芥川龍之介全集 第8巻

著者 :
制作 : 紅野 敏郎 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 34
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000919784

感想・レビュー・書評

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  • NHKのドラマ「Stranger――上海の芥川龍之介」を見た。
    猥雑とも思われる街、典雅な文人の寓居、いずれも映像としての美しさに魅せられた。

    で、学生時代に読んだっきりの「上海游記」や「江南游記」がどんなだったかと思って読み返してみた。
    正直、かつては、読みづらくて、ただ目を通しただけだった。

    芥川らしい才気に満ちた旅行記だ。
    章ごとに文体も変わり、短い言葉で鋭く対象を描き出す。
    中に彼の旅行中に書いたメモも引用される。
    単語で目の前に次々と変転する風景、状況を書き付けてある。
    おそらく実際のメモもそんな感じだろう。
    記録機材が今ほど発達していない当時の取材がどんなものだったかを思わせられた。

    芥川が古今東西の事跡に通じていたことはよく知られているけれど、これを読みこなすには相当の背景知識がないと難しい。
    私も、執筆当時に芥川の年齢より上となった今になってようやく意味が分かってきた部分もある。
    ついこの間蘇州へ行って、こういう風景のことか、とわかった部分もある。
    今と昔とで、一般人の「当然知っていること」が変わっているのは言うまでもないことだが、当時の新聞読者(これらの旅行記は東京日日/大阪毎日新聞に掲載されたものだ)はどうだったのだろう?

    それにしても、体調不良を押してした取材旅行なのに、驚くべき密度の濃い旅程。
    太湖、西湖、寒山寺などの名所、鄭孝胥ら名士との会見、女学校などの視察…。
    1920年代の、混乱期の中国への幻滅もしばしば漏らされる。
    経済発展をして、かつての街並みがなくなり、むしろ観光地として古い街並みを再建している今の江南の水郷を見たら、彼は何というだろう。
    彼が幻滅の向こうに幻視していた江南の風景とはどんなものだったのだろう?

  • 物書きなら必見だよ。

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著者プロフィール

1892年(明治25)3月1日東京生れ。日本の小説家。東京帝大大学中から創作を始める。作品の多くは短編小説である。『芋粥』『藪の中』『地獄変』など古典から題材を取ったものが多い。また、『蜘蛛の糸』『杜子春』など児童向け作品も書いている。1927年(昭和2)7月24日没。

「2021年 『芥川龍之介大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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