さいはての島へ―ゲド戦記 3

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001106862

作品紹介・あらすじ

魔法の館の長としてアースシーをおさめる大賢人ゲド。災いの源を断つため、若いアレン王子をともなって最果ての地におもむき、死の国の境界で死力を尽くして戦う。小学6年、中学以上。

感想・レビュー・書評

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  • 3部の舞台は、1部と同じ100もの島からなるアースシーの世界。魔法やまじないがあり竜がいて、この世界での魔法の根源は、名前。普段は呼名を使い、本当の名前は本質のため信頼が置ける相手にしか明かさない。
    そして魔法使いの素質がある者は、ロークの魔法学院に集う。
    いまこのロークの魔法学院の学長で、大賢人を称号を得ているのは、かつて闇の扉を閉ざし、竜王となり、そしてアチュアンの墓所から壊れた腕輪を全うして世界の平和を取り戻した魔法使いの通称はハイタカ、本名はゲド。

    このロークの魔法学院に、エンラッドの王子のアレンが遣わされてくる。
    最近世界の様子がおかしい。魔法使いは魔法を忘れ、人々は歌を忘れ、自分を忘れた。
    変わらないのは強烈な魔法で守られているロークだけだった。
    若いアレンはゲドに忠心を近い、そしてゲドはアレンに王の素質と将来の可能性を感じる。
    こうして大賢人ゲドとアレンは、世界の異変の根源を探り元に戻すために旅に出ることにした。

    旅先の海や村では、人々はかつての自分とは変わってしまい、人間よりも先に言葉を知っていたはずの竜たちまでも言葉を失っていた。

    そして旅の中で世界混乱の元は、誰かが死者と生者との境界の扉を開け、闇を世界に溢れさせたことだとわかる。
    ゲドとアレンは黄泉の国に分け入ってゆく…。

    ===
    第1部のゲドは青年期、第2部ではそのしばらくあと、そしてこの第3部のゲドはすでに50歳も近く世界一の魔法使いで大賢人の称号も持っている。だが活躍したのはもうずっと前で、現在では現役は退いているようだ。
    かつて若くて素質を認められたゲドは、いまでは若いアレンに将来の可能性を感じている。
    物語としては、世界が失われるという危機を自分でもわからぬままに秩序が混乱して覚えていたものを失ってゆくという重圧を感じる運びとなっている。

  • 名作「ゲド戦記」3巻目。ここでいったんは終了、後に4巻そして5巻も書かれましたが。
    この世界がおかしくなっている…
    王の一人息子アレンは、ロークの大賢人として名高いゲドのもとへ遣わされ、すぐにその人柄を尊敬してゲドに仕えることを望みます。
    ゲドもまた、何を探すかも定かでない探索の旅の連れとして、少年アレンを選ぶのでした。
    世界の果ての海で筏の上だけで暮らす民族に助けられ、人の世界には現れないはずの竜が太古から得ていた言葉を失い、しだいに狂気にむしばまれていく姿を目の当たりにします。
    死んだと言われていた魔法使いクモの仕業らしいと突き止め、生と死の境界を越え…
    アレンとホートタウンに行くあたりは映画に近いところがあります。
    ただ映画はほとんどそのあたりで対決して終わりだもんねえ…
    2時間ほどでまとめるからとはいえ、スケールが小さい。ダイジェストみたいなもんだから〜ぜひ原作も読んでください。

  • ゲド戦記は少しづつしか読み進められないけれど、読むのを諦められない不思議な本です。さいはての島へはアレンとともに旅をして、世界を救うお話し。竜の表現がとても怖く描かれていて、大好きです。竜は怖くて、危ない存在なのがとても良い。

  •   ジブリのゲド戦記のベースが、確かこの三巻…と聞いたような気が…?

