はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)

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  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001109818

感想・レビュー・書評

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  • Die unendliche Geschichte(1979年、独)。
    子供だけでなく、大人でも一気読み確実のおもしろさ。児童向けファンタジーの最高峰…と言ったら言い過ぎかもしれないが、現実世界に生きる少年少女が異世界に迷い込んで繰り広げる冒険譚としては、この作品がひとつの総括と言えるのではないだろうか。この物語がビルドゥングスロマンの本家本元ドイツで生まれたというのは、決して偶然ではないのだろう。

    この作品はかつて「The Neverending Story」というタイトルで映画化されている。透きとおるようなテノールで歌われる躍動感あふれる主題歌と、主人公(アトレーユ)役のノア・ハザウェイ少年の美貌などが話題になり、明朗快活な冒険活劇として人気を博したと記憶している。しかし実は、映画化されたのは原作の前半だけで、後半は完全に省略されている。ところが、この物語の本当のテーマは原作の後半にこそ存在する。映画化された前半部分は、後半から始動する本当の冒険譚のための序曲にすぎない。この物語の真の凄みは、原作の後半を読まなければ決して理解できないのだ。

    前半は、主人公のひとり(アトレーユ)が活躍する王道ファンタジーであり、それなりに面白いが型どおりの展開である。ところが、真ん中あたりから急に先の展開が予測不能になる。「現実世界」「作品世界」「作中作の世界」の境界が不明瞭となり、ひとつに溶けあって、読者はもうひとりの主人公(バスチアン)とともに、「作中作の世界(ファンタージエン)」に否応なく引き込まれてゆく。

    そして後半は、「児童文学でこうくるか」と唸ってしまうようなダークな展開になる。異世界で絶大な権力を手に入れたバスチアンは次第に増長してゆき、遂には親友のアトレーユとも決裂した挙句、瀕死の重傷を負わせて粛清してしまう。前半の段階で、読者はバスチアンに自己投影するよう周到に仕向けられているので、バスチアンが過ちを犯すたびに自分の中にあるエゴを直視させられる感じがして、大人であっても読むのが辛くなる。しかし、反省と後悔と大きな試練、そして友情の復活を経て、最終的にはハッピーエンドで物語は終わる。どん底に近い泥沼の状態から、残り少ない頁数で、未来への希望に満ちたラストにもっていく技量もさすがである。

    エンデは親日家としても知られている。「はてしない物語」の執筆前には日本を訪れて、禅僧と対談をしたらしい。そのせいか、ところどころに日本的な思想が見えかくれしていて面白い。一方、母性愛と成熟した大人の愛をきっちり別物として捉えている所などは、やはり西洋的だと思う。(日本人は母性愛を至高のものと思いたがる傾向があるから、日本人がこの手の物語を書いたら、多分アイゥオーラおばさまの所で冒険は終了し、主人公の成長物語としては不完全燃焼で終わってしまうだろう。)

    最後に、本の装丁について一言。「はてしない物語」は岩波少年文庫にも収められているが、是非とも布製装丁のハードカバーで読むことをお薦めしたい。というのも、この装丁自体が物語の内容と密接にリンクしているので、ハードカバーで読まないと面白味が半減してしまうからである。子供たちに本の世界にどっぷり浸かってもらえるようにと、エンデが自ら発案した装丁だという。「すべての子供に夢と勇気を」というエンデの意気込みが、この美しい本には詰まっているような気がする。「子供に買ってあげたいが、文庫にするかハードカバーにするか迷っている」という親御さんもいると思うが、ここは奮発してハードカバーの方を買ってあげてほしい。エンデの情熱と親御さんの思いが子供さんに通じた時、きっとこの本は、子供さんにとって一生の宝物となるだろう。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「この本を楽しむために最高のシチュエーション」
      そうですねぇ~「読んだらダメ!」と言いつつ、チョッと隠してあるようで、目に入る場所に置く訳で...
      「この本を楽しむために最高のシチュエーション」
      そうですねぇ~「読んだらダメ!」と言いつつ、チョッと隠してあるようで、目に入る場所に置く訳ですね。。。でも隠れて読んで目を悪くしないようご配慮ください。
      2012/03/05
    • ももいろのきりんさん
      はじめまして。ももいろのきりんと申します☺︎ 他のサイトが閉鎖になりまして、引っ越してきたばかりです。今まで出会ったたくさんのステキなレビュ...
      はじめまして。ももいろのきりんと申します☺︎ 他のサイトが閉鎖になりまして、引っ越してきたばかりです。今まで出会ったたくさんのステキなレビュアーさんのレビューが読めなくなり落ち込んでいたのですが、佐藤史緒さんのレビューを拝見して感動して思わずコメントしてしまいました!はてしない物語は大好きで、さらにハードカバーでページを捲る幸せを感じながら読んだので

      >子供たちに本の世界にどっぷり浸かってもらえるようにと、エンデが自ら発案した装丁だという。

      これ、びっくりでした。私大人でしたがどっぷり浸かったので。装丁も内容も本当に素晴らしくて!

