はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)

制作 : 上田 真而子  佐藤 真理子  Michael Ende 
  • 岩波書店 (1982年6月7日発売)
4.21
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  • レビュー :849
  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001109818

はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)の感想・レビュー・書評

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  • Die unendliche Geschichte(1979年、独)。
    子供だけでなく、大人でも一気読み確実のおもしろさ。児童向けファンタジーの最高峰…と言ったら言い過ぎかもしれないが、現実世界に生きる少年少女が異世界に迷い込んで繰り広げる冒険譚としては、この作品がひとつの総括と言えるのではないだろうか。この物語がビルドゥングスロマンの本家本元ドイツで生まれたというのは、決して偶然ではないのだろう。

    この作品はかつて「The Neverending Story」というタイトルで映画化されている。透きとおるようなテノールで歌われる躍動感あふれる主題歌と、主人公(アトレーユ)役のノア・ハザウェイ少年の美貌などが話題になり、明朗快活な冒険活劇として人気を博したと記憶している。しかし実は、映画化されたのは原作の前半だけで、後半は完全に省略されている。ところが、この物語の本当のテーマは原作の後半にこそ存在する。映画化された前半部分は、後半から始動する本当の冒険譚のための序曲にすぎない。この物語の真の凄みは、原作の後半を読まなければ決して理解できないのだ。

    前半は、主人公のひとり(アトレーユ)が活躍する王道ファンタジーであり、それなりに面白いが型どおりの展開である。ところが、真ん中あたりから急に先の展開が予測不能になる。「現実世界」「作品世界」「作中作の世界」の境界が不明瞭となり、ひとつに溶けあって、読者はもうひとりの主人公(バスチアン)とともに、「作中作の世界(ファンタージエン)」に否応なく引き込まれてゆく。

    そして後半は、「児童文学でこうくるか」と唸ってしまうようなダークな展開になる。異世界で絶大な権力を手に入れたバスチアンは次第に増長してゆき、遂には親友のアトレーユとも決裂した挙句、瀕死の重傷を負わせて粛清してしまう。前半の段階で、読者はバスチアンに自己投影するよう周到に仕向けられているので、バスチアンが過ちを犯すたびに自分の中にあるエゴを直視させられる感じがして、大人であっても読むのが辛くなる。しかし、反省と後悔と大きな試練、そして友情の復活を経て、最終的にはハッピーエンドで物語は終わる。どん底に近い泥沼の状態から、残り少ない頁数で、未来への希望に満ちたラストにもっていく技量もさすがである。

    エンデは親日家としても知られている。「はてしない物語」の執筆前には日本を訪れて、禅僧と対談をしたらしい。そのせいか、ところどころに日本的な思想が見えかくれしていて面白い。一方、母性愛と成熟した大人の愛をきっちり別物として捉えている所などは、やはり西洋的だと思う。(日本人は母性愛を至高のものと思いたがる傾向があるから、日本人がこの手の物語を書いたら、多分アイゥオーラおばさまの所で冒険は終了し、主人公の成長物語としては不完全燃焼で終わってしまうだろう。)

    最後に、本の装丁について一言。「はてしない物語」は岩波少年文庫にも収められているが、是非とも布製装丁のハードカバーで読むことをお薦めしたい。というのも、この装丁自体が物語の内容と密接にリンクしているので、ハードカバーで読まないと面白味が半減してしまうからである。子供たちに本の世界にどっぷり浸かってもらえるようにと、エンデが自ら発案した装丁だという。「すべての子供に夢と勇気を」というエンデの意気込みが、この美しい本には詰まっているような気がする。「子供に買ってあげたいが、文庫にするかハードカバーにするか迷っている」という親御さんもいると思うが、ここは奮発してハードカバーの方を買ってあげてほしい。エンデの情熱と親御さんの思いが子供さんに通じた時、きっとこの本は、子供さんにとって一生の宝物となるだろう。

  • 最初に言っておく。
    世界に存在するすべての作品が、文庫化だろうが、電子書籍化しようが全く構わない。
    だけどこの本だけは、ハードカバーであってほしい。
    この本はずっしりとした、ハードカバーでなければならない!

    読書の楽しみを幼少期の私に与えた偉大な本。
    最初はとにかくエンデの作るファンタジー世界に飛び込んで、無邪気に楽しんでいるのだけど、中盤であるトリックが明らかになり、衝撃でしばらく気がヘンになったみたいだった、興奮した。
    読書の楽しみとは、つまりこの本のことだと私は信じて疑わない。

    この本を読んで、しばらく(3年ぐらい)海外ファンタジーしかよめなくて泣いた。これと似た体験がしたくて、探してばかりいた。それぐらい衝撃の強い本。

  • 10数年ぶりに再読し、ものすごい作品だなぁ、と感動してしまいました。
    この本は数えきれないほどの人が読んでいる名作なのに、読んでいる間はこの本も、それを読んでいる自分も特別な存在であるような、バスチアンの冒険を読んでいるのは世界で自分だけのような気がしました。そういう幻想を抱かせてくれる作品は本当にすごい。

