死を予告して死装束を編む叔母、求婚を断り一人で過ごした叔母など、『百年の孤独』の女性たちのモデルですね。

    ❐小説
    ●『百年の孤独』冒頭で捧げられている「マリーア・ルイサ・エリーオ」は、ガボさんが「新しい小説」といって構想を語ったときに熱心に聞いてくれた知人。その様子にガボさんは「今度の小説はあなたに捧げます」と約束したんだそうだ。それで冒頭に名前出してもらったのか!

    ●アウレリャーノ大佐のモデル?
    ・自由党の将軍、ラファエル・ウリベ=ウリベ:「カリスマ性はあるが軍人としては無能な指揮官で、奇抜な言動で部下を振り回した。だがそんな内乱は3年続いた」としている。敵の襲撃に合っても上着に穴は空いたが本人無傷などのエピソードもあったとか。アウレリャーノ大佐が32回の襲撃すべて敗北し、しかし無傷で伝説的人物になったのはこのあたりから取ったのかな。
    ・ニコラス大佐:戦地戦地で子供を作った。引退後は銀細工を作った。『百年の孤独』での自由党と保守党の和解工作があるが、実際にサインしたのがウリベ=ウリベ将軍で、ニコラス大佐もその場にいた。
    ・ガボさん:「自分の創造した人物は一人残らず何らかの形で自伝的なところがある」というので。
    「3月に生まれ、子供の頃の特徴、幼い少女に恋して結婚を決めたこと、罪深い自尊心や孤独さや冷酷さ」などがモデル?
    アウレリャーノ大佐が経験した「父と氷を見に行った」ことは、ガボ少年がニコラスお祖父さんと氷を見に行ったことが元になっている。小説では父と息子の体験に置き換えているんですねえ。

    ●バナナ農園デモの虐殺
    アラカタカの指導者の一人だったニコラス大佐は企業と労働者の調停役の一人だった。
    1928年12月5日の明け方、集まった労働者は3000人と言われる。(でもガボさんは「実際に現場見たけど300人くらいでは…」と言っている(^o^;)軍の解散要求を労働者は「動かないぞ!」と拒絶。軍隊の期間十とライフルが響き渡る。
    「銃撃はほんの数秒」という証言と「銃声はたっぷり5分は続いた。そのあとは虫の羽音が聞こえるほど静まり返った」という証言がある。
    軍隊の公式発表は「死者9名、負傷者3名」だそうだが、犠牲者は証言者によりまちまち。その後捕まった労働者が処刑され、一夜にしてアラカタカにいた労働者の120名が行方不明になったという。
    ストライキとその余波はその後のコロンビア政局にも影響した。
    P49のこの場面すごい迫力。こちらの伝記作家の小説家としても能力を感じた。

    ●ガボさんと母ルイサさんは、「長い年月が経ち」アラカタカを訪れた。アラカタカ寂れていた。ルイサさんと昔の知り合いが抱き合ってなく姿はガボさんの心を捕らえた。「この瞬間、ガボさんが作家になることが決まった」「記憶のアラカタカを言葉の上で再現させる」と、ガボさん論文では書かれる。
    それらの経験を「長い年月が経って」ガボさんは小説に著した。
    自分の少年時代そのものではなく、少年時代の記憶について書く。現実ではなく、現実を史実的に書く。アラカタカとそこに住む人達そのものを書くのでなく、彼らの世界観を通して語る。小説の中に、我が身に起こったことすべて、世界に関して知ったことすべて、この時代のラテンアメリカ人として経験したすべてを小説に取り込む。

    ❐作家関係
    ●ガボさんの文学仲間にして親友三人、アルバロ、アルフォンソ、ヘルマンは、ガボさん小説で「(ガブリエルを足して)4人組のお友達」として繰り返し出てくる。

    ●ラテンアメリカの<ブーム>と言われた作家に、フエンテス、コルタサル、バルガス=リョサがいた。ガボさんは『百年の孤独』で少し遅れた4人目だったが一気にトップとなった。マヌエル・プイグを入れて5人というカウントもあります。

