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Amazon.co.jp ・本 (306ページ) / ISBN・EAN: 9784001108248
感想・レビュー・書評
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なんだろな、良かった。トムになりたい。
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巻末に「真夜中の庭で」のこと、として作者の言葉が載っています。「時間」が人間の上でもたらす変化をトムとハティの物語の中で探究し解決しようと試みた、と。挿絵を見返してみると、そういえば。。。その不思議が、思い込みというベールが、時間の流れをさらに複雑にして素敵にして扉の向こうとこちらで存在する。緻密で濃厚でそれでいて素敵なファンタジーとして楽しめる素晴らしい物語でした。日本語訳も
秀逸でピアスの表現に感動している気持ちがこちらまで伝わってくるような草木や庭や自然一つ一つを美しく表現していてとてもよかったです。たくさん書き写してしまいました。 -
読書会のお題本となり、私の長年の積読がやっと解消される時がきました✨
時空の移動が難しくて、なかなか読み通せずに放置していたことを、何故?と反省するくらいに素晴らしく忘れがたいお話しでした。
児童文学にありがちな、道徳的、教育的な部分がなく(ハイジ、秘密の花園と読んできたので余計に感じるところ)子どもへのお話しでありながらもインテリジェントな雰囲気を感じられて、大人にこそ存分に楽しめる作品なのですね。長年評価され、多くの作家が好きな作品にあげる意味がよくわかりました。
弟ピーターがはしかにかかってしまったために、子どものいない、叔父夫婦の家へ預けられることになったトム。
「せっかくの夏休みをだいなしにして、ごめんね」と唇を震わすお母さんに「ぼくもはしかになればよかったんだ。」と叫んでしまうほどに、嫌々ながら叔父のアパートへと車は走り出します。
そんなプロローグから、あっという間にトムの心をつかんで離さない大時計との出会い。
叔父の妻、クヴェンおばさんは、お料理好きで、トムにうんとご馳走をふるまう…(このおばさんが健気でみんな大好きになりました)しかしそのごちそうのせいで、胃もたれをして夜中に眠れなくなるトム。そして、大時計が13回目の時を打つ音を聞いてしまうのです…
家が、月の光がトムを誘う。
一度も使ったことのない、裏口のドア、不思議なボルトを引き抜くと、そこには美しい庭園が広がっていたのです!!
そして、毎晩のように、おじさん達が寝静まると、庭へと出ていき、トムはそこに住む女の子ハティやその兄たち、そして庭番のアデル達を見つけます。
でも、トムの姿が見えるのはどうやらハティだけのよう。みんな幽霊なのか…
いや、トムこそが幽霊だと、アデルに詰められる出来事も…(扉を抜けるトムのことを見てしまったアデルったら!)
トムは徐々に気づいていくのですね、時間を遡っていることを、それをハティに伝えようとするもどかしさ、会う度にハティは成長してしまったり、少し前に戻ったりするのです。(その仕掛けが上手いなあと感心)
庭園の描写もとても緻密で美しい。
また現実世界でおじさんとトムが時について語ったり、ハティが幽霊なのだという証拠をつかもうと、ブリタニカ(百科事典)で探偵よろしく調べあげるトムの姿には、庭でのファンタジーとの対比がとても楽しい。
そして、ハティから幽霊だと思われたままにだんだんと両親とピーターの待つ家に帰る日が近づいてくるトム、大時計の持ち主、気難しいバーソロミュー夫人…
素敵なラスト。
思い返しても胸が震わされます。「あんたは、生きていたんだね。血も肉もあるほんとうの少年だったんだね…」
印象的なシーンがあちこちに、ちりばめられて素敵です。
初めてハティと言葉を交わし、温室を案内されるシーンや、ハティがりんごの木から落ちて、怪我をしてしまうところ、凍りついたキャム川、スケート靴。。イーリーの大聖堂!
