水の子 陸の子のためのおとぎばなし (岩波少年文庫 2086)

  • 岩波書店 (1979年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784001120868

感想・レビュー・書評

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  • 『不思議の国のアリス』の2年前に、よく似た構造を持つもう一つの傑作が生まれていました。それがチャールズ・キングズリーの『水の子』です。

    両作品に共通するのは、まず「落下」という劇的な転機です。アリスがウサギ穴に落ちるように、煙突掃除夫のトムは川に落ちて溺れ死にます。しかし、死は終わりではありません。トムは「水の子」として生まれ変わり、まったく新しい水中世界での冒険が始まります。

    アリスが不思議の国で出会う帽子屋やチェシャ猫のように、トムも水中で奇妙な生き物たちに出会います。しかし、キングズリーの想像力は海洋生物学の知識と結びついて、より豊かで具体的な世界を作り上げています。トムが出会うのは、おしゃべりする魚たちや、哲学的な会話を繰り広げるエビ、そして時には厳しく時には優しいフェアリーたち。彼らとの対話は、アリスが体験する論理の転倒とは違って、自然の摂理と道徳的成長を巧みに織り交ぜた、深い学びの体験なのです。

    『不思議の国のアリス』の狂ったお茶会での意味不明な会話や、女王の理不尽な裁判の場面のように、『水の子』でも、大人社会の偽善や不条理を鋭く突く場面が数多く登場します。

    ただし、『水の子』の社会批判はより生々しく、より切実です。トムが経験するのは、ヴィクトリア朝時代の実在した児童労働の現実そのものだからです。狭い煙突を這い上がり、煤にまみれ、咳き込みながら働く少年たち。キングズリーは牧師として、また社会改革者として、こうした子供たちの窮状を間近で見てきました。作品の前半では、その過酷さが容赦なく描写されます。しかし、それがあるからこそ、トムが水の子として得る自由と清らかさが、単なるファンタジーを超えた救済の物語として胸に響くのです。これらが水中世界では全く違った姿で現れ、トムは新しい視点からそれらを見つめ直すことになります。


    特に魅力的なのは、キングズリーが当時最新の進化論を物語に取り入れた点です。トムの変身は突然の魔法ではなく、環境に適応するための自然な変化として描かれます。鰓が発達し、水中での生活に慣れていく過程は、まるで生物学の教科書を読んでいるような科学的説得力があります。しかし同時に、これは魂の進化の物語でもあります。汚れた煙突から清らかな水へ、束縛された労働から自由な遊泳へ、そして最終的には精神的な完成へと向かう壮大な成長譚なのです。

    『不思議の国のアリス』の言葉遊びが好きな人なら、キングズリーの造語センスにも驚くはずです。「Do as you would be done by夫人」(人にしてもらいたいようにしなさい夫人)のような、道徳的教訓を人格化したキャラクター名は、キャロルのナンセンス詩に匹敵する言語実験の面白さがあります。

    『水の子』は『不思議の国のアリス』の忘れられた双子とも言える作品です。煤にまみれた少年が透明で美しい水の子へと変身する瞬間、それは文学史上最も美しい変身の一つかもしれません。

  • イギリスの児童文学は文化の宝箱だ。さりげない描写が時代を語る。煤まみれに汚れ切った煙突掃除の少年。母は亡く父は流刑囚でオーストラリアに。乱暴者の親方に酷使される孤児は清らかな流れに入って水の子に変身する。が、身に着いたさもしさはおいそれとは変わらず、心根を直すための修業が待っている。当時の上流の子弟もやられたような鞭によるお仕置きでないのは斬新。まだ途中なのだけれど、この子、死んでいるのよね? 熱を出したお嬢さんも死んでいるのかしら。これで結末に謎が解けたら拍手喝采なのだが、さてどうなるのかな。

  • なんかちよっと、メーテルリンクの『青い鳥』っぽく感じた。

  • う~ん、これは正直辛かった・・・・・。  その辛さは切なくて・・・・とか、悲しくて・・・・とかといった物語の登場人物への感情移入から出てくる辛さではなくて、とにかく読み通すのに苦痛を伴ったという辛さ・・・・だったんですよね~。  このブログで「岩波少年文庫全作品制覇!」という目標を掲げてさえいなかったら、恐らく途中で「や~めた!!」と放り出してしまっていただろうと思います ^^;  最初のうちは期待しながら読み始めたのですよ。  みなしごで煙突掃除をしている可愛そうな少年な~んていう人物造詣は結構昔なじみで KiKi には懐かしいものだし、「水の子」というタイトルからは「水の精」みたいな連想が湧いてくるわけで、そういう世界観の物語は嫌いじゃない KiKi のことですから(笑)。  でもね、この本はぎゅっとまとめてみるとそういう世界観であることに違いはないんだけど、脱線が多すぎるんですよ。  だから物語にのめりこもうとする度に、待ったをかけられちゃうんですよ。  

    その脱線の種類がこれまた KiKi にとっては苦痛の種で、1つはいかにもキリスト教的なお説教話。  そしてもう1つは話の大筋とは全く関係ない、キングスレイさんの知識大公開とでも呼ぶべき「博物学的見識のご披露」。  これが長い、長い、長い・・・・・・ ^^;  ところどころで美しい水の世界の描写があったり、科学万能主義への批判があったり、KiKi 自身も最近ではかなり疑問を感じている功利主義への問いかけがあったりして、決して嫌いな類のお話ではないはずなんだけど、とにかく読み通すのが辛かったぁ!!!!

    (全文はブログにて)

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