- Amazon.co.jp ・本 (88ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001108545
感想・レビュー・書評
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第二次世界大戦終結から四年後に出版されたケストナーの大型絵本です。戦争を始めとする災禍から人間の子どもたちを救うためにはどうしたらよいか、もはや人間には任せておけんと、世界中から動物の代表が集結して大会議を開く物語です。
ウクライナで今日も流れているおびただしい血を思うと、絵本のなかで「かんにんぶくろの緒」が切れた動物たちの気持ちは、(政治家たちや軍人以外の)庶民の多くが共有している想いなのかとも思います。現在良く売れているそうです。
「きょうからきっかり4週間後、動物ビルで会議があるぞ!」
その発端は、ライオンのアーロイスが、象のオスカルとキリンのレーオポルトと一杯やるために、北アフリカのチャド湖のほとりでおちあう、ある金曜の夜でした。驚くべき連絡網と知恵により、まるでかつてのノアの方舟以来の、総ての動物たち(鳥や爬虫類も含む)の代表の大集合が図られたのでした。
同日はケープタウンで世界の首脳たちが87回目の会議のしている真っ最中でした。
会議の大スクリーンにシロクマくんの演説が流れます(←まるで現代のようですね)。あまつさえ、その大迫力にシロクマがクシャミをしたら、会議のメモ用紙が全部飛んでしまう(←まるで未来のようですね)。
「いまあるもっともゆゆしきさまたげをとびこえてください。すなわち、国ぐにの境をとびこえてください」
でも、首脳たちは相手にしません。「お断りします」と直ぐに返事が来る。
動物会議は知恵を絞ります。
「あのおびただしい書類が彼らの分別の妨げになっているのだ」
「あの制服が悪いのだ」
動物会議は、それらをケープタウンの会議から一掃させますが、なんと人類はそんなことでは怯みません。(←ホントか?かなり有効だったと思うんだけどなあ)動物会議は最後の手段に出ます。もちろん武力以外で。それは‥‥。
最後に「おえらいさん」たちが調印した五か条の条約は、とっても素敵で、ホントは紹介したいのだけど、みんなに読んで欲しいので秘密にします。
ケストナー50歳の時に書かれた絵本(絵はヴァルター・トリア、訳は池田香代子)。それから50年後、池田香代子さんは後書きで呟きます。
「50年経った今でも、事態は全く変わっていないことに、本当に嫌になります。戦争、難民、飢饉、それらに無力な国際政治。まるっきり今も同じです。いえ、世界大戦から何も学ばなかったのがこの50年だったのか、と思い知らされて、今の方がより悪い、と思えてきます」それから23年後、さらに私たちは池田さんと同じだ、と呟いてしまいます。
「動物たちは、今日も業を煮やしていることでしょう。でも、いやにならずに踏みとどまる心の力が、私たちにはあることを、この絵本に出てくる動物たちといっしょに確かめたいと思います」。大型絵本版の訳者あとがきでそう書く池田さんに倣うなら、動物たちにまた先を越される前に、人間社会の各々の小さな現場で、倦まず諦めず、アーロイスやオスカルやレーオポルトとなっておちあう時間が大事になってきそうです。
‥‥と、この本を紹介してくれた岩波書店「図書6月号」に倣うなら、わたしたちは「力には力で」と主張する「おえらいさん」たちに、あっと言わせる方法の知恵を、諦めずに出し合いたいと思うのです。
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ブクログレビューを拝見して初めて知った本。
ケストナー作品に絵本があることも知らなかった。
自分が今までに読んだ絵本の中で、最も文字の多い絵本だと思う。
だから、絵本だというのに一気読みできず、数日にわたって読了した。
(常に数冊を並行して読んでいるからだけれども)
1949年にケストナーが書いた本。
1999年に訳者の池田香代子さんが、あとがきで「50年たった今も事態はまったく変わっていない」と書かれている。
そこから更に23年経った現在も、やはり国際政治の事態はまったく変わっていない。
…と愁うだけの自分はなんと無力なことか。
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こぼればなし(『図書』2022年6月号) - 岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/news/n47576.htmlこぼればなし(『図書』2022年6月号) - 岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/news/n47576.html2022/06/02 -
平和と子どもたちの未来を願い、物語を手渡し続ける当店の原点『どうぶつ会議』:わが店のイチオシ本(vol.51 こども冨貴堂) | ほんのひき...平和と子どもたちの未来を願い、物語を手渡し続ける当店の原点『どうぶつ会議』:わが店のイチオシ本(vol.51 こども冨貴堂) | ほんのひきだし
https://hon-hikidashi.jp/bookstore/154538/2022/09/17
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子どもの頃、ケストナー作品は大好きだったのだけど、今作は読みそびれていた。
ケストナーらしいユーモアに溢れている。
自分の利益だけを考え、平和を乱し、子どもたちを傷つける大人への怒りにも。
会議に出席する動物が雄ばかりで奥さんは出発の準備を一生懸命して見送るだけ、というところにはがっかりしたが(時代的に仕方ないところもあるとはいえ)、それ以外は子どもには楽しく、大人には厳しい良い作品だった。
教師に最高の給与を、というのがいいなぁ…ほんとそうあって欲しい。
教育こそ大事だよ…。 -
戦争が終わり、各国の首脳たちは世界平和のための国際会議を重ねていますが、成果があがりません。 大国で戦勝国の人間たちが主導権を握る会議では、何にも決められません。 それを見ていた世界中の動物たち 「だったら、僕たちも会議を開こう!」 と立ち上がった動物たちのスローガンは、ただ一つ〝子どもたちのために〟でした ・・・ 文学をとおしてナチス・ドイツに抵抗したエーリッヒ・ケストナ-(1899-1974)の創作にヴァルタ-・トリア-の絵が奏でた、痛烈に世評を風刺した物語絵本です。
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shifu0523さん、おはようございます。
私は「極端な理想論」ではないと思います。丸山眞男セレクションの感想でも書いた「現実主義の陥穽」...shifu0523さん、おはようございます。
私は「極端な理想論」ではないと思います。丸山眞男セレクションの感想でも書いた「現実主義の陥穽」に、これから改憲論争が起きる時にみんな陥ると思います。理想論は哲学です。それは豊かな読書からしか持てない。自公維の政治家たちはおそらくみんな持っていないものです。2022/07/11 -
kuma0504さん、こんにちは。
「理想論は哲学」とのお言葉、確かにそうですね。
哲学が軽んじられているのも怖ろしいことです。
遅れ...kuma0504さん、こんにちは。
「理想論は哲学」とのお言葉、確かにそうですね。
哲学が軽んじられているのも怖ろしいことです。
遅ればせながら、丸山眞男セレクションの感想を拝読いたしました。
残念ながら、これからますます「現実的」という言葉を恣意的に使用する声が大きくなりそうですが、「否」といえる勇気(そこに勇気がいることがすでに…)を持ちたいです。2022/07/11
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嫌になっても諦めてほしくないというケストナーの思いが動物たちからひしひしと伝わる。
第二次世界大戦直後に書かれた本ではあるが、今だに驚くほど状況は変わっていない。
エーリヒ・ケストナーの作品