     っていうか、中身はきわめてこの本と酷似してたからそうだと思うけどw


     ジブリのゲドでは、アレンは最初お父さんを刺して逃亡する途中、既に世界の均衡が崩れ始めた原因を探して旅に出ていたゲドと会う、はずだが、本ではアレンの方がロークの学院へ会いに来る。お父さんを刺した事実もない。

     一巻も二巻もそうだったけど、いつも、探すべきもの(というかすべきこと)がはっきりとしていなくって、だけど暗い不安は間違いなく在り、気を抜くと色濃くなってく。もやもやした不安と闘ううち、極限まできてやっとこさ、核心に迫ることができるの。
     三巻もやっぱりそういうパターンで、「何か」がおかしいことははっきりとしているのだけど、何をどうしたらそれが解決するのかはまったくわからないまま、ゲドとアレンは旅立つことになる。


     最初からアレンのための旅であるとゲドが言っている、意味が最後のほうになってよくわかってくる。ゲド(たち魔法使い?)は、漠然とだけど、どうすべきかってことを感じて感じるままに行動しているだけ…大きな流れのようなものを、感じているのかなって。
     なんていうか…もちろん物語の主人公はゲドなのかもしれないけど、二巻でもそうだったように、ゲドはいつも、主たる流れの真ん中にはいないで、影で支える場所にいる。
     

     クモに関して。
     もともと存在する"邪なもの"に、まんまと利用されていただけのような気がする、クモ自身が中心となって悪事を働いた、というよりは。
     なんかどっかにも書いた気がするなぁ〜、宮部みゆきさんの英雄の書にでてくるヒロキ、みたいに。もちろん、生きている人間誰にでもある、黒い欲望はベースとしてあったと思う、そしてクモはその欲望が人一倍強くて、かつ欲望を叶える力もあった、若かったゲドと同じように。その心のすきまに邪なものが入り込み、結局扉を開けさせられてしまった。死の国でクモとゲドが会話するのを読んでいたら、結局「どうしよう、扉を開け放ってしまった、大変なことになって自分の手には負えないよ」って言っているように思えて来ちゃった。
     やっぱり、私たちの世界でも誰にでも起こりうることじゃないのかな、魔法とか、極端なファンタジーは別として。


     本では、町の荒廃ぶりが映画に劣らずヒドくて…映画は本に忠実だったと思う、三巻がベースとなっているのならww
     麻薬をかんで町の片隅でうずくまっている人々、人買いに鎖で繋がれて売られて行く奴隷。ニセモノばかりが並び、見た目ばかりにぎわっている市場。
     映画の方の批評で、冒頭お父さんを刺す息子から入るのはどうか?みたいなことどっかで書いてるのを読んだけど、本がこれなら、親を刺す息子っていうのもアリではないかと思ったです。殺したとまではっきりしてるわけじゃないし、本でも赤ちゃんを生け贄として刺そうとしているのをみたと、竜が言う記述がある。異常ぶりがよくわかるよね。


     さて、あとはテハヌーだけど。
     どんな風にして物語にでてくるのかな。

    ラストで。
     竜の背に乗る時、杖は置いて行くと言うゲド。
     ロークの学院にアレンを送り届けた後、自分はロークに戻らず再び竜の背に乗る。
     その後のことは、後世に歌い継がれる歌のみで事実として語られていなかったことが、余韻があってすっごくよかった。

  • <THE FARTHEST SHORE>
      
    さし絵/ゲイル・ギャラティ[Gail Garraty]
    扉カット/ルース・ロビンス

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00041492

  •  Iでは心の闇と孤独を、IIでは自由の意味を、そしてIIIでは死に対する理解を、。I、IIとお話しが進むにつれテーマも深まり、こちらも何度も読み込みたくなる一冊でした。シリーズ三冊、どれをとってもルグウィンの生み出す世界観は本当に凄い!死というものを正しく捉えたゲドの言葉は、そのまま読者へと語られ、納得を促します。ゲド戦記のこの物語は、誰もが持つ捉えようのない不安への答えを導き、私たちを明るいところへと戻してくれる、お守りのような書だと思います。

  • ファンタジーの世界観の作り方が非常にうまい。派手さはありませんが、それが良い。内省を促す演出には脱帽。
    子供の頃に読みたかったですが、大人になっても繰り返し読み応えがあると思う。

  • あの映画は、これがメイン??なのかな????
    映画もぶっちゃけちゃんと見てないからな・・・

  • 読了。シリーズには続きがあるけど、やっぱり最初の三部作が控えめに言って最高。残りはファンサービスみたいなもんだよね。

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著者プロフィール

1929年10月21日-2018年1月22日
ル=グウィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。

代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。

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