      他のレビューも少しずつ読まさせていただきます☺︎そして良い本に出会っていきたい。どうぞよろしくお願いします。
      2022/06/30
    • 佐藤史緒さん
      ももいろのきりんさん、はじめまして!
      レスが遅くなり申し訳ございませんでした。
      ご覧のとおりのボッチ系気まぐれブログでして、数週間に一度...
      ももいろのきりんさん、はじめまして!
      レスが遅くなり申し訳ございませんでした。
      ご覧のとおりのボッチ系気まぐれブログでして、数週間に一度くらいのペースで更新したりしなかったりですが、気長にお付き合いいただけると幸いです。

      ももいろのきりんさんの本棚も少しずつのぞかせていただきますね。
      今後ともよろしくお願いします
      (´∀`*)
      2022/07/11
  • ミヒャエル・エンデ 
    「モモ」を読んでファンタジー小説に興味が湧き続けて2冊目読了。
    映画「ネバーエンディングストーリー」は見ていませんが、広告等で登場してくるキャラクターをイメージしながらとても面白く空想に浸り読むことが出来ました。

    前半はファンタージエン国を虚無の侵蝕から救う為、勇姿に選ばれたアトレーユがアウリンというお守りを託され、白い幸いの龍フッフールと共に、幼ごころの君(女王)を助ける旅。
    ハラハラドキドキ!バスチアンの本にのめり込んでいく気持ちがわかる。
    読んでいくうちに???この本の内容って…
    後半はバスチアンがメイン。思い通りに望みが叶い置かれた立場の状況で少しずつ人格が変化していく様がわかりやすく伝わってきました。
    ラストは涙が潤みました(家族のつながりや人情に弱い)



  • 好きなYouTuberさん(QのTさん)が、この本がきっかけで読書を好きになった!と熱弁されていたので、読まずにはいられませんでした。
    本屋の児童書コーナーに入るのはとても新鮮で、思い出深い絵本なんかも沢山あり、かなり興奮してしまいました。初めて、"エモい"という感情が分かったかもしれません(笑)

    家庭や学校で孤独を感じ、現実から逃げ出したい気持ちを抱えていた少年・バスチアンが、とある物語を読み進めていくうちに、その本の世界へと入り込んでしまいます。
    この本の世界、ファンタージエンという世界なんですが、この世界観がまた本当に素晴らしいです(私の語彙力では表しきれない)。

    例えば、
    青銅の鐘のような声を持ち、真珠貝色の鱗が美しい幸いの龍フッフールや、
    色の砂漠、ゴアプの変化に合わせて、自身の体の色も変化するグラオーグラマーンというライオン。
    銀以外のものをみな溶かしてしまうという湖、ムーフー。その湖のまん中には銀の都アマルガントがあり、家や舟など、全てが銀から作られている様は、訪れる人をうっとりさせる…。

    このように本書には、想像すらしたこともないような生き物、植物、風景、建築物などが数えきれないほどたくさん登場します。

    この本自体が、
    「読んでいる本のなかへ入ってしまう物語」
    なのですが、
    私自身も、バスチアンと共に壮大なファンタジーの世界に入り込んでしまったかのような感覚に陥り、次はどんな冒険が待っているのかとワクワクさせられました。

    いくつになっても、こんなにワクワク感を与えてくれる物語に出会えるということが、とても幸せだなぁと思います。
    本を読むって、最高の娯楽ですよね。
    もっともっと本が読みたい!と思わせてくれました。

  • えっ、これって児童書なんだと思ったのが、最初の正直な気持ち。ネバーエンディングストーリーは、幼い頃に観たが、確かファルコンだったか、大きな白い竜に跨がった少年の記憶しかないし、物語の内容で思い返すこともなかった。

    まあ、私が子供の頃に読んでいれば、アトレーユやバスチアンが活躍する、展開の読めない、波乱万丈の冒険ファンタジー小説として、面白く読めるのも確かであり、終わり方も感動的だ。