イギリスの児童文学の中にだけある、美しい庭園というメタファ(屏で囲まれ守られた、保護された場所)だとか、時の物語だとかいろいろな見解があるそうですが、理屈抜きに楽しくて、女性的視点をもってしたら、とてもロマンチックな物語でした。
ピアスのあとがきの最後の言葉、「私たちはみんな、じぶんのなかに子どもをもっているのだ。」
どこかで聴いたなぁ。。
そうだ!谷川俊太郎さんのいう年輪だー。
子どもの文学を語る人は、みな自分の中の子どもと対話できるのでしょうか…
素敵なことですね。
私もいつも児童文学を読む時には、自分の中の子どもに戻って読んでしまいますけどね、理性に欠けるところが残念ですが -
「トムは真夜中の庭で」フィリパ・ピアス著・高杉一郎訳、岩波書店、1967.12.05
306p ¥1,995 (2024.07.04読了)(2024.06.21借入)(2012.08.24/52刷)
この作品は、1958年にイギリスで刊行されました。戦後の作品ですね。
時々紹介される本なので、そのたびに読もうと思うのですが、いつの間にか忘れてしまいます。Eテレの「理想的本箱」で紹介されたので、この機会に読んでしまうことにしました。
トムが、過去の人たちと真夜中の庭で、交流する話でした。いい夏休みを過ごしましたね。
トム・ロング この本の主人公
ピーター トムの弟
アラン・キットスン トムのおじさん(二階に住んでいる)
グウェン トムのおばさん
バーソロミュー夫人 キットスン家の家主(三階に住んでいる)
ヒューバート
ジェームズ
エドガー
ハティ
アベル
●「時」(225頁)
「人間は、それぞれべつべつな『時』をもっているって。もちろんほんとうはだれの『時』もみんなおなじ『時』のなかの小さな部分だけど。」
「だからぼくは、わけはよくわからないけど、だれかよその人の『時』のなかへ、『過去』のなかへあともどりしてはいっていくことができるんだ。でなけりゃ、こういってもいいけど、……」
「あの子の方がさきへすすんできて、ぼくの『時』のなかにはいることができる。ぼくの『時』は、あの子には未来に思われるかもしれないけど、ぼくにとっては現在なんだ。」
(作者は、このように理屈付けしているけど、よくわかんないよね。)
【目次】
1 家を遠くはなれて
2 大時計が十三時をうつ
3 月の光のなかで
4 日の光のなかで
5 露のなかの足あと
6 ドアを通りぬける
7 ピーターへの報告
8 いとこたち
9 ハティ
10 いろいろな遊びといろいろな話
11 川は海へそそぐ
12 ガチョウたち
13 今はこの世にいないバーソロミューさん
14 辞典をしらべる
15 塀の上からの眺め
16 木のなかの家
17 ハティをさがしもとめる
18 窓に横木が二本わたしてある寝室
19 つぎの土曜日
20 天使のことば
21 いつも「時」のことばかり
22 約束を忘れる
23 スケートの旅
24 トムとピーターがひょうっこり顔をあわせる
25 最後のチャンス
26 あやまりにいく
27 トム・ロングにきかせた話
訳者のことば
「真夜中の庭で」のこと フィリパ・ピアス
☆関連図書(既読)
「極光のかげに」高杉一郎著、岩波文庫、1991.05.16
(アマゾンより)
友だちもなく退屈していたトムは、真夜中に古時計が13も時を打つのを聞き、ヴィクトリア時代の庭園に誘いだされて、ふしぎな少女と友だちになります。歴史と幻想を巧みに織りまぜた傑作ファンタジー。 -
前半ほぼ全てが、物語の基盤となる設定にあたる話となっていたため、そこが私には少し長く退屈に感じてしまった。
しかし後半でその設定がどんどんと活かされ、話が面白く展開していく。イメージとしては後半からの怒涛の伏線回収という感じ。
児童文学ではあるものの、大人でも楽しめる内容となっている。 -
序盤は読むのが退屈だった。
けど、“古い洋館”と“時空を超えた友情“、大好物なんですね。
後半は面白く読めた。
『思い出のマーニー』や『ふたりは屋根裏部屋で』が好きなひとはきっと好き。 -
いや〜〜時間が掛かった
そんなに昔の本だとも
児童向けの本だとも知らず
ちょっと怖い絵と
スローテンポなお話 -
これ一体どうなるのとはらはらしながら読んでた。
ハティやアベル達は幽霊だと思い込んでたから、結末のバーソロミュー夫人がハティだとわかった時に思わず立ち上がってしまった。
いや、凄い面白かった。 -
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読書感想文コンクールで、やたらテーマにされる本、の印象が強い。
クラスの大半がこの本を夏休みの課題図書に選んでいて、
本屋さんで推薦でもしてるのかしらん?とちっちゃい頃に不思議だった。
みんなが揃いもそろって書いた感想文は、感受性豊かで・大人が望む子供らしさが満載で。
当時とても嫌悪した。
『本を読むのに感想文の書きやすさで選びやがってクソが。
良い子ぶって子供ぶって安直な感想並べて、狙ってるのがあざとい。』
とイライラした。
あとその本に興味をもったきっかけ(動機)が書かれている作文がなくて、
『読みたい!っていう純粋な自分の意志で選んだ…訳ではないんだろうなー』
と感じとれて、この本に対しても興味が薄れてしまった。
自分の手で探して出会って、夜電気消した後に我慢できずこっそり懐中電灯で照らしてでも読みたくなるような、あのワクワク感が、感想文書いた人たちに感じられなかったから。無難で退屈な本だと思ってた。
すみません普通におもしろいですすみませんヽ(´Д`;)
