銀河鉄道の夜 (岩波少年文庫(012))

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001140125

作品紹介・あらすじ

宮沢賢治の童話集。夜の軽便鉄道に乗って天空を旅する少年ジョバンニの心の動きを描いた表題作のほか、「やまなし」「貝の火」「なめとこ山のくま」「オッペルとぞう」「カイロ団長」「雁の童子」の7編。幻想性に富んだ作品を収めます。小学5・6年以上。

感想・レビュー・書評

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  • 『やまなし』の美しさ。

    鮮やかに燦めく水底の
    幻燈。

    鋼のような青の昏さと
    水銀のように光る泡。

    日光や金雲母の欠片で
    織りなす黄金の眩さ。

    泳ぎまわる魚体の表現。
    圧巻のカワセミの迫力。

    最先端の技術を用いて
    表現しようとしても、

    きっと文字で描かれた
    この作品を越えること
    はできないでしょう。

  • 宮沢賢治は物語を何度も手直ししていた。発表されているお話も「5ページ紛失」「3文字不明」などの但し書きがあり、何度も習性をかさねてお話を作っていることがわかる。
    そのなかで「銀河鉄道の夜」は、第1稿から第4稿まである。最後の形が宮沢賢治の一番いいたいものだろうということで、出回っているものは第4稿が多い。
    (第4稿はこちら)
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4062850516#comment

    こちらの岩波少年文庫は第3稿になるのかな?第4稿では削られた「ブルカニロ博士」の部分が入ってたので読んでみた。

    以下、「銀河鉄道の夜」の、第4稿との違いのみの感想です。


    列車の中でジョバンニはセロのような声を聞く。そしてカムパネルラを見失ったジョバンニの目の前にセロのような声の黒い大きな帽子を被った大人が現れる。ジョバンニの嘆きを大きな帽子の大人は「おまえはカムパネルラと一緒にはいけない。だがおまえが会うどんな人でもカムパネルラだ。あらゆるひとの一番の幸福を探し、みんなと一緒に行くのだ。」「これからたくさん勉強して、みんなと議論するのだ。」「みんなが自分の神様が”本当の神様だ”とか、自分の倫理観で良い悪いを言って、それは勝負がつかないだろう」「それらを超えた全てを統括する考えを持ちほんとうの幸福を求めに行くのだ」ということを告げる。(※違ってたらごめんなさい!)
    そして列車から降りたジョバンニの前に現れたのが、セロの声の持ち主であるブルカニロ博士。どうやら銀河鉄道とういうもの自体が、自分の考えを伝えるためのブルカニロ博士の実験だったようだ。ブルカニロ博士は、ジョバンニにこれからも自分に相談に来なさい、と伝える。ジョバンニの伝道師のような存在だ。
    なお、その直後に草原の上で目を覚ましたジョバンニは、カムパネルラの父である博士に出会う。博士は息子を亡くしたばかりだが、ジョバンニを励ますような声をかける。
    「博士」というのはジョバンニにとっての伝道師のような役割なのかな。

    「銀河鉄道の夜」では他にも宗教的な文言がある。
    まずは沈没船(タイタニックとか言われてるよね)で遭難した青年とのやり取りだ。
    <「あなたの神さまってどんな神さまですか。」青年は笑いながら云いました。
    「ぼくほんとうはよく知りません、けれどもそんなんでなしにほんとうのたった一人の神さまです。」
    「ほんとうの神さまはもちろんたった一人です。」
    「ああ、そんなんでなしにたったひとりのほんとうのほんとうの神さまです。」>
    青年の「本当の、たった一人の神様」は唯一神で偶像崇拝などを禁じる神様だろう。それに対してジョバンニの「たった一人の本当の本当の神様」は自分の心の哲学や倫理のようなもの…ってことでいい?

    そして列車の中で人々が唱える「ハレルヤ、ハレルヤ」(岩波文庫版)、または「ハルレヤ、ハルレヤ」。(第4稿。この「ハレルヤ」と「ハルレヤ」の違いは、ますむらひろし「イーハトーブ乱入記」で考察されていました)

    第4稿からは上記「セロのような声のブルカニロ博士」が削られているが、ジョバンニは自分で「ほんとうの幸福」を目指す力があり、宗教や倫理的な伝道師は不要とされたのか…。

    • kuma0504さん
      淳水堂さん、こんばんは。

      何故ブルカニロ博士が消えたのか?
      これは大きな設問であり、
      私は未だにわかりません。

      ただ、最近発見がありまし...
      淳水堂さん、こんばんは。

      何故ブルカニロ博士が消えたのか?
      これは大きな設問であり、
      私は未だにわかりません。

      ただ、最近発見がありました。
      萩尾望都「トーマの心臓」を読んだときに、トーマがユリスモールのために自らを神のみもとに命を差し出した時の決意の詩の中に
      「(彼を生かすためならば)ぼくのからだなんがうちくずれるのなんか、なんとも思わない」と言っているのを読んで、
      これは第3稿第4稿共にあるジョパンニの「僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」との決意と、なんと似通っていることか。これはカンパネラと一緒ならば、という気持ちで言ってはいるのですが。

      この時