    しかし、これが大人になって読むと、バスチアンの冒険が、そのまま人間の人生の足跡を辿っているかのように感じられて、時折、空恐ろしくなってくる感覚も味わったような気分になったのは、作家の「ミヒャエル・エンデ」が、人間というものをよく知っているのではないかという、不信感にも近い、怖さだった。ただ、これは逆に言うと、人生の指南書や哲学書としても捉えられるということなのだが。

    ざっくりしたあらすじを書くと、小柄でぽっちゃり体型の、「バスチアン」が読んでいるのが、私が今感想を書いている、「はてしない物語」で、その中の異世界、「ファンタージエン」の「幼ごころの君」の名前を付けたことで、自分の望みをファンタージエンで叶えることができるようになる。ちなみに、この間の段取りは、ファンタージエンの若者「アトレーユ」と白竜「フッフール」がしていて、バスチアンとアトレーユは友達になる。

    そして、バスチアンは様々な望みを叶えていきながら、次第に、負の欲望へと向かっていき・・・といった感じで、バスチアンが調子に乗っているところは、やや中弛みしかけたが、その後の展開には、すっかり夢中になり、ページを捲る手が止められなかった。そうなったのは、読んでいるうちに、これって私の人生なのではないかと思ったからだ。

    人の望みというのは止めどがなく、一つ叶えば、次の望みと、本当にきりが無い。この物語がすごいと思ったのは、人が様々な望みを満たされると、最後にどんな望みをもつのかを、理解しているところにある。それはあまりに恐ろしいもので、エンデがドイツの作家というのも、あるのかもしれない。そして、それに対するリスク管理が当然のように用意されていて、知らないのは、望みを叶えようとしている者。その仕組みを知ったときの恐怖は、自業自得という言葉も浮かんだが、バスチアンにしても、最初は純粋な気持ちから始まっているだけに、やるせない。しかし、人生ってそういうものだという納得もさせられる。

    更に、その後の展開で、そこからのバスチアンの冒険が、傷つきながらも自分を見つめ直しつつ、次第に考え方や望みが変わっていく丁寧な描写に圧巻の一言。人生でいうところの、大人になってからの自分を、もう一度見つめ直す時期を思わせられて、人って、こうして過去を見つめながら、ちゃんと自らの人生を見出すことができるのだなと思えたことは、私にとって、すごく励みになった。

    読み終わって改めて思ったのは、人生とはこういうものなのかもしれないということ。やはり最初から、なんでも分かる人はいないし、失敗しても、取り返せる。すごく辛いけどね。邪な気持ちだって人間は持っていて当然。それでも大切なのは、自分らしく生きることの悦びだということを教えてくれた。

    ちなみに、バスチアン、星五の評価は、アトレーユとフッフールのおかげだから、それだけは理解しとくように。バスチアン、まったく君というやつは本当に・・ただ、いちばん共感したのはバスチアンなんだけどね。もう一つのいちばんは、アトレーユとフッフールの感動。雪原の、一枚の絵になるような、あの美しいワンシーンには。

  • はてしない物語。ネバーエンディングストーリー。
    映画の内容もうろ覚えだったが、所々で断片的に思い出す。

    盗んだ本から始まる物語。ファンタジーの世界へようこそ、という感じ。

    力に魅せられ、大切なものを失う。
    それは失ってから気付く。

    これから読む方はぜひ枕元に置いて、寝る前に読んで欲しい。きっとおもしろい夢を見ることができる。

    読了。

  • 中学生の頃にハードカバー版で読んだ本。
    今でもたまに思い出してパラッと触れたくなる。
    「読者が物語の中へ入って冒険する」感覚、当時没頭して読んだ記憶がある。

  • もし本当にファンタージエンと人間の国を行き来できた子どもがいたとして、ファンタージエンでの出来事を話してくれたときに、「くだらん」とか「どうせ夢だろ」とか言うつもりはもともとなかったけど、「忙しいから後にして」って言っちゃうかもしれない。
    バスチアンの父や古本屋のオヤジの対応にはハッとさせられるものがあった。私はバスチアンの父と同じくらいか、あるいはそれ以上の年齢になってしまったけど、まだ古本屋のオヤジよりは若いはず。間に合ってよかった。

    冒険物語というよりは文化人類学のフィールドワークってこんな感じかなと思ったり、ドイツで1979年に発行されてから3年で日本で発行した翻訳者、世界観を見事に再現している装丁や印刷会社の仕事ぶり…やっぱ岩波すごー、さすが広辞苑の会社…と思ったりしたのは、大人になってから読んだ気づきだったと思う。
    グラオグラマーンのセリフに、転職を思いとどまったりもした。大人の心にも響くセリフの数々。恐るべし、ファンタジー。大人もファンタジー読んでいいと思う。当たり前なんだけど、それを再認識。

