なぞの娘キャロライン (岩波少年文庫)

制作 : E. L. Konigsburg  小島 希里 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 35
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001121179

作品紹介・あらすじ

行方不明の年の離れた姉が、突然もどってきた。マスコミは大さわぎ。ぼくたちの生活のリズムはめちゃくちゃ…。平和な一家をまきこんだ事件を軽妙なタッチで描きながら、意外な結末へと導く、ミステリー。小学上級以上。

感想・レビュー・書評

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  • 17年前に誘拐され行方不明となっていたキャロラインが帰って来た。その日からウインストンの生活は変わっていった。
    初めからピリピリとした緊張感に包まれた物語でした。戻ってきたキャロラインが本物かどうかという処から始まり、1950年代のアメリカの富豪の家に生まれたウインストンの生活の窮屈さを知り、ごく脇役だと思っていた妹のハイジに焦点が当たった時に物語はふくれ上がります。キャロラインが外の風を連れてきたことにより、ウインストンとハイジ兄妹の運命が変わる様が実に目映いです。特に障害を持つハイジが自分で考え自分で動くようになる場面は「奇跡の人」を思わせる奮えがありました。

  • その大きな魅力の理由

     童話が好きな人が童話だけ、推理小説が好きな人は推理小説だけを系統立てて読みすぎると、思わぬ良書を取りこぼしてしまうかも。
     児童文学作家のカニグズバーグ。ミステリファンを唸らせそうだと『クローディアの秘密』評に書きましたが、それで行くとこの『なぞの娘キャロライン』なんて題名からしてミステリ系です。

     裕福ですがやはり家庭の温もりを感じさせない一家に、「キャロライン」を名のる女性が現れます。かつて誘拐されたきり行方不明になっていた娘で、主人公から見たら姉に当たる存在です。
     会話にセンスが光り、誰とでも(子どもとも)対等に接する彼女の出現は、ウィンストンの個人的な関心を強くひくところとなります。相続権の絡みで巻き起こる騒動の影で、彼女が本物の姉かどうかは、ウィンストンにとっても大きな問題に――

     材料は最初からばらまかれているのに、姉弟をとりまく環境の特殊さが何となく曖昧で、真相は読み進めるうち見えてくる……。この作話術はミステリ用語だとミスディレクションとでもいったところでしょうか?

     このキャロライン、カニグズバーグ作品の魅力を体現しているような人物だなと思ったことがあります。(ちょっと考えすぎかもしれないけど…★)
     相手(読者の時もあり、児童の時もある)をひとかどの人間として認めて向き合い、発する言葉に甘さがないのです。
     カニグズバーグの表現も、視点に変な高低差がなく、相手に誠実です。このようなまっすぐさを備えたものは、大人が子どもに向けて書いた物語にはどうしても少ないのですが、見つかりましたよ。
     ウィンストンにとってのキャロライン。子どもが周りに求める、目には見えない血の繋がりより、確かに感じられる味方のまなざし……。

     ウィンストンと同じ目線でキャロラインを見つめて、あたかもわが身に起きたことのように彼女に注意を奪われる。俯瞰しすぎずに物事を感じ取ってみる。その時、私たちはキャロラインに魅了されるし、カニグズバーグに魅了されるのです。

  • カニグズバーグはけっこう読んだつもりでいたけど、まだこんな凄い作品があったんだっていう感じです。
    初めのとっつきの悪さを我慢スレバ、途中からぐいぐい引き込まれる。
    この話を書いた時代は既に発達障害がアメリカでは話題になっていたんだね。

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