漱石全集〈第5巻〉坑夫 三四郎

  • 岩波書店 (1994年4月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (765ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000918053

漱石全集〈第5巻〉坑夫 三四郎の感想・レビュー・書評

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  • 「坑夫」
    漱石の小説は、ほとんど読んでいるがこれは未読であった。少し読んではやめ、を繰り返していた。村上春樹が何かで言及していて、ますます読まなきゃと思いつつ・・・
    今回、朝日新聞での連載が終わった「三四郎」をもう一度まとめて読もうと全集を取り出し、「坑夫」とペアになっていたので、こんどこそ読もうと思った。

    なかなか世界に入りきれなかったのが、今まで読めなかった理由だと思うが、ある程度頑張って読むと、すらすら読めるようになった。
    大体、石見銀山や生野銀山、炭鉱跡の見学が好きで、資料館などに寄ったりして、知識とまではいかないが、少し馴染んでいる分野ではあった。どこかの資料館にあったアリの巣にも似た坑道の様子、中で働く人たちの様子が書かれた1枚の絵がとても印象に残っている。実際の坑道やそこに置かれた坑夫たちの実物大模型よりも、1枚の絵の方がインパクトがあった。この小説を読みながら思い出した。坑道の見学は、ある程度の幅も高さもなければ出来ないので、本当に這いつくばって、暗い中を進むというのが、実感としてつかめないのだ。

    漱石自身に坑夫の体験があったわけではもちろんないが、リアリティが感じられ、そこが私には魅力だった。


    「三四郎」
    ”一体戦争は何の為にするものだか解らない。後で景気でも好くなればだが、大事な子は殺される、物価は高くなる。こんな馬鹿気たものはない。”  275ページ

    ”「然し是からは日本も段々発展するでせう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、「亡びるね」と云った。(略)
     「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より・・・」で一寸切つたが、三四郎の顔を見ると耳を傾けてゐる。
     「日本より頭の中の方が広いでせう」と云った。「囚われちや駄目だ。いくら日本の為を思つたつて贔負の引き倒しになる許りだ」


    「三四郎」を読むのは、4回目くらいだろうか。
    最初に読んだのは、ちょうど三四郎と同じくらいの年ではなかったか。
    でも、今回(朝日新聞の連載中も)が今までで一番おもしろく読めたように思う。現役の青春時代の方が、自分に近く、おもしろく読めそうなものだが、多分そうではなかったような。こんなによくできた青春小説を同世代でいたときは、あまりわかってなかったのではないか。美禰子の思わせぶりな行動など、若い女にありがちで、どちらかというと私も無意識にそのような感じであったことがあったような気がするが、その頃の私は美禰子をどういうふうに見ていたのだろう。

    もう二度と戻れない青春を描いたものだから、今の私には、遠さにおいては明治時代も昭和時代も同じようで生き生きと感じられるのであって、渦中にあるときは、古臭い明治の小説と思っていたのではないか。

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