戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ―作者レイ夫妻の長い旅 (大型絵本)

制作 : アラン ドラモンド  Louise Borden  Allan Drummond  福本 友美子 
  • 岩波書店
3.64
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本棚登録 : 55
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (70ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001108873

作品紹介・あらすじ

1940年6月のある朝、H.A.レイとその妻マーガレットはドイツの軍隊が攻めてくる数時間前にパリを脱出した。それも自分で組み立てた自転車に乗って!わずかな荷物のなかにあったジョージの原画が絵本になるのは、翌年アメリカでのこと。ふたりの生い立ちや奇跡の逃避行を、日記や写真、イラストをまじえてたどる大型絵本。

感想・レビュー・書評

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  • 「ひとまねこざる(Curious Geoge)」シリーズは、多くの子供たちに愛されてきた絵本である。
    いたずら好きで知りたがり。あっちこっちで騒動を引き起こす小さな子ザルは、困ったところもあるけれど、どこか憎めない。
    読み手の子供たちには親近感のわく、分身のようなものだったかもしれない。

    「ひとまねこざる」の作者はレイ夫妻である。
    夫妻がユダヤ人であることを知っている人はどのくらいいるだろう。そして彼らが、ナチスの迫害を逃れて、パリから長い長い旅を経て、アメリカに渡ったことを。

    この本の著者ボーデンは自身も児童文学作家である。
    レイ夫妻が戦火を逃れてパリを脱出したことは知っていたが、旅の詳細を知る人は身近にはいなかった。それならば、と、自分で2人の足取りを追う旅に出た。
    2人の残した手紙やノート、写真を調べ、2人を知る人に聞き取りをし、丹念に若き日の夫妻を追い、アメリカに着くまでの2人の姿に迫った。

    本書は絵本仕立てである。
    「ひとまねこざる」をはじめとするレイの絵、当時の写真、夫妻が残したメモや手紙がふんだんに収録される。旅の様子はイラストレーター、ドラモンドの柔らかで軽妙な絵で描き出される。
    絵本ではあるが、字数も多く、かなり大きい子向けとなるだろう。
    戦時の話だが、直接的な怖い描写はないので、小さい頃、「ひとまねこざる」が好きだった子が、戦争について知る初期の1冊としてもよいかもしれない。

    夫のハンスは1906年生まれ。本名はハンス・アウグスト・レイヤースバッハである。妻はマルガレーテ(のちにマーガレット、旧姓はヴァルトシュタイン)でハンスの8つ年下。2人はハンブルグで生まれ育ったが、親しく付き合うようになったのは、活路を求めて渡ったブラジルでのことだった。芸術家として刺激し合うまたとないコンビとなった2人はこの地で結婚する。
    ハンスは仕事で使う名前を、呼びやすく覚えやすいH.A.レイと改める。
    動物好きの2人は、動物園に通い、ペットとしてマーモセットを飼ったこともあった。

    新婚旅行にヨーロッパに出かけた2人は、パリが気に入り、ホテルに居を構える。
    だが戦争の足音は徐々に近づいてくる。
    オランダとベルギーにドイツ軍が侵攻したニュースを聞き、2人はパリからの脱出を計画する。
    周囲は大混乱だった。
    正式に出国するために、さまざまな書類を整えなければならない。
    列車の切符もいる。お金も必要だ。
    2人は奔走する。
    パリを脱出する人々は、自動車や荷馬車、バス、徒歩と、さまざまな手段を使ったが、2人が選んだのは自転車だった。それも近くの自転車店には部品しかなかったため、どうにかこうにか自作した2台の自転車だった。

    雨の中、2人はパリを発つ。南のオルレアン駅から列車に乗り、スペインからポルトガルに抜け、リスボンから海路、ブラジルを経由し、アメリカへと向かうのだ。
    3日3晩乗り続けた自転車の籠には、のちの「ひとまねこざる」となる原稿も入っていた。