    装丁も素晴らしい。読者がこの幻想に入り込むことがエンデの狙いなら、装丁はこれにする他ないですね。

  • 小学校の時に読了。
    久しぶりに読み直したくなって、図書館でレンタル。
    20代になっても、この物語を読んだ時のドキドキは色あせないものですね。
    次に何が起きるのか、バスチアンと共にドキドキハラハラしながら次へ次へとページをめくってしまう。
    小学校の時も、遅くまで図書館に残って読んでいたことを思い出しました。
    読み始めるとそこから動けなくなるような魔力があったように思います(笑)

    物語前半の主人公・アトレーユから話を引き継ぎバスチアンが話の中心へと変わったとき、バスチアンの望む願いの(言葉は悪いが)質の低さが恥ずかしく、なんだか自分を見ているようで、いたたまれない気持ちになり、なかなか読む手が進みませんでした。
    人の本質、願いの果ての果てはこういうところにあるのかもしれないなと思います。

    この本は、やはり大多数の人が進めているのと同じように、大判のハードカバーの本で読むべきだと。
    上下巻にわかれたソフトカバーもコンパクトでいいのかもしれないですが、あかがね色のクロス張り、二色刷りになっていてこそ、この本を読み始めて魔法にかかるのではないかと思います。

    今読んでみると、ファンタジーの世界を作るもの(作者側)と、読み手がファンタジーを忘れてしまう現実や、作中のあらなんかも見つかって新しい発見でした。

    そして気が付いたことがページ数が全て緑で刷られているということ。
    現実世界(バスチアンがいるところ)はあかがね色、ファンタ―ジエン世界(空想の世界)は緑色で分けられて書かれています。
    岩波書店がここまで気を回したのかは定かではないですが、バスチアンが本を読んでいる現実世界含めて空想の世界含めてこの物語はフィクションである、と暗に言われているような感じがしました。
    「果てしない物語を読むバスチアンを読む読者(自分)」さらにもしかするとこれを読んでいる誰かがいたりして?!なんて気分にもなったり。
    それこそ「はてしない物語」です。

    ファンタジー小説の王道、またいつか読み返したい作品です。

  • 本を読んで夢中になってしまい、つい本の世界にはいりこんでしまう。そんな経験は誰しもあると思います。もし、本当に本の世界に入ってしまったら…。そんな夢が詰まった素晴らしい本だと思います。「おすすめは?」と聞かれたら、必ずこの本を紹介します。これは私が1番好きな本です。

  • 「本が好きな子供」のうちに読めて、本当に良かったと思える作品。
    いろんな物を読み慣れてしまった大人では味わえない感覚がきっとあったはず。

  • 随分と前に学生時代の友人から勧められた本です。厚いあかがね色の本、物語の中でバスチアンが古本屋で手にするものと同じ。読み進めるうちに、物語の中のバスチアンが”僕のことだ!”と叫ぶと同じように、現実の読者たちも、物語の中に入っていくことでしょう。装丁、挿絵、紙面の文字の色と、楽しさ、わくわくいっぱいの本でした。こんな本に巡り合って、子供たちは空想の世界に飛び込んでいくのでしょう。

  • 小さい頃、母の本棚に大事そうにしまってあった本。
    いつか読みたいと思っていたのに、いつの間にか忘れてしまっていました。

    お話としてもキラキラしていて素敵です。
    きっと子供でも楽しんで読む事が出来ます。
    そしてこの本の表紙も作りも、物語の一部です。
    単行本で読む事を是非オススメします。

    余談ですが、母は私を妊娠中にこの本を読んでいたそうです。
    そして二十数年たった今、お腹に子供を授かった私が読みました。

    何年も続いて行く物語。
    お腹の子が出てきたら、また一緒に読んでみようとニヤニヤ想像しています。

  • でぶでX脚でさえないいじめられっこのバスチアン。ちょっとした出来心で古本屋の店主が読んでいたあかがね色の表紙で二匹の蛇が尻尾を噛みあっている表紙の不思議な本を盗んでしまう。学校をさぼって物語を読みふけるバスチアン。彼がファンタージエンに行くまでのとまどいやときめきは小学生の頃図書室でいつまでも本を読んでいた時の気持ちを思い出した。早く読まないと閉館しちゃうと焦りつつもじっくりよみたいという気持ちに勝てなかったり。
    ファンタージエンに入ってからのバスチアンの行動は目に余るものがあって、こういう成功者の転落みたいなものをいろいろな媒体を通したり(または身近で)目にしているから読んでいて苦しかった。何より、「自分を忘れる」というのはとても悲しいことなんだと思った。それまでの自分がどんな自分であっても、それを忘れてしまっては人の気持ちなってものを考えたり社会(ファンタージエン)のために冷静になって善い選択をするなんてできない。一周回って「ありのままの自分であることがうれしい」とバスチアンが思うことができて本当にうれしい。そう思うことは、どんなに立派な大人であってもなかなか難しいことだ。

  • 本の外の世界と本の中の世界とで文字が色分けされてるのが面白い。
    あと本の装飾が本の中に出てくる『はてしない物語』と一緒というのが凝っててが良い。

    最初は自信が無かった主人公が本の中に入って力を手にしてしまってだんだん傲慢になっていく様が読んでいて考えさせられた。
    案の定そのツケが後で来たときにやっぱりって感じ。

    子供のときに読んでおけば良かったと思う。

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