海のおばけオーリー (大型絵本)

  • 岩波書店
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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001105674

感想・レビュー・書評

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  • ブク友のouiさんのレビューで気になったエッツの絵本。
    モノクロで計143コマあり、映像を見ているかのようで好きな描写。

    お母さんが沖に出ている間に水兵に捕獲され、遠くの水族館に売られていってしまう赤ちゃんアザラシのオーリー。水族館で人間に鑑賞されて喜ばれたが、結局放してもらい湖へ。
    自由になったオーリーは嬉しくて、顔を出したり近づいたりして人間と遊ぼうとするが、得体のしれないおばけと間違われ恐れられる。しかし放してくれた優しい水族館員の声掛けで川を下り海へ出て、恋しいお母さんに会える。

    良かった!…ほんとに会えたんだよね?疲れて眠ってしまったって本当だよね?読者に背を向けているのが気になるよ、と要らぬ心配をしてしまった。

    ……というのは、作者エッツさんの絵本には、メッセージ性があるらしいのだ。
    2番目の夫と死別してから、楽しい話の中に寂しさが潜み、戦争の影が見え隠れしているらしい。
    故郷に帰ることができない兵士、脱走すると罪に問われ殺されたりして疎外される兵士、身勝手な人間など。(最初にオーリーを捕まえて売ったのは"水兵"というのも意味があるのかな)
    なるほど…作者の背景や意図を知って読むと深い。他の作品にも触れてみようと思う。

    この本を勧めてくださったouiさんに感謝です。読んで良かったです(^_^)

    • なおなおさん
      ouiさん、コメントをありがとうございます。

      読みました!(「もりのなか」も確認してきました)
      作者紹介は載っていなかったので、ネットで検...
      ouiさん、コメントをありがとうございます。

      読みました!(「もりのなか」も確認してきました)
      作者紹介は載っていなかったので、ネットで検索したら「マリー・ホール・エッツの絵本における戦争の影について」という論文が出てきたんです!
      興味深い内容なので、ouiさんにもぜひ読んでいただきたいです。
      本書でいうと、戦争で故郷に帰れない兵士、報道に踊らされる人々を揶揄している、など書いてありました。
      私の知識は浅いのですが、深い所を知りたくなります。ouiさんのレビューがきっかけで、作者の背景や意図を知ることができて勉強になりました!
      ありがとうございました。
      2022/07/05
    • ouiさん
      なおなおさん、こんばんは。

      論文読みました。「もりのなか」がハーメルンの笛吹きを踏襲していたとは。ゾッとしました笑
      「森=エデンの園」説も...
      なおなおさん、こんばんは。

      論文読みました。「もりのなか」がハーメルンの笛吹きを踏襲していたとは。ゾッとしました笑
      「森=エデンの園」説も刺激的でした。
      あんな短い絵本なのに驚くほど読みが拡がり(深まり)ますね。
      ご紹介感謝です!
      2022/07/05
    • なおなおさん
      ouiさん、こんにちは。

      さっそく論文を読んでくださってありがとうございます。
      共有できる仲間がいて嬉しいです。
      「『もりのなか』も最後は...
      ouiさん、こんにちは。

      さっそく論文を読んでくださってありがとうございます。
      共有できる仲間がいて嬉しいです。
      「『もりのなか』も最後は読者に背を向ける」と意味深に書かれているので、オーリーも最後背を向けているのがとても気になりました。
      寝顔を見たかった…。考え過ぎでしょうかね…^^;
      私もouiさんのおかげで深まりました。
      こちらこそ、ありがとうございました(^_^)
      2022/07/06
  • マリー・ホール・エッツ作。石井桃子訳。

    おかあさんアザラシが沖に出ている間に、水兵に連れ去られたあかちゃんアザラシ。
    その小さいアザラシを買い取った動物屋がオーリーと名付けた。オーリーはさらに水族館に売られていく。
    オーリーはまた無事におかあさんアザラシのもとへ帰り着くことができたのだが、それまでオーリーが関わった人間たちがあたたかく、ユーモラスに描かれる。

    本作の個人的ハイライトは、飼育係がこっそりと湖に逃したオーリーを目撃する人たちがたえず、彼ら彼女らの妄想がどんどん膨らんで、おっかない怪獣としてディフォルメされていくところ。

    絵はモノクロで、漫画のコマみたいなレイアウトになっている。そのひとつひとつが素朴なタッチでていねいに描かれていてなんとも味わいがある。
    これがアニメーションになったら間違いなく泣く。すでにアニメ化は実現しているかもしれない。

    石井桃子氏による小さな作者紹介がページに挟まっていた。そのなかでさらっと、

    「エッツは、自分の『もりのなか』という絵本は、「死を目の前にして、万物と一体になろうとした経験」から生まれたといっています」

    と書いてあって、鳥肌が立った。"かくれんぼ"、そして"父の迎え"というのは、そういう意味だったのか。
    彼女が「目の前にした死」とは、不治の病でなくなった夫エッツ博士のこと。

    • ouiさん
      なおなおさん、
      楽しい話なのに黒のイメージって、妙ですね(笑)たしかに。ふつうならもっと明るい色を使いますよね。

      そうそう、このオーリーの...
      なおなおさん、
      楽しい話なのに黒のイメージって、妙ですね(笑)たしかに。ふつうならもっと明るい色を使いますよね。