    道中、2人は多くの人の親切に助けられ、一方で、生き別れた家族などの多くの悲劇も目にする。
    パリが侵攻されたのは2人がパリを出発した2日後のこと。間一髪の決断だった。

    大勢の人ごみにもまれながら南へと向かう2台の自転車がなかったら、いたずら好きのジョージが皆に愛されることはなかったかもしれない。
    戦時を生き抜いた1組の芸術家のエピソードの背後に、当時の世相や不穏な空気も窺える、なかなかに奥行きのある1冊である。

  • 世界でいちばん有名な子ざる、「おさるのジョージ」。その生みの親であるレイ夫妻はともにユダヤ人の家系に生まれました。夫であるハンスは第一次大戦中、ドイツ軍の兵士でしたが、絵の好きなハンスは戦争も兵士として働くのも嫌でした。その後、仕事仲間であった二人が結婚し、ちょうどジョージの物語の制作に取り組み始めたころ、第二次世界大戦が勃発します。
    その頃、パリで暮らしていた夫婦は戦火を逃れるため、自転車で脱出をはかります。波乱万丈の逃避行の中で、スパイの容疑をかけられた夫婦の危機を救ったのはジョージの原稿でした。無事にアメリカにたどり着き、その1年後に出版されたジョージの物語は世界中で愛される絵本となります。ジョージの誕生の裏に隠された戦争の物語が、豊富なイラストや写真とともに紹介されている本です。

  • 二人の愛情の強さに、感動するわ~

  • (2015-01-24L)

  • 「おさるのジョージ」の作者、レイ夫妻の(主に戦時中の)足跡をたどる絵本。
    なんで絵本なんだろう。
    絵本にしては文字に頼りすぎで、「知る」ために読むには情報が少なすぎる。
    なにも知らない子どもが読むには、この本以外からの知識で補わなければならない部分が多すぎるし、大人が読むには端折りすぎで物足りない。
    大人向きの(大人向きじゃなくてもいいけど)文字で読む本にすればよかったのに。

  • 世界中で愛されている知りたがりの「おさるのジョージ」と言えば、皆さんもご存知でしょう。実は、彼もまたナチスを逃れ、ホロコーストを生き延びたのでした。作者のレイ夫妻は、1940年、ナチス侵攻の直前にパリから脱出します。リュックにつめこまれたわずかな荷物の中に、後に『おさるのジョージ』として出版される物語の原案がありました。夫妻は、自転車に飛び乗り、国境を越えて、ポルトガルへ。さらに海をこえてブラジル、そしてアメリカにたどりつくまで、五ヶ月に及ぶ逃避行が写真やイラストで描かれています。大人もぜひ手にとってみてほしい絵本です。

  • おさるのジョージシリーズで有名なレイ夫妻の足跡をたどった絵本です。
    彼らがユダヤ人であり、戦争を逃れて長い旅をしたのも初めて知りました。
    ナチスの侵攻を逃れて自転車でパリを脱出、スペイン、ポルトガルを抜け、
    海を渡りブラジルへ、そしてニューヨークへ向かう旅はとても厳しいものだったと想像できます。
    ドイツのスパイと疑われて仕事場を調べられたり、汽車で役人に鞄をチェックされた時には
    後に絵本として世に出ることになるいたずらなこざるが救ってくれていたんですね。
    世界中の子どもたちを楽しませる絵本が戦争をくぐりぬけたことは本当によかったと思います。
    著者はレイ夫妻の当時の足跡を丁寧にたどっていて好感が持てます。
    戦時中の歴史を知る上でも貴重な絵本だと思いました。

  • ひとまねこざるジョージの生みの親、レイ夫妻の戦時中を追った絵本。
    ジョージに助けられるシーンは胸がギュッとなりました。
    戦争はいややなあ。改めて思いました。

  • NDC:289

  • 2007/02/20

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