影との戦い―ゲド戦記 1

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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001106848

作品紹介・あらすじ

無数の島々と海からなるアースシー(EARTHSEA)。並はずれた魔法の力を持つ男ゲドの波瀾万丈の生涯を軸に、アースシー世界の光と闇を描く壮大な物語。小学6年、中学以上。

感想・レビュー・書評

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  • 次男が借りて来たので、隙きを付いて私も読んだ。
    有名作品だが読むのは初めて、アニメかも見ていないので、そもそも「ゲド」が主人公の名前だとも知らなかったわ。
    そしてそのゲドは案外身勝手で虚栄心も高いという主人公にしては珍しくも人間的欠点が多くて面白い。

    ※※※ラストまで完全ネタバレしています※※※


    舞台は作者が作った架空のアースシー世界。海に浮かぶ100以上もの島々。
    島同士の戦争や、竜などの獰猛な怪獣たちの来襲がある時代。
    この世界では魔法使いがいる。
    なかでもロークの魔法学院で学び、聖人から正式に魔法使いの杖を授与されたものは正式な魔法使いとなる。待てょう使いたちは要請のある各地に派遣されたり、魔法使いとしての働き口を得て船を魔法で補強したり、風を起こしたり、村が襲われたら人々の姿を隠したりする。
    正式に魔法使いとならない者は、まじない師として日常的な小さな魔法を村の人々の生活に取り入れている。


    この世界での魔法の根源は、名前。名前は本質であり、人間には幼名と普段使う呼名と、そして自分の家族や親友や配偶者にしか知らせない本当の名前がある。
    魔法を使っての戦いは、相手の名前を知り抑えたものが優位となるし、ものの姿を変えるとは名前を変えることとなる。だから他のものに姿を変えすぎぎて名前が変わってしまうと、元の自分に戻れなくなることもある。
    なかなかしっかりしているなあと思ったのが、魔法というのは結局は言葉であり名前だというために、魔法が使えるからと言って何でもありではないということ。
    無いところからなにかを出すという魔法は、言葉を具現化すること。だから「肉を食べたい」として肉を出してもそれは「肉という言葉」を食べたことにしかならない。

    高名な魔法使いや、勇者たちには「武勲(いさおし)の歌」がある。これはこの世界でも最も優れた魔法使いのゲドの物語。武勲の歌ですら語られない彼の成長期だ。

    彼はゴント島の鍛冶屋の生まれだった。まじない師の叔母から教わった簡単な魔法はすべてものにした。動物を呼び寄せる呪文により野生の鷹を呼び寄せる姿から、彼の呼名はハイタカとなった。
    ハイタカはとても功名心が強く、怒りっぽく、虚栄心の強い性格だった。
    やがてハイタカは、大魔法使いのオジオンの弟子になる。そのときオジオンはハイタカに新しい本当の名前を与えた。
     「ゲド」 
    ゲドは師匠オデオンのもとで魔法の力を増して行き、この老師匠を深く尊敬するようにはなるが虚栄心も増して行った。
    ある時見栄を張るために禁じられた魔法を唱えたゲドは、死の国から影を呼び出しかける。

    更に強い魔法を求めるゲドは、ロークの学院に向かう。
    ここで彼は親友のカラスノエンドウと、ライバルのヒスイと知り合う。
    ゲドの魔法の力は増すばかりで、ローク学院一とも言われる。
    だがヒスイに挑発されたゲドは、死者を呼び出す魔法を唱えて、死の国から影を呼び出してしまう。
    影は激しく暴れて、ヒスイとゲドを傷つけ、そしてどこかへ去って行ってしまった…。

    この影はゲドが出したもの。ゲドが死ぬまでつきまとうもの。もしもゲドに追いついたら、ゲドを喰らって乗っ取ってしまうだろう。

    ローク学院での修行を積んだゲドは、自分が逃した影を追う旅に出る。
    かつて学院一の才能と言われたゲドの高慢な性格は、小さな島をまわり、領民と交わり、そして影との戦いに無力な自分を自覚してゆくにつれて優しいものとなってゆく。

    学院を出てから2年後、ゲドは先に卒業していたカラスノエンドウと再会する。彼らは本当の名前を教え合う親友だった。
    カラスノエンドウは、ゲドの影との戦いに同行を申し出る。

