マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫 2084)

制作 : セルジオ・トファーノ  安藤 美紀夫 
  • 岩波書店
3.71
  • (1)
  • (3)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 16
レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001120844

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 「へのへのもへじ文庫」で借りてきた本を、こないだ休みの日に布団でうつらうつらしながら読む。

    主人公は、ズバーブ商会で人夫として働くマルコヴァルドさん。包みや木箱をあげたりおろしたりの仕事は、「みんなからはあまりみとめられない力仕事」(p.17)。8時間労働にくわえて、超過勤務。うちへ帰れば、妻とは、何をしゃべっても、すぐ口げんかになったり、借金の話になったりする。天井が低くて、暑苦しいへやに、家族5人が一緒に寝ている生活。三度の食事もろくろく食べられず、すきっぱらをかかえていたりする。

    この本には、イタリアの大都会のど真ん中に住みながら、四季のうつりかわりに敏感なマルコヴァルドさんの話が、春夏秋冬×5だけ入っている。なによりマルコヴァルドさんが飄々としていて、周りからちょっとズレて浮いていたりして、そんなところに私はなんとも親近感をおぼえたりする。

    マルコヴァルドさんは、ある日なにかに気づく。それは、都会の大通りの並木のまわりに生えた小さなキノコだったり、夜のしずけさの中で聞こえてくる音だったり、会社の植木のことだったり、ひまつぶしにネコについていって見えてきた世界だったり。

    そうして気づいたなにかを追いかけていくマルコヴァルドさんの話は、そっちへいくか!と、ちょっと意表を突かれたりする。そこがおかしい。

    マルコヴァルドの話には貧乏とか貧困の問題もみえる。都会や文明や金持ちへの皮肉もある。

    ある冬には、マルコヴァルドさんの家には薪がひとつもなくなってしまう。家族みんなオーバーを着て、ストーブの残り火が小さくなっていくのを見ている。みんなの口からは、小さな白い雲がふわふわとはきだされる。マルコヴァルドさんは、上着とシャツの間に新聞紙を4、5枚はさみ、オーバーの下に長いのこぎりを隠して、「薪を探しにいってくる」と夜の闇へ出ていくのだ。

    またある冬には、マルコヴァルドさんは、家族の者を気晴らしに町へ連れて出る。
    ▼でも、おかねがないので、この家族の気ばらしは、ほかの人たちがおかねを使うのをみることでした。だいたい、おかねなんてものは、たくさん流通すればするほど、それをもつのぞみのない人が多くなるしくみです。…

     マルコヴァルドさんの給料はごくわずかなのに、家族は多く、月賦や借金をはらわねばならないので、もらうとすぐ、かけ足でどこかへいってしまいました。それにしても、とにかく、ことにスーパー・マーケットをさんぽするようなときには、いつも、さいふのひもをしっかりにぎっていなければなりません。(pp.180-181)

    児童文学の範疇にケナゲな子どもが主人公の話はたくさんあるが、なんだかうすぼんやりしたようなおっさんが主人公の話は、あまりない気がする。訳者の安藤美紀夫は「この作品は、カルヴィーノが特に児童文学として意識して書いたものではないだろう」(p.260)と書いているが、この本は「子どものための本」のシリーズの一冊でもあるという。

    カルヴィーノには、イタリア民話や大人向けの小説もあるというので、またなんか読んでみたい(へのへのもへじ文庫にあるかな…)。

    (6/27了)

全1件中 1 - 1件を表示

カルヴィーノの作品

ツイートする