ティマイオス クリティアス (プラトン全集)

  • 岩波書店 (2005年12月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (330ページ) / ISBN・EAN: 9784000904223

みんなの感想まとめ

宇宙論や哲学的思索が織り交ぜられた本書は、プラトンの対話篇として、神話と科学が融合した独特の世界観を提供します。ティマイオスという架空の人物が主に語り、彼の議論を通じて、当時の最先端の科学的理解が描か...

感想・レビュー・書評

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  • 読みたかった、プラトンによる宇宙論。
    ティマイオスというのは政治家らしい。といっても、プラトンが創造した架空の人物だという説もある。
    当時のギリシアの哲人たちの思想が結集されたような人物。

    「ティマイオス」は対話篇だと思ったら、ソクラテスはほとんど発言せず、ティマイオスだけが喋りまくって終わる。

    とにかく、現在と知の基盤が違いすぎて、ついていくのが大変だったが、神話と科学が渾然一体となったような、不思議なテイストの本だった。

    もちろん今の科学を基準に考えれば荒唐無稽だが、しかし議論は緻密で、これが当時の最先端科学だったということは十分に伝わってくる。

    例えば、土、火、水、空気、であらゆるものを説明しようところなど、定義を頭に入れてしまえば、ちゃんと理屈になっている。
    またそれぞれの元素を、それぞれ三角形や四角形といった図形に対応させているところも面白かった。あの有名なプラトン立体(正多面体)も登場。
    現在の科学も、未来人から見たらおそらくこの『ティマイオス』の内容のように見えるのだろう。

    もうひとつ面白かったのが、神がまず人間を作ったという主張。そして不完全な人間が、植物や動物や水棲類になった、とのこと。ああ、進化というものを知らなきゃたしかにそう思うよな、と納得。
    なるほど。だからこそ神という存在が創造されたのだ。

    (とはいえ、本書を読むに、どうやら神と神霊(ダイモーン)は別物らしい。はじめて知った。)

    本書に収められた「クリティアス」は「ティマイオス」の続編にあたり、大西洋に沈没したというあの伝説の大陸アトランティスについての考察と描写だ。

    前提がなにもかも違っていて、読むのに苦労するが、本書の訳者が注釈でとても良い仕事をしている。

  •  この巻を読もうと思ったのは、ティマイオスが「西洋中世で最もよく読まれ注解された」ものだと知ったからです。それは、世界の成り立ちを説明する文献として、という意味合いでしょう。読んでみると、なかなかのおとぎ話っぷりで、哲学議論どころか、自然科学という観点からしてもなかなかまともに受け止めることが難しかったです。
     プラトンを読んでいつも感心するのは、研究の重厚さです。この翻訳でも、先行研究をしっかり踏まえたうえで翻訳の検討をしており、こういうところは、ハイデガーの翻訳ではまったく見受けられないところだと感じました。ハイデガーの先行研究についての議論は読むのは苦痛であることが多いんですが、プラトンの先行研究にはいつも感心させられます。たとえば『プラトンの哲学』では、ティマイオスのコーラーの議論について言及されていましたが、ティマイオス本編を読んでも素通りしてしまうようなところでも、そういう解説を読むとちがった見方ができて楽しいです。そういえば、現代思想の冒険者たちのデリダの巻でも、デリダのプラトン解釈でティマイオスが言及されていました。自分一人ではそんなに深く読み込めないところを解説してくれるという点で、プラトン解釈は興味深いものが多いです。プラトン研究にどっぷりのめりこもうというまでのモチベーションはないんですが、もう少しは掘り進めてみたいと思っているところです。次、プラトンで読みたいのは、新訳文庫で評判のいい饗宴ですかねえ。
     もうひとつ興味深かったのは、ティマイオス、クリティアス、そして本当はヘルモクラテスで3部作を成す予定だったのが、クリティアスの序盤で途絶してしまったという事実。プラトンの時代からそういうことってあったんですね。そして、それがしっかりと現在まで伝わっているというところがすごい。【2019年3月13日読了】

  • ティマイオス。
    世界や宇宙の目的が、そもそも《善》だったら……
    という仮想のもとに、プラトンが描き上げた宇宙論。
    現代のプラトン批判(同一性批判・近代社会批判)の風潮からすると、
    目的論的だとして忌み嫌われるかもしれない。

