漱石全集 第20巻

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (685ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000918206

感想・レビュー・書評

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  • 夏目漱石という人のネガティブな面とポジティブな面が交互にでてくる。普通の人でもそういう傾向はあるが、漱石の場合それが病的なので、とても同じ人とは思えない。

    父親のネガティブだった面は忘れてポジティブなところだけ覚えていたいところであろうに。ネガティブな面もあえて公開してくださったご家族には感謝の念しかありません。

    一方で、大岡昇平氏によれば、「夏目家の秘匿は完全で」モデル問題は現在ある文献では解決できないだろうと言っています。

  • 「伸六が八十五銭の喇叭を買えと云うのを排斥されたので怒って縁の下へ這入ってしまった。どうしても出て来ない。あい子が海苔巻を縁の下へ出すと、怒っている伸六も食いたいと見えて、パクリと食うのだそうである。そのかわり口は決して利かない。
     純一が怒った時は裸で縁の下へ寝ていてこれまたどうしても出て来ない。そうして人が近寄ると泥をつかんでは投げる。」(479ページ)

    大正4年の断片から。
    別の箇所読んでたらたまたま眼に入って、すごいおもしろくて思わずメモ。

    なんかいいなぁ。子どもたちを微笑ましく眺めている父親って感じ。
    「パクリと食うのだそうである。」とか、誰に言ってんの? ってにやにやしてしまう。
    「パクリと」って言い回し、地味に嬉しい。
    そもそも「排斥されたので」からしておもしろい。排斥したのおまえだろ、って思う。
    茶化してる。伸六、茶化された。
    あと「人が近寄ると泥をつかんでは投げる。」これ最高。書庫で噴き出してしまった。想像すると凄い。シュール。しかも裸でしょ? ぜったい可笑しいよ。

    笑いをこらえながら書き残している漱石先生を勝手に想像してにやにや。ちょっと息抜き。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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