クリスマス人形のねがい (大型絵本)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (39ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001108576

作品紹介・あらすじ

女の子と人形がであうクリスマスの奇跡の物語。

感想・レビュー・書評

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  • クリスマス絵本の第四弾。そして、私にとってはクリスマス絵本のベストワン。
    これまで何人の友に贈ってきたことやら。
    文字数がとても多く、絵本にしてはハードルが高く感じられるが、ストーリーテリングの巧みさが際立っていてあっという間にお話の世界に引き込まれる。

    これは映画「黒水仙」の原作などを手掛けた英国生まれの作家・ルーマー・ゴッデンの文章に、バーバラ・クーニーが挿絵を添えたもの。外国の冬の風景やクリスマスの光景、建物・抑えた人物描写などが素朴で美しい。
    稀代のストーリーテラーと言われたゴッデンの描くクリスマスのお話は「どうなるの?どうなるの?」の連続。
    伏線の張り方の見事さとすべての符牒が合うラストまで、まるで映画のように鮮やかにすすむ。
    最後はもちろん心に灯りがともるような幸福感に包まれ、思わず小さな涙が滲んでしまう。
    ウィットに富んだ文章とすべてのものに注ぐ温かな眼差し。
    登場人物たちのキャラクターの書き分けも上手く、何度読んでも飽きるということがない。
    キリスト教の知識がゼロでもOK。いや、そもそもそんな単語も登場しない。

    これは「ねがいごと」のお話。登場人物たちは、みな何かを強く願っていた。それは何か。
    ショーウィンドの中で、自分を可愛がってくれる女の子の登場をひたすら待っている人形のホリー。赤と緑の衣装はクリスマス以外に似合わない。売れなかったら「おくら入り」かも。他の人形たちから冷たい言葉をかけられても、ホリーは諦めずに願い続ける。

    ところ変わって、孤児院。クリスマス休暇でも預かり手のないアイビーはひとりぼっち。
    ちくちくする胸の痛みをおさえて彼女は言う「おばあちゃんちに行く」(おばあちゃんなんていないのに)そして、孤児院から指示された「幼子の家」には行かず、見知らぬ町の見知らぬ駅で降りてしまう。
    そこで「おばあちゃんち」を探す旅をするのだが、小さな子にはなかなか過酷な道程だ。

    さて、そのアイビーが降りたアップルトンという町にいたのが警察官のジョーンズさん。
    このジョーンズさんの奥さんは、ツリーを飾り付けても何かが足りない思っている。
    そう、一番欲しいのは子ども。それも女の子。ジョーンズさんの奥さんはそれでどこか悲しい。
    これらのお話が同時進行して、偶然が偶然を生み出していく展開の不思議さに眼を見張る。
    ジョーンズさんの奥さんとアイビーの奇跡のような出会いの場面では、いつも胸がじーんとする。

    原題は「The Story of Holly & Ivy」だから、「クリスマス人形のねがい」とは大きく異なる。
    たぶんこの邦題が、訳者の掛川さんの願いだったのだろう。
    「心から強く願えば奇跡は起きる」「諦めずに願い続ければいつかきっと叶う」
    作者も挿絵画家さんもすでに亡くなっているが、このお話のメッセージがすべての子どもたちに届くように、それが私のクリスマスの願いだ。

  • とても面白い話です‼︎

  • 絵本といっても、だいぶ文字は多いです。生きる力と夢見る力の強い女の子のはなし。

  • アイビーは、セント・アグネスという家(はっきり書いてはいないが、孤児院)で暮らす6歳の少女。
    クリスマス・イブだというのに、責任者のミス・シェパードがインフルエンザに罹った妹の看病に出かけるため、少し離れた町にある『幼子の家』に行かなければなりません。
    30人もいる他の子たちはそれそれ、預かってくれる人が見つかったのですが、アイビーだけは預かってくれる人が現れなかったため、ひとり汽車に乗って『幼子の家』に向かわされます。
    が、「あたし、おばあちゃんのとこへ行くんだもん」と、荷物を汽車においたまま、知らない街で降りてしまいます。

    ホリーは箱から出されたばかりのクリスマス人形。
    おもちゃ屋さんのウインドウに飾られますが、結局ホリーを選んでくれる女の子はいませんでした。
    でも、ホリーは心から待っているのです。
    自分を必要としてくれる女の子を。

    ルーマー・ゴッデンって、子どものかなしみ・不安を書かせたら右に出る人はいないと思うの。
    6歳の少女の孤独と、それに負けない強い心に、現実はそんなに甘くないよと思いながらも、ついアイビーの幸運を祈ってしまう。

    ”ときどき、アイビーは胸のおくがからっぽになったような気がして、そのからっぽになったところが、チクチク傷みました。痛くてたまらなくなったら、すかさずなにかいわなくてはなりません。そうでないと、泣いてしまうからです。”

    多分に幸運が味方したとはいえ、アイビーは自分の足で歩いて、自分の力で幸せをつかみ取る。
    求めれば願は通じるというメッセージが込められているとはいえ、ただ待っているわけではないのです。

    そんな過酷な境遇や、不安や悲しみなどを、バーバラ・クーニ―の温かく柔らかい絵が優しく包んでいる。
    アイビーの歩く先は、きっと明るくて暖かい場所である、と。

    ルーマー・ゴッデン×バーバラ・クーニ―、最高です。

  • 原題:The story of Holly and Ivy

    バーバラ・クーニー(1917-2000)の絵で、よりお話があざやかに浮かび上がる

  • 敬愛するゴッデンとクーニーの作品。

  • 愛に包まれた心温まる物語。ねがいは叶うもの!

  • 2013年12月7日

    <THE STORY OF HOLLY & IVY>

  • 原題は「ホリー(ヒイラギ)とアイビー(ツタ)の物語」
    クリスマスイブ、買ってもらうのを待っているおもちゃ達。
    お人形のホリーもそうでしたが売れ残ってしまいます。
    一方、アイビーは6歳の女の子。
    セント・アグネスという大きな家(孤児院?)で暮らしています。
    女の子をもらいたいと思っていたホリー、おばあちゃんが欲しかったアイビー。
    そして子どものいないジョーンズさん夫婦・・・最後に皆それぞれの願いが叶うあたたかい絵本。
    ちょっとうまくいきすぎる気もしますが、クリスマスの奇跡を信じたくなります。

  • 脇知子氏 

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著者プロフィール

ルーマー・ゴッデンRumerGodden1907~1998。英国サセックス州生まれ。父の仕事の関係で、生後六カ月で当時英国領だったインドに移り住む。十二歳のときに英国へもどるが、その後もインドとを行き来して暮らした。一九三五年に作家として活動をはじめ、おとな向けや子ども向けに数々の作品を生み出した。作品は長編小説、短編小説、戯曲、詩など多岐にわたる。日本で紹介されている子どもむけの本に、『人形の家』(岩波書店)、『ねずみ女房』(福音館書店)、『バレエダンサー』(偕成社)、『ディダコイ』(評論社、ウィットブレッド賞)、『ねずみの家』『おすのつぼにすんでいたおばあさん』『帰ってきた船乗り人形』『すももの夏』などがある。

「2019年 『ふしぎなようせい人形』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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