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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784001105667
みんなの感想まとめ
機械と生き物が心を通わせ、互いに助け合う姿を描いた物語は、友情の美しさを鮮やかに表現しています。トラクターと農耕馬の関係は一見荒唐無稽に思えるかもしれませんが、作品全体を通して美しい絵がページを彩り、...
感想・レビュー・書評
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ドイツの絵本作家、ビネッテ・シュレーダーの作品といえば、シュルレアリスムを思わせる幻想的な美しい絵が特徴的だが、本書のそれは、私がこれまでに読んだ彼女の作品の中で、最も現実的に感じられたのが印象深く、それは彼女自身が手がけた物語である、機械と動物の心の交流の行方には、まるで子ども同士が仲良くなっていく過程と重ね合わさるような、普遍的で大切なものが含まれていたこともあるのだと思う。
百姓の「クラースさん」は、これまでずっと葦毛の馬の「フロリアン」と共に畑仕事をしてきたが、二人とも年齢を重ね、仕事が中々捗らなくなってきたことから、若くて力持ちのトラクターの「マクス」に今後の仕事を任せることに決めて、そうすれば草を食って遊んでいるだけでいいと持ちかけられたフロリアンだったが、それ以上にフロリアンが楽しみにしていたのはマクスと仲良しになることであり、その期待感は厩の中を子馬みたいに跳ね回るくらいの喜びようであった。
ところが、実際にやって来たマクスは、確かに仕事はテキパキときれいにたくさんこなすものの、帰ってきてもフロリアンのことは全く気にもかけず、フロリアンが駆け寄って鼻面をそっと擦り寄せても、壁を向いたまま知らんふりしてと、そんな日々が続いていくにつれて、仕事も無くなったフロリアンは、次第と憂鬱な気持ちになっていった。
やがて季節は一巡りして、再び春がやって来たが、その年はずっと雨続きでマクスも仕事に出られず、殊の外イライラしているようにも思われた中、37日ぶりにようやく太陽が顔を覗かせた時、クラースさんはまだ早いと忠告したものの、マクスは知らんふりして畑へと出て行く。
機械は人間や動物のように、その時々の気分による落差の無い、常にこれくらいはできるといった仕事の先読みができるメリットはあるものの、あくまでもそれは人間の使い方次第であって、ここではマクスという機械に子どものような感情を宿らせることによって、本来であればコントロールできるオペレーターがいなくなってしまったシチュエーションを生み出し、それによって表れたのが、子どもそれぞれの個性のようにも思われた、良いところもあって、そうでないところもあってといった点に、お互いが手を取り合い、補い合って生きていく素晴らしさがあるのだと感じられた。
その中でも特に私の心に響いたのが、フロリアン自身は憂鬱になっても、マクスに対する気持ちは何も変わっていないことであり、それはフロリアンの中で、仲良くなれないから嫌いになるという考えには至らないということは、たとえ何が起ころうともフロリアンがマクスのことを好きな気持ちが変わることは無いということでもあって、そうした点には子どもの持つ純粋でひたむきな思いを感じさせるようで、胸を打たれるものがある。
シュレーダーの絵を見て、毎回思うのは、空と地を境にした、それぞれの色合いのコントラストに息を呑む美しさがありながら、本書は更に、物語の展開によって繊細に移り変わる登場キャラクターたちの心理状態を表しているようでもあり、それは初めてマクスがやって来た時の絵が、皆は嬉しそうな表情で駆け寄っているものの、空は暗めのトーンで全身緑色の木が立ち並ぶといった(他の絵は全て普通の茶色い木なのに)、そうした違和感に何かこの先のフロリアンを待ち受ける、暗雲立ち込める感じを漂わせていると思えば、今度は緑色の美しい牧歌的な風景の中、遠近法で描かれたのは、遠くにマクスの仕事をじっと眺めているフロリアン、近くに切り株に腰掛けながらそんなフロリアンを心配そうに見ているクラースさんという、そんな構図に感じられたのは、たとえ言葉を発していなくてもフロリアンがどういった心情でいるのかを、語らずとも痛いほど感じ取れる、そんな物寂しさが絵から滲み出てくるようだ。
また、中盤のマクスが一人で畑を耕している絵には物語の緊迫感とも相俟って、どこか不穏な雰囲気があり、それは突然の強風に花は散り始めて、兎は一目散に逃げ出すのとは対照的に果敢に立ち向かうマクスは、とても美しいのだが、それはまるで自ら絶望に向かって突き進む刹那的な美しさであるようにも感じられた、その激しい色鮮やかさから一気にモノトーンに近い、まさに『孤独』を絵に描いたような見開きへと展開することで、それまでのマクスからは想像もできなかった、天国から一気に地獄へと突き落とされたような悲劇を見事に描いていた。
しかし、ここから再び這い上がるような緩やかな望みの見える展開に合わせて、シュレーダーの絵はやはり空の変化に繊細に表れていて、まだ暗いものの、それでも雨が止んだことだけは確かな空模様の中、フロリアンを始めとした彼らの行動は、その前のマクスの絶望的な悲しみを見た読み手からしたら、心がぽっと温かくなるような、君は独りぼっちではなかったんだよということを、まさか、それまでずっと憂鬱な気持ちでいたフロリアンから教えられることになるとは、マクスも思わなかったであろう。
そして、本書のクライマックスと思われる見開きでは、これまでのシュレーダーの空の中で最も穏やかな、ほのぼのとした色合いと感じられた優しい青であり、それは周りにいる牛や鳥たち、リスまでもが彼らを応援しているように思われた絵全体に漂う結束感と、それまでには無かった淡く美しく咲き誇る桜の存在に感じられた未来への希望に、ああ、フロリアンもマクスもこれでもう心配することは無いのだろうなと感じられたのは、そのどこまでものどかで心安らぐような温かい雰囲気を、彼女の描く絵から自然と感じ取ることができたからに他ならず、それはほんのちょっとした色使いや明るさの違いだけでも、絵の空気感はガラリと変わる、そんな凄みをさり気なく披露しているような、幻想的な美しさだけではなく繊細さも纏ったシュレーダーの絵の伝えたいこととは、苦難の果てに訪れた収穫と幸せを重ね合わせた、目にも眩しい色鮮やかな表紙が何よりも物語っていた、『絵はわたしにとって、自分で養い育てた子供のようなものです』という、彼女の優しい眼差しを帯びた言葉が全てなのであり、だから私は彼女の絵が愛しくて好きなのだろうと、強く実感することができたのであった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
トラクターと農耕馬が心を通わせるお話。
とだけ見ると荒唐無稽っぽいけど、とにかくすべてのページの絵が美しいし、友情も美しい。お爺さんは優しい。
綺麗なものだけが詰まった、浄化されるような絵本。 -
機械と生きもの、両方ともそれぞれ助け合って、必要なんだよねー
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ビネッテ・シュレーダーの作品
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