- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000616188
作品紹介・あらすじ
一九七二年、茨城県東海村から忽然と消えた男。捜査に訪れた刑事は「北に持っていかれたな」と言った。男は日本の原子力開発の拠点、動燃のプルトニウム製造係長だった。四〇年後、突如警察の北朝鮮拉致関係リストにその名が載る。謎に包まれた失踪の経緯、不可解な捜査過程、核科学者はどこに消えたのか?
感想・レビュー・書評
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おそろしいよりも何よりも
自分の国の政府が信じられない、
国民を護る気などさらさらないとしか思えない
そしてどうしても核を持ち戦争に勝ちたいと考えてるんだなと
読んでいて暗澹とした -
1972年に失踪した動燃の核技術者は、実は北朝鮮に拉致された可能性があると指摘する本。真摯に対応しなかった動燃や警察への批判もある。
ただ、取材過程の記述が多い一方で新事実が明らかになるわけでもない(実際困難とは思うが)。また日本政府の「核(武装)オプション」保持、朝鮮戦争以来の北朝鮮の核への執着、動燃の「もんじゅ」事故隠蔽疑惑といった本題とは外れた内容も多く記述しており、自分の予想とは違った。 -
極めてシリアスで政治的にも「出して大丈夫?」というラインに迫ろうとしているのは良い。だが拉致の実態よりも後手後手の捜査を行う警察批判や、政府への非難で紙面を埋めてしまうのはいかがなものか。
言いたい事はわかる。本書に書かれた事は夢物語ではなく実際にあるのかもしれない。だがどこか陰謀論のように見えてしまい入り込めなかった。 -
昭和47年動燃のプルトニウム係長が茨城県東海村から失踪する。政府の認定を受けていない拉致の可能性のある多くの人。進まぬ警察捜査への疑問。日本原発政策や動燃の組織的な隠蔽体質にも触れつつ、封印された拉致疑惑を追求するノンフィクション。
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北朝鮮に拉致された可能性のある人物の中に、日本の核技術に関わっていた人物が複数いることに目をつけ、彼らの情報を追うノンフィクション。
日本がいかに核技術を手に入れようとしたのか、という部分が内容として必要だったのかもしれないが、拉致問題との関わりがわかりづらく途中だれた感じがある。しかも、拉致された可能性のある核の関係者らに対する捜査がずさんだ、という問題提起はあれど、特に新しい事実などが明かされるわけでもないため、なんとなくスッキリしない。
しかし北朝鮮の核開発に必要な技術を、日本人の技術者を拉致することで進めたというのはあり得ないことではないように思う。現在はその類のことをハッキングによって行っているが、当時はそれが拉致だったということだろう。
北朝鮮による拉致が公になっておらず、さほど認識もされていなかった時期だとはいえ、本書は行方不明になった人物に対する捜査がずさんだったこと、そのずさんさを隠すために警察が努めて拉致の可能性を否定している可能性があることを指摘している。こうした本をきっかけに、新たな事実の公表に繋がればいいのだが・・・ -
横田めぐみさんを始め、北朝鮮拉致被害者の問題についてはたくさんの本を読んできた。
発表されている情報ではわからないことが多く、何十年もの間一向に進展しない。この問題について、いろいろな情報の中でどうしてこんな事件が起きるのか?どうして解決への道が進まないのか様々な疑問を抱えたまま未解決のまま進むのかもしれないと思ったりしている。
本書は北朝鮮の核開発と同年のエリート核科学者の拉致問題と結びつけ、様々な取材の中で知らないことをたくさん教えてくれた。
以前から気になっている、なぜ中学生の横田恵さんが拉致されたのか?もちろん答えはわからないが、いろいろな可能性があると考えさせられた。 -
さっそくネタバレです。
何ひとつ解決しません。でもそれは、ジャーナリストとしての調査力不足ではなく、警察のやる気のなさが問題である事が理由となります。警察がまともに捜査をして、都合の悪い真実を掴んだために、何かが隠蔽されているのだとしたら、ジャーナリストはそれを暴くことが仕事になります。
しかし、警察の怠慢に気付いても、捜査がなされていないだけで、事件はまったく進展しません。日本政府のやるやる詐欺に現場はまったく呼応しません。拉致事件に手をつけなかった警察の失態を、日本政府が声だけ出して庇っている実態が分かります。
拉致事件を終わったことにしたいのは、北朝鮮も日本も同じなんだと思い知らされます。