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Amazon.co.jp ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784000924931
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『ユング心理学と仏教』(1995年、岩波書店)のほか、10編の論考を収録しています。
『ユング心理学と仏教』では、著者がアメリカでおこなった連続講演に基づいており、仏教を手がかりにして、西洋と日本の自我の考え方の違いを論じています。『華厳経』や禅の『十牛図』などもとりあげられていますが、とくに著者がくわしく考察をおこなっているのは『大乗起信論』で、井筒俊彦による研究が踏まえられています。著者は、これらの思想に現われている東洋的ないし日本的な自己のとらえ方を、西洋の強固な自我観と相互に照らしあわせながら、確固とした自我の確立をめざす西洋の立場と、関係論的な自己の理解に立脚する東洋の立場の双方から学ぶべきことは何なのかを考察し、将来へ向けての展望を語っています。
著者の作品のなかではとりわけ興味深く読んだものの一つですが、著者の仏教解釈に関しては、若干危うさを覚えるところもあります。それは、『大乗起信論』の天台本覚思想を、個人的な自己を超えた生命的原理との直接的な合一としてとらえているのではないか、ということです。もちろん著者は、そうした生命主義的な世界観を日本の母性原理としてとらえ返し、その問題点を指摘するとともに、むしろ西洋の強固な自我から学ぶことでいっそう広く深い自己の理解に進まなければならないと論じているのですが、それは果たして大乗仏教の正しい理解なのかという点に疑問を覚えます。たとえば禅においては、直指人心という仕方で真如の世界を指し示すとともに、ことばでそれを指すことを一息に断ち切るという側面がありますが、著者の仏教解釈にはこうした厳しさが十分に認識されているようには思えません。なお、同じ問題は梅原猛の日本論においても見られることから、これはいわゆる新京都学派の通弊なのではないかと個人的には考えています。
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