      そうそう、このオーリーの本もそうですけど、お話の続きを空想したくなる。私なんかは、作者の人生が透けて見えそうな気がするからなんです。リアリティの秘密もそこにありそう。

      何冊かエッツ作品を読んで、今村夏子さんの小説にテイストが似てるんじゃないかとうすうす感じ始めているところです。
      もし未読でご興味があれば、なおなおさんもいつか読んでみてください。「こちらあみ子」とか最高ですよ!
      2022/06/30
    • なおなおさん
      ouiさん、こんばんは。

      明日図書館に行くので、「もりのなか」等、黒のイメージがあったかどうか確認してこようと思います。
      今村夏子さんの小...
      ouiさん、こんばんは。

      明日図書館に行くので、「もりのなか」等、黒のイメージがあったかどうか確認してこようと思います。
      今村夏子さんの小説は未読なんですよ。
      この機会にと思い、「こちらあみ子」をさっそく予約してみました(^_^)!
      ご紹介いただき、ありがとうございます。
      2022/07/01
    • ouiさん
      なおなおさん、こんばんは

      「オーリー」の黒さも見てみてください。コマによっては全然可愛くない(笑)それが良いんですが。
      あみ子、気に入って...
      なおなおさん、こんばんは

      「オーリー」の黒さも見てみてください。コマによっては全然可愛くない(笑)それが良いんですが。
      あみ子、気に入ってもらえたら嬉しいです!
      2022/07/01
  • おもしろかった。オーリーがこそされそうになったところがさびしかったけど、おかあさんと会えてよかった。オーリーがいろいろなことをして、おきゃくさんをよろこばせてあげたところがおもしろかった。ちずがついていて、ほかのお話ともつながっている感じがしたのもよかった。(小2)

  • うまれてすぐにお母さんと引き離されてしまった、あざらしのオーリー。水族館で人気者になりますが、海が恋しくてたまりません。ついに逃げ出したオーリーはおばけと間違えられ、大騒動に…。小学生のころ買ってもらって、「すごくおもしろい!」と興奮したことを覚えています。親身な飼育係、うわさに踊らされる人々、お母さんとの再会など、今読んでも手応えのあるしっかりしたドラマがあり、ユーモラスな味があります。そのときの本は今でも大事に持っていますが、当時は小型版なのでした。大型版もほしい。

  • 感動の物語でした。マリー・ホール・エッツ1947年の作品。アザラシのあかちゃん、後に水族館でオーリーと名前をつけられ人気者になります。が、海に逃がしてもらい、夜の海で、おばけに間違われてしまいます。142コマのマンガみたいにできていて、心暖まる作品になっています。

  • 表紙の印象が暗くてなんとなく手が伸びずにここまできてしまったいたけど、ひとたび本を開いて読み始めたらすごくおもしろかった。コマ割りの展開のせいかスピード感があって入り込んで読んだ。この絵本は黒いからこそ味と温かみがあっていい。柔らかくユーモアある言葉はさすがの石井桃子さん。もう一回読みたくなるな、これ。

  • こんなにドラマチックで暖かいお話が繰り広がってるとは、知らなかった。

    あかちゃんオーリーのおかあさんは、お乳のために海へ食べ物を探しに行っただけなのに。。
    そのほんの少しのすきに、水兵さんにオーリーは連れていかれ、売られてしまう…

    そして、水族館へ。
    ここからドラマチック!
    お母さんが恋しくて、食べることもできなくなり、元気をなくしたオーリーは、病気で苦しんでいると館長さんに勘違いされ、飼育ががりに、殺すように命じられてしまう。。

    でも、そんな事ができるはずの無い飼育員さんのおかげで、オーリーは海に逃がされます。
    そしてここからが長い旅の始まり…

    楽しい絵本でした。うーん、絵本というより、漫画みたい。

  • 何十年も前に読んでいたけれど、「ちっちゃな科学」で福岡さんが絶賛していたことで、読み直してみることに。
    水族館の館長が、弱ったアザラシを殺してしまえと指示するところなど、記憶になくビックリ!
    でも、全体の感想は良かった。遊びたがりのオーリーもかわいい。

  • 読み終わってから、あらためて表紙を見ました。そして、思わず瞳を覗きこみました。うるうるしてました。

  • エッツを続け読み。動物への愛情がこの絵本でもあふれている。
    コマ割りのモノトーンでマンガっぽい作りなので絵本らしさはなく、ストーリーも長いので童話との中間みたいな感じかな。
    川に時々、たまちゃんだとか来て人気者になるけれど、オーリーみたいな事情があったのかなと、そこまでの道のりを想像しちゃうよ。
    ラストの前に、おばけと騒いだ人たちが、事情を知って笑顔になるとこがホッとした。

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著者プロフィール

1893年,アメリカ,ウィスコンシン州生まれ。ニューヨークの美術学校を卒業後,シカゴ大学で社会学を学びながら,セツルメント活動に従事。その後,コロンビア大学の大学院で児童心理学を学び,『ペニーさん』(徳間書店)でデビュー。『クリスマスまであと九日』(冨山房)でコルデコット賞を受賞。作品に「もりのなか」,「またもりへ」,「わたしとあそんで」(以上福音館書店),「モーモーまきばのおきゃくさま」(偕成社)などがある。

「2023年 『わたしとあそんで PLAY WITH ME』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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