オリーブの森で語りあう: ファンタジー・文化・政治

  • 岩波書店
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000920551

感想・レビュー・書評

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  • 図書館書庫。現在の資本主義の在り方についてもんもんと考える機会が増えてきていた。Twitterでフォローしているエンデのbotで、気になる言葉が多く引用されるのが本書だったので、借りてみた。

    エンデと政治家、芸術家3人の対談。世の中について思うことを語り合っており、1980年代(かな?)の対談だけど、現在にも通ずることが多い。具体策や解決策が挙げられるわけではなかったけれど、彼らが憂いている内容がまさに今の社会にも当てはまると感じた。

    環境問題、エネルギー、格差、平和、教育、政治…、何を考えるにしても、最近、「資本主義」というものの矛盾を感じている。お金は便利だし、お金があるからこそ今の生活がある。しかし、お金を媒介にして社会が成り立ち、かつお金に重きを置いている社会だと、生活者全体がハッピーになるのは難しいんじゃないのか?と感じる。何が「正しい」とは言えないけれど、医療、農水産業、教育、防災、インフラ…、現場で体を動かして働く人の賃金が、低いと思われる今の日本。創造すること、仕組みを作ること、そして資本を回す役割、それらももちろん大切なのだけれど、あまりに現場で体を動かす人の賃金と差があるのではないか。賃金で格差があるのなら、税金を再分配して生活者がハッピーに暮らせるような仕組みが回っている必要があるし、それが政治だと私は思っているのだけれど、生活者を向いた政治がなされているのか疑問を抱く機会が年々増えている。

    お金を媒介にするのは便利だけれど、そしてそのお金が広く、生活している人たちや地球のハッピーのために世界を駆け巡っているのならそれは幸せな仕組みだと思うのだけれど、そうなっているか?

    「価値」をどこに置くか、そしてその価値について生活者自身が真剣に考え続けて政治を見て参加していけるかどうか、そこが揺らぐと社会の格差はどんどん開いていくと思う。今、格差は拡大している。SDGs、人権、倫理、さまざまな価値観がある。私たち一人ひとりが、生活で忙しい中でもそこから目を背けず考え続け、意思表示をし続けなければ、この「お金」を媒介する社会は生活者のためには機能しない。そう、ひしひしと感じている。

    今、私たちは便利な世界に生きている。この便利さは、お金無しで目の前の人と生活を共にしているだけでは得られない。やはり「お金」ないし何かしらのものを仲介させないと成り立たない世界。お金を通して会ったこともない人が作り出してくれる電気、水道、医療、教育、各種サービス、行政...それらを得られるからこそ便利な生活を送れている。しかし、そこに乗っかっているだけでは、やはり社会は生活者のためには成り立っていかない。格差、ゆがみが生じる。社会のありかた、どこに価値を見出すのかを考え続け、投票で意思表示をし続けなければ。次の世代へ社会を、地球を繋ぐためにも。

  • もともとは1982年出版なのかな。
    つまりその時代の情勢を語ってるはず。
    でも、今と大して変わらない、むしろ今の方がひどくなってるかもしれない。
    企業も、政治も。
    私たちの代表を選ぶ選挙。
    でも、その戦況があるせいで、私たちが選んだ人は最初から最後まで選挙のことしか考えず、私たちが望んでいることはしてくれない。
    ごまはすってくれるけど、根本的に未来のことを考えてはくれない。
    それは、未来のことを語る人を、私たちは選挙で選ばないから、今そこにある目先の利益しか、私たちも見ていないから。
    結果的にね。
    どうしようもない世界。今も昔も。
    エンデさんたちはそんなこと言いたかったんじゃないだろうけど、そんなことを感じてしまう。

  •  ユートピア思想は取り扱いを間違えると猛毒になる一種の劇薬だ。政治とユーピアが混合された場合には特にそうだ。マルクス・レーニン主義が最悪の社会システムを生み出してしまったことは歴史が証明した。ユートピア思想は簡単に極端なヒューマニズムへと変換されうる。ヒューマニズムが暴走すると未来への視座は断絶され、共時的論理に支えられた力が権勢を振るうことになるだろう。それはカタストロフという終焉の崖へ自ら突き進んでいくようなものだ。といって、ユートピアへの想像力を全く無くして現実だけを直視するべきだというわけではない。単純な形で政治と結びついたとき最悪の結果になるといっているだけだ。ポジティブなユートピアというものなしに一体、若者は無気力にならずに人生を歩んでいけるだろうか。現実という土壌に未来への理想という水がなければ草木が枯れてしまうのは道理である。いままさに多くの若者がこうしたアポリアを感じていることは間違いない。日本のみならず世界的に世代的な問題になっている。誰も彼も途方に暮れている。そういう転換期に差し掛かっていることは間違いない。個人的にはある領域において微かに光明が射しかかっていると思っているのだがまだ確信はない・・・・。

  • エンデと政治家のエプラー、演劇家のテヒルの鼎談。政治、文化、経済、教育、科学技術、さらには原子力や環境など、さまざまなテーマへの深い問題意識と鋭い洞察は、震災後の日本を取り巻く問題の根本にも通じており、29年前に行われた鼎談とはとても思えない。これからの新しい日本の未来を考える上で示唆に富む一冊。

  • 読みたい

    Phantasie/Kultur/Politik by Micheal Ende

  • エンデ、SPDに属する政治家エプラー、政治や社会の問題を具体的に取り扱う演劇コンタクトシアターの実践者テヒルの3人が一泊二日にわたって芸術やら政治やら現代社会の諸問題やらについて語り倒す。エプラーの政治・権力論、エンデの芸術論、テヒルのコンタクトシアターの実践についての報告はそれぞれ興味ぶかいものの、対話全体としてみると、かみあっていない部分はともかく、互いに同意している部分がどうしようもなく陳腐で底が浅い。半分くらいは何でも短絡的な「べき」論に持っていきたがるテヒルの議論の進め方、残り半分は3人が多かれ少なかれ無意識的に持っている「自分は正しい(のに連中はどうして判らないのか)」という心性によるものか。

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