    重いので通勤のお供にできず、家でちょこちょこ時間を作っては読んでいて、1ヶ月かかってしまったけど、やっぱり文庫版にしなくて大正解だった。この本はどんなに重くてもハードカバーじゃないと意味がない。「あかがね色」といい、蛇の紋様といい、文字の二色刷りといい、物語そのものを再現していて、もう特別感がハンパない。

    この本を今更読もうと思ったきっかけは、先月積読解消で読んだ雑誌『&Premium2022.10月号』にあった「まだ読んでいなかった児童文学の名作を読んでみた」というコーナー。
    かつて姉の本棚にあった『はてしない物語』のずっしりとした重みや、絹張りの手触りはすぐに蘇ってきたものの、どんな話だったか思い出せない…あらすじを読んでもピンとこない。ということは、読んでいなかったんじゃないか。もしかしたら途中で挫折したのかも。

    他にも読みたい本はたくさんあって、正直こんなことをしている場合じゃない…と思いつつ、どうしても気になる。そうして図書館から取り寄せた。読み終わった今から考えると、ファンタージエンから呼ばれた…ということにしておこう。

    ただ、残念ながら図書館はケースがついてないし、ビニールのカバーがかかっていて質感を存分には楽しめない…。でも、中の装画も素晴らしいし、これはもう芸術品!と読む前から感動。子どもたちも読むかもしれないし、そのうち買いだな、と思っている。

    ちなみに、芸術品という感想ついでに、中学生のときに取り組んだ「読書感想画コンクール」のことも思い出したりした。友人がミヒャエル・エンデの作品で何かの賞をもらっていたので、「なんの本だったっけ?」と連絡をとってみたら「『モモ』だったよ」とのこと。『はてしない物語』を感想画にするとしたら、絵巻か壁画になっちゃうよねとか、児童文学の話にも花が咲きまくって、めちゃくちゃ楽しい時間を過ごせた。これもファンタージエンの魔法かも。

    映画の『ネバーエンディングストーリー』も見たことはないけど、見てしまうと自分の中の世界観が崩れそうなので、やっぱり本は本として自分の中で大事にしたい。

  • 「本には何かしらの教訓があるから」と言わんばかりに小中高では読書感想文を求められた。
    もし本書のそれを書くよう言われたら、きっと当時の自分は一生かかってもテーマについて考えたがるだろうし、気持ちが湧き上がっても共有せず大切にしまっておきたがると思う。

    児童書・ジュニア書の類で見ていたけど、一気読みができず立ち止まってばかりいた。
    「自分がしたいことをどんどんやる!」という標榜は一見夢のようで私も憧れる。でもそれらはがむしゃらに実現していけば良いってもんなんかな。

    「自分には何もない」と自信喪失していた主人公が数ある望みを叶えていくにつれて空虚な存在に近づいていくのが妙に現実味あって心底ゾッとした。
    より不完全な自分を忘れ去り、全速前進したくなる心境は痛いほどよく分かるし何度も味わってきた。

    望みを叶えようと躍起になることで、知らず知らずのうちに自分のバックグラウンドさえも忘れたり無かったことにしていたのでは?と作者は問いかける。

    教訓と思しき教訓は拾えた気がするけど、望みを叶えることよりもいかなる時もあるがままの自分を愛し抜くことの方が一生かかっても難しい課題かもしれないと今の自分は思っている。

  • 小学生の頃に一度読み、大人になって2度目を読みました。
    再び読むと、何となく覚えていた内容とは、また違った気づきや感じ方がありました。
    大人になってファンタジーからは離れてしまっていたけれど、またその素晴らしさを再確認し、子供だから大人だからこの本、と決めつけずにあらゆる本を読んでみたいと感じました。
    おすすめしたい1冊です。

  • いつか読もうと思っていた本をやっと読了。
    生命の水の湧き出る泉へ通じる道なら、
    どれも結局は正しい道。
    大きな回り道をしたとしても。

    知らない物は怖いから、今いる所に止まろうとする。
    変わる事には勇気が必要。
    勇気を出して踏み出しても、
    動かなければ良かったと後悔に押し潰されるかも。
    でも変わる勇気を持たなくちゃ。
    半世紀以上を生きたおばさんにも響いた物語。

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