志賀直哉全集 〈第2巻〉 大津順吉 范の犯罪

著者 :
制作 : 阿川 弘之 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 17
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000922128

感想・レビュー・書評

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  • 「范の犯罪」の簡潔に反した奥深さときたら。
    予想外なようで納得もしてしまう衝撃の結末に、「え?」とも「あ!」とも形容しがたい、むしろ双方入り混じった驚きの声を心の中で上げてしまいました。
    その後、色々なことをぐるぐる考えてしまいました。
    答えは全く出ませんでしたが。
    とにもかくにも、代表作「小僧の神様」をもじったと言われる「小説の神様」という志賀の異名は伊達ではないかもと唸ってしまった作品。

    支那人の若き奇術師「范」。
    彼はナイフ投げの演目の最中に、避けるべき的にしていた自身の妻を殺してしまう。
    果たして、彼の行為は故意の殺人か事故か。 ことは衆人環視の中で起こっている。
    裁判官は、一座の座長、范のアシスタント、そして范自身を順番に呼んで証言させ、有罪か無罪を決めようとするけども…。

    順番に語られて明らかになるようで、その実まったく明らかにならない事柄。
    そして、最終的に裁判官が下した「判決」。

    本当に意表を突かれました。でも、それと同時にわかる気もするのです。
    それほど、どれほど証言や現状証拠を重ねても明らかにはならない真実、そして、他者だけでなく自分自身にさえもわからない人の心の不可解さや葛藤が、短い文章の中でとても巧みにとらえられています。

    これは是非、誰かに読んでもらいたいです。
    人によっては私が思ったことと全く違うことを思うかもしれないし、何も思わないかもしれない。
    でも、何を思うか聞いてみたい。

    もっとあれこれ思ったことを書きたいのですが、この作品自体が短く、語ってしまうと、作品の持つ衝撃や気づきによる魅力と刺激が減ってしまいそうなので、今回はここで自粛しておきます。
    でも、本当に誰か読んで感想を教えてほしいです。

  • ハンは捕まる。嫁殺しである。共に理髪店を営んでいたが、ある日、サーカスでナイフ投げを夫婦で行うこととなり、手元誤りナイフは妻へ直撃。ハンは妻の浮気を知っていた。しかし、ナイフが直撃したのは偶然か、必然か。人間の潜在意識を問う、永遠の課題を書いた短編。

  • 祖母の為に 母の死と新しい母 母の死と足袋の記憶 憶ひ出した事 或る一夜 廿代一面 クローディアスの日記 大津順吉 正義派 鵠沼行 清兵衛と瓢箪 出来事 范の犯罪 或る親子 児を盗む話 寓居 蜻蛉 家守 宿かりの死 嵐の日 山の木と大鋸 興津 京都通信 私信 モデルの不服 白樺編輯室にて9-14 「ホトトギス」催能拝見 小犬と小猫 夕立の話 「クローディアスの日記」に就いて 「留女」広告文

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著者プロフィール

志賀直哉

一八八三(明治一六)- 一九七一(昭和四六)年。学習院高等科卒業、東京帝国大学国文科中退。白樺派を代表する作家。「小説の神様」と称され多くの作家に影響を与えた。四九(昭和二四)年、文化勲章受章。主な作品に『暗夜行路』『城の崎にて』『和解』ほか。

「2021年 『日曜日/蜻蛉 生きものと子どもの小品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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