エウリーピデース IV (ギリシア悲劇全集)

  • 岩波書店 (2007年11月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (418ページ) / ISBN・EAN: 9784000916080

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  • 古代の概要や巻末の解説にも書いてあるが、この間に収録されている作品はいろいろ盛り込みすぎて非常に濃く、感情が過剰になり気味な感じがする。こんがらがってにっちもさっちもいかなくなったところを最後に神様が出てきて、登場人物たちをさらっとなだめて解決して終わり、という構成なので、消化不良の感もある。ヘレネーは実は悪女ではなく貞淑な妻で、トロイアへ連れ去られたのは幻でした、というびっくり設定の「ヘレネー」はそれでも面白かった。

  • ○ヘレネー:パリスとともにトロイへ行ったのはヘレネーの幻で、本人は戦争中ずっとエジプトにかくまわれていたとの説による。庇護してくれた王の死後、その息子テオクリュメノスに言い寄られていたヘレネーとエジプトに漂着したメネラーオスは再会して互いを認めあい、テオクリュメノスの妹である神官テオノエーの黙認のもと、エジプト脱出計画を練る。ヘレネーが主導権を取って、メネラーオスが死んだので葬儀をしたいとテオクリュメノスを欺いて葬式用の船を出させ、海上でギリシア勢はヘレネーの激励のもと、乗り組んでいたエジプト人を皆殺しにして帰国する。妹を殺そうとしたテオクリュメノスは突然現れたディオスコロイに説得されて思いとどまる。

    ○ポイニッサイ(フェニキアの女たち):イオカステーは真実を知っても自死しておらず、オイディプースは自ら盲目となった後、息子たちによって館の奥に幽閉されて怒りのあまり心を病み、息子たちに破滅的な呪いをかけたために、二人の息子はテーバイの支配者の地位をかけて戦争しようとしている。イオカステーは息子たちを和解させようとするが彼らは口汚く罵りあって決裂し、テーバイ王エテオクレースはクレオーンに後事を託して出陣する。クレオーンは町を救うためにテイレシアースを呼ぶがそのためには息子を生贄にする必要があると言われて豹変し、息子を逃そうとするが、息子の方はけなげにも生贄となって果てる。テーバイ勢が勝利するものの息子たちは相討ちとなって死んだため、イオカステーは自害し、その知らせに悲しむオイディプースをクレオーンは追放しようとする。クレオーンはアンティゴネーを息子の嫁としてとどめておきたかったが、不当な仕打ちに目覚めたアンティゴネーは父とともに町を出て行く。肉親の死後のアンティゴネーの変貌が異様な印象。ラストに姿を現すまで疫病神扱いのオイディプースはこの劇におけるデウス・エクス・マキーナの機能を担うか。

    ○オレステース:父を謀殺した母をアポローンのお告げに従って殺害したオレステースは、そのために正気を失って衰弱し、姉エーレクトラーとともにテーバイの民衆裁判で死刑の判決を受ける見込みである。二人はおじメネラーオスの帰還にのぞみをかけるが彼は頼りにならず、母の父にも断罪され、ついにその日のうちに自殺しなければならなくなる。進退きわまった彼らは、オレステースの母殺しに加担したため故郷を追放された親友ピュラデースの提案で、罪なる女の大元凶ヘレネーを殺害し、メネラーオスの娘を人質に取って彼と取引し、うまく行かなければ館に火を放って死ぬことを計画し、実行に移す。あわやという所でアポローンがあらわれて救済と和解を示して終わる。
     ラストでアポローンによって天上へ引き上げられるヘレネーは他人の不幸を黙殺し自分のことしか考えない嫌な女のきわみに描かれている。孤立した若者三人がヘレネー殺害に突っ走る短絡的思考がリアルで怖い。

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著者プロフィール

1937年(昭和12)、東京生まれ。旧姓 松川。光塩女子学院中等科、都立西高等学校、東京大学文学部言語学科卒業。同大学院西洋古典学専修課程修了(この間フランス政府給費留学生としてパリ大学に留学)。1966年より成蹊大学文学部において「フランス語」、「古典ギリシア語」、「ギリシア・ローマ文化」担当。2002年定年退職、成蹊大学名誉教授。特任教授次いで非常勤講師として2012年まで同大学に勤務。共著書に『ギリシア悲劇全集別巻』(岩波書店)、『レトリック連環』・『人文学の沃野』(風間書房)、共編著書に『古代ギリシアー遥かな呼び声にひかれて』(論創社)、共訳注書に『リューシアース弁論選』(大學書林)、『リュシアス弁論集』(「西洋古典叢書」京都大学学術出版会)、訳書に『線文字B』・『ギリシア語の銘文』・『ギリシア・ローマの神々』・『ギリシアの英雄たち』(「大英博物館双書」学藝書林)など。

「2022年 『船の旅 本の旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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