    影と戦うには、影の名前を知らなければならない。だがあの影に名前などあるのか。
    海の長旅の末影に追いついたゲドは悟る。
    自分から出た影は自分自身だ。
    ゲドと影は同時に相手の本当の名前を言う。
     「ゲド」
    ゲドとその影は一つになった。
    ゲドは自分の死を自分のものとして、自分自身を全て受け入れたのだ。
    そうなったゲドは、もはや憎しみや破滅にとらわれることなどなく、己の生を全うするために生きるのだ。

  • 素晴らしかったです。訳者のあとがきにもあるように、ゲドはわたしだ、と思いながら読み進めました。影との戦いにおけるゲドの苦しみが始終切々と伝わり、束の間訪れる安らかな時間には共に胸を撫で下ろし、涙し、安堵して…。大人になって、今、この作品と出逢えたことを嬉しく思います。

  • かなり渋い作風でした。
    ハリーポッターとかと違って、派手な演出はないし、映像化のしづらい内面世界をうまく描いてます。
    魔法(という言葉を使ってますが、便利になる手段でしょうか)は使い方を間違えれば、世界の均衡を脅かすという強いメッセージが作品全体に染みています。
    特に、主人公が影との戦いを通じて一気にボロボロになる様は暗いなぁ、と驚きました。
    スカッとする作品ではありませんが、優しさや言葉の大切さを改めて噛みしめられる良作でした。
    対象年齢も子どもから大人まで楽しめるのではないでしょうか。

  • もう3回か4回シリーズ通して読んでます。

    映画よりも原作をお勧めします。
    よかったら手にとって見てください。

  • やっぱりファンタジーといえばこれは外せない。

    映画は1~3巻までをごちゃ混ぜにした闇鍋みたいでした。

    映画しか知らない人に読んで欲しい。
    真の名前や言葉を大切にしていくゲド戦記の世界観は日本人の言霊を大切にする世界観と似たものがあると思うのです。

    1巻の最初では本当に青臭い、自分に自信満々のゲドが、苦難に立ち向かいながら、立派な賢者になっていく姿はとても頼もしく、また先の自分も
    今はまだまだ駄目な子どもだけれども、いつかゲドのように賢く優しい大人になれるのだろうか
    と思ったことがあります。

  • 昔から持ってる本はこちら。
    テレビでアニメを見たら、原作がどうだったか気になって…4度目ぐらいの読み直し。
    一巻目は特に、ゲドの若い頃なのでアニメとは関係ないんですが、作品世界や基調はああ、こうだったと納得。
    やはり、すごい作品です!
    ゴントの貧しいヤギ飼いの少年ハイタカは、親戚の女性に少し魔法を習っただけだったが、魔法の才能を見いだされ、ローク島の学院に招かれて学ぶことになる。
    桁外れの才能を持ち、学ぶことにかけては意志が強いが、気が荒く世間知らず。
    気の合わない学友にそそのかされて力を見せつけたくなり、禁忌を犯して恩師を失うことに…
    若き日の傲慢なゲドの遭遇した事件。
    映画とは違うストーリーですが、後にアレンが追われる影とは何なのか、その原型がここに描かれています。

  • ゲドの驕りと妬みの心が呼び出した影との戦い。これがファンタジーとは思えないほど、リアルな描写に驚き

  • 小学生6年生の息子も何とか読了。私も最初からぐいぐいと引き込まれました。少年ゲドから青年ゲドへの成長の痛み、そしてこの大魔法使いの試練を自分のことのように受け止めながら読んでいきました。
    中学生、高校生時代にはぜひ読んでおきたい物語の一つだと思います。

  • 30年ぶりの再読!

    「カラスノエンドウ」の花を見て、ゲドの親友の名前だったと思い出し、読みたくなりました。

    「真の名前をしる」「均衡」、読んでいた当時のキーワードをたくさん思い出しました。

    当時の書き込み、今と、ほとんど感覚的に変わってなく、嬉しいやら、成長なしやら。
    今日は、家事を投げ出して、再読、再書き込みです。

  • 全6巻?だけど1~3巻が本編なのでとりあえずそこだけ読めばいいです(←
    ファンタジー古典の名作って言われるだけある逸品。世界観・物語・キャラクターの絡み合いが素晴らしい!
    だいぶ暗め重めだけど読みやすいので長編読める人ならおすすめです。
    あと映画版は忘れよう!あれは偽物だ!(言い切った

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著者プロフィール

1929年10月21日-2018年1月22日
ル=グウィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。

代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。

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