    神>宇宙>世界>民族>国家>私

    神~私までがすべて関連しあっていてパラレルに設定されている、
    こうした世界観は、現代人からするとちょっとわかりにくいかもしれない。

    ただ、「善い」を目指すことは無価値ではなく、意味のあることだ、
    ということを何とか言おうとした、意図をこそ汲み取る必要があるかなと。

  • アリストテレスの『天について』を読んでいて、プラトンの『ティマイオス』の言及が多いので、通読してみた。ソクラテスが『国家』の一部を話したお礼に、クリティアス・ヘルモクラテス・ティマイオスから物語の返礼をされるという筋立てで、ティマイオスが宇宙の始まりから生物の誕生を語った内容が『ティマイオス』である。ティマイオスはイタリアに近いロクリスの人で天文学に通じていたそうである(プラトンの創作説もあり)。第一部は「創世神話」である。ティマイオスは宇宙が「永遠」をモデルにデミウルゴス(制作者)によって作られたこと、宇宙は唯一であること、火・空気・水・土の四元素が理想的な比で存在すること、宇宙が生き物(幸福な神)であり不老であること、制作者の意図によらないかぎり不滅であることなどを物語る。宇宙は比によって同・異・有が発生するように作られており、同の輪(赤道)、異の輪(黄道)によって、「宇宙の魂」は永遠に回転しながら推理計算をしており、ここに「理性」が発生する。「時間」は永遠の似姿であり、時間の表現者として「惑星」がつくられた。いわゆる天動説では、太陽も惑星であり、「地球」を中心に月・太陽・金星・水星の順の軌道で回っている(他の惑星は省略されている)。金星と水星(ヘルメスの星)は太陽とは逆向きに回るので太陽を追い越す。そして、宇宙に四つの種族が生まれる。天の種族・翼の種族・地の種族・水の種族である。天の種族は恒星である。ゼウスなどの神々はデミウルゴスの子孫であるが、宇宙を完璧にするためにつくられた「死すべき者」つまり人間を父から任される。神々はデミウルゴスの意志をついで人間をつくり、宇宙に似せた魂をさずけた。頭は宇宙に象り球形をしており、ここに魂が入る。手足は「乗り物」である。眼は天の秩序をみて善く生きるために神から贈られた。第二部は、宇宙を充たしている四元素の話で、元素はすべて三角形から組み立てられた立体であり、正四面体は火、正八面体が空気、正二十面体が水、立方体が土であるとされる(五角形の組み合わせである正十二面体は神が宇宙創造につかったfifth element)。火の元素はもっとも細かく、尖っているので物を燃やし、土の元素は最も安定した形である。プラトンによれば空虚はないが、元素の隙間に元素が入り込んで、運動をもたらす。金属は水で最も微細で岩に漉された水が黄金である。酒や油や蜜は火をふくんだ水である。五感や熱、重さの感覚も元素から説明されている。熱いのは火の元素が刺さるからである。眼から出る光(視線)が対象からやってくる粒子に反らされると色が生じる。第三部は、人間の身体のしくみが物語られる。神はまず「髄液」をつくった。これはパン・スペルミア(すべての種子の混合体)で、髄液自体も生物だ。髄液によって脳は充たされ、脳に理性がやどる。心臓は血液の源泉で全身に命令し、肺は心臓を冷やしクッションとなる。肝臓は鏡で理性からくる印象を映す。また、その苦みと甘みは身体をアメとムチで監督する。人間の身体は荃(うえ:漁具で魚が入ると出られなくなるカゴ)で、内部で火が消化を行い、呼吸によって「まわり押し」(循環)が起こる。血液は火を含むから赤く、火の元素の三角形が長期の戦いで崩れると消化ができなくなり老化し、髄を結びつけている三角形の絆が切れると魂は解放され死ぬ。胆汁や粘液は肉が腐ったもので病因である。神々が髄がもれる穴を下腹部にあけたので生殖ができる。骨が粗く髄が漏れると色欲におぼれる。最悪の病は「無知」という魂の病であり、狂気や神聖病(てんかん)などは胆汁や粘液が頭に入るからだ。健康については体操による運動が第一、投薬はやむを得ない場合のみが望ましい。神が作ったのは男性で、臆病者は女性に生まれ変わり、女性が生まれてから、男女に生殖器ができた。軽薄な者は鳥に生まれ変わり、天を仰ぎ見ないで欲望のまま生きた者は地に頭がちかい獣や虫になり、無知な者は魚に生まれ変わる。このようにして生物ができた。まあ、よくできたホラ話だ。文中でも「ありそうな言論」と繰り返しているが、中世・ルネッサンスを通じて熱烈に読まれた著作である。惑星の楕円軌道を法則化したケプラーも、一方で正多面体の入れ子構造で宇宙を考えていた。この例からもも、「ティマイオス」の影響がうかがえる。最初に「アトランティス」の話もでてくる。「クリティアス」ではアトランティスが9000年前に栄えた大陸で「ヘラクレスの柱」(ジブラルタル海峡)の向こうにあり、ポセイドンの子孫にあたる十王に治められていた王制の国家で、かつてヨーロッパと戦い、アテネは最後まで勇敢に戦ったそうだ。クリティアスはこの話を祖父から聞いたが、その祖父はソロンから聞き、ソロンはエジプトの神官から聞いたそうである。「クリティアス」は20ページほどで未完である。9000年前のアテネの原始共産制とアトランティスの強大な国力が語られているが、対アトランティス戦争の詳細はない。アトランティスは地震で沈んだことになっている。いろいろ面白い巻だが、これらは現在『プラトン全集』でしか読めない。「ティマイオス」は新訳して、文庫化してほしい。

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著者プロフィール

山口大学教授
1961年 大阪府生まれ
1991年 京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学
2010年 山口大学講師、助教授を経て現職

主な著訳書
『イリソスのほとり──藤澤令夫先生献呈論文集』(共著、世界思想社)
マーク・L・マックフェラン『ソクラテスの宗教』(共訳、法政大学出版局)
アルビノス他『プラトン哲学入門』(共訳、京都大学学術出版会)

「2018年 『パイドロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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