    ●グアテマラのノーベル賞作家ミゲル・アストゥリアスとは嫌悪しあった。アストゥリアスはバルガス=リョサ(以下マリオさん)の『神殺しの物語』も批判している。
    『神殺し』
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4801006752#comment

    ●4人が全員集まった唯一の時間はコルタサルの別荘だった。しかしこのとき彼らは政治的見解の違いで親密さに陰りが見えていた。コルタサルは「実に素敵で奇妙なパーティーだった。よく理解できない、思い出すことのできない、深い意味を持つなにかがあった」と語っている。
    思い出したのがコルタサルの短編『夕食会』。気の置けない友人たちの夕食会だがなにかがあった。小説では時間がずれている幻想譚になっているが、実際に「あのとき決定的な”なにか”があった」ことってあるよね、って話だったのかな。
    https://booklog.jp/item/1/4003279026

    ❐マリオさんとのこと。
    ●ガボさんは、マリオさんとパトリシア夫人との間の第二子ゴンサーロ・ガブリエルの名親を務めた。

    ●ガボさんとマリオさん親交を持つ⇒政治的考えの違いから徐々に冷えてゆく⇒マリオさん『神殺しの物語』の第二版の発売を禁止する。⇒パンチ事件。それ以来二人は会っていない。(ずっとあとに寄稿文を送ったり、亡くなった時はコメント出してる)

    ●パンチ事件。
    マリオさんが脚本を書いた『アンデスの聖餐』の封切館にガボさんが現れ、マリオさんがガボさんをぶん殴った。当時のマリオさんの妻のパトリシアさんが関係しているとか…
    なお、マリオさんの最初の妻は年上の親族のフリアさん(マリオさんの言い分『フリアとシナリオライター』。フリアさんからの反論『バルダキスが言わなかったこと』)で、二度目の妻は姪のパトリシアさん。二人は結局離婚している。

    ●パンチ事件のことは、ガボさんもマリオさんも無言を貫いている。しかしマリオさんは2008年の戯曲『テムズ川のほとりにて』の主人公が「35年前にいちばんの親友にパンチを食らわせ、以後二度とその友人に会うことはなかった」と回想する場面があったんだそうな。まあ色々あったんですよねえ。

    ●『神殺しの物語』はスペインと日本で再販されてます!ガボさんの『百年の孤独』までの小説の詳細な研究解説されてますよ!ラテンアメリカファンのみなさま、ぜひ読みましょう!!

    ❐政治
    こちらの本は政治に関しても詳細に書いてあるんだが、複雑かつ詳細で…
    ●<権力欲というのは人を愛することができない結果から生まれてくるんだ。P463>

    ●「ラテンアメリカ左翼のスター」扱いですね。

    ●キューバ政権の「知識人に対するスターリン主義的な迫害」に対するラテンアメリカの教養人たちが連盟で非難声明を出すことになった。
    もしかしてレイナルド・アレナス『夜になる前に』の冒頭に載っている「カストロへの公開状」のことだろうか?
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4336039518
    ガボさんは署名、友人が(好意のつもりで)代わりにサインしてしまった。ガボさんは署名を取り消した。そのためラテンアメリカ著名人たちもキューバも敵に回してしまった形になる。
    私はてっきりフィデル・カストロとの親交のためかと思っていたのだが、カストロと親しくなったのはこの署名騒動の後だった。

    ●ガボさんはキューバ革命を全面的に指示しているわけではないが「キューバにスターリン主義的なことがあればカストロが指摘する」としてキューバ体制の指示を表明する立場。

    ●フィデル・カストロとは個人的にも親交を結び、カストロの勤勉さを褒め称えている。

    ●スペインのフランコには反対を表明。

    ●ソビエト連邦を無条件で支持はしないが、アメリカの帝国主義に抵抗するためには欠かせない国と認識した。

    ●ガボさんと「世界を動かす人々」との関わりを読むと、ガボさんは間違いなく現在の人類の方向を変えているよなあ。
    カストロには収容所に入れられた作家を釈放するように働きかけ、南米で欧米人が人質になると調停役を行い、ローマ教皇に謁見して南米の窮状を訴え…。
    世界の首相や政経会のトップがガボさんのファンを公言している。

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