主人公トムが、真夜中25時に家を抜けだして、広大な庭で遊ぶ話。
自然描写の美しい、子供目線のSFちっくファンタジー。
灰汁がないので、なんとなく雰囲気で良さそうと思わせて、読み進めさせる系のお話。
(ただ、このなんとなく良さそうだな感は、作者独自の計算がされてる。
なんとなく面白そうだ、と思わせる理由は説明できないし、
詳細に語ろうとするとものすごく気持ち悪いことになる。)
主人公は冒険気分だけれど、ストーリーにはこれといって山谷の激しい場面はなく、いつまでも読んでられるけど、続きが気になる!といったハラハラ感はない。
実際に事が起こるよりも、何か起こるんじゃないかという期待感やワクワク感のほうを主人公に同調して楽しむ作品。
自然描写が素敵。
映画化されてるのか知らないけど、私の中では完全映画化不可能な作品。この自然描写の素敵さは、主人公トムの心理要素と結びついて、
実際の自然の美しさに優ってるから。
本作に書評(感想文)が寄せられてたけど、やっぱ例にもれず気持ち悪かった。私自身も、気持ち悪い感想書いてるなあと思う。
まとめると、この本自体は良い作品なんだけど、感想文が不思議と粘着質で理屈っぽくなるor素直すぎてあざといか単純になるので、感想文かかないほうがイイネ!(ゝω・) -
以前、少年文庫で登録した時ははじめて読んだ時よりよかった、と思ったんだけど、それでも認識が甘かった。ジョイス、ウルフ、プルーストらの作品を咀嚼して作られた児童文学のジャンルを超えた完成度の高い作品。
時間が人間にもたらす変化、この内面的なこと、
時間とは何か、人は他者と時間を共有することができるのか、
永遠にとどまることができるのか、そのために支払うべき代償は何か
などの哲学的な問題をタイムファンタジーという形を使って問いかけてくる。
また別の観点から見ると「こどもの悲しみ」というものが描かれる、多義的な作品なのである。
ハティがどんどん成長してトムの手の届かない大人になる。トムは輝かしい子供時代の終焉を見てしまうのである。こどもにとってこんな悲しいことがあろうか。
ここで描かれる庭は「エデンの園」であり、トムとハティはイノセンスの象徴である。二人は無垢の愛で繋がるが、成長したらそこは出なくてはならないのがエデンの園である。
最後の夜にトムが庭に出ようとすると大時計から現れたのは、創世記で神がエデンの園からアダムとイブを追放した後に、エデンを守るために置いた天使ケルビムと回る炎の剣なのだった。
こんなことは普通に読んでいても大概の日本人にはわからないことだと思うし、子どもならなおさらわからないことと思う。
以上の事は、児童文学の舞台を訪れて収めた写真をスライドにして、各地でスライドの会を催している池田正孝先生(岩波少年文庫版の「第九軍団のワシ(サトクリフ)」他に表紙写真を提供)の講義の受け売りです。 -
時間の流れが前後したり、交差したりするのが面白かった。
周りからは1人だけに見えていたけど、2人だけでスケートをしているシーンは印象的だった。
最後にトムとエティが再会できて感動した。
ぜひ今度はピーター含め3人で庭園の話に花を咲かせてほしい。 -
トムとハティが出会うまでは、癖のある登場人物ばかりでなかなかストーリが進まないなと思いましたが、後半は素敵な展開でした。
子供の頃の空想なのか現実なのか今となってはわからない思い出ではなく、ちゃんとつながって終わるのがよかったです。 -
トムが大きな古時計がある叔母の家に行って、真夜中にドアから過去の大きな庭に出てハティという少女に会う。そしてドアから出るたびにハティは成長するが、その会っている時間は自分にとってはほんのわずかの時間であった。最後にスケートで遠出をして大聖堂を見学した。そこに夢の中にいたはしかにかかった弟が来た。
そのアパートの3階に住む気難しいといわれていたお祖母さんが、実はハティであったという結末になる。
子どもにとっては、夢、過去の場所、過去から現在、ということで想像豊かになれる児童書である。
大江健三郎が紹介した本であったような気がする。 -
金大生のための読書案内で展示していた図書です。
▼先生の推薦文はこちら
https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18431
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA84768057 -
弟がはしかにかかり、遠く離れた町の叔母さん夫婦のアパートへ隔離されることになったトム。
ある眠れない夜、裏庭へ続く扉を開けてみるとそこは……
風のにおいや、川の流れる音、古びた鉄の冷たい感触、凍った川をスケートで走るスリルと爽快感。
そして、あの庭園。
ハティにもトムにも気付かれず、私も後ろからついて回っている感覚だったので、私も見たよ!聞いたよ!と本気で思ってる。
アデルには姿を見られたかも…とドキドキしてる。
これを子どもの本だと思っているおとなのひとや、まだ読んでない少年少女がいたら、本当にもったいないです。
だって、ピアスさんも言ってます、
_私たちはみんな、じぶんのなかに子どもをもっているのだ_
きちんと読むのは三度目だけど、今回がいちばん感動しました。すごい余韻…。
家族が寝静まった真夜中に一人で起きていたから、かもしれません。
いや、やっぱりわたし、行って来たんだと思う。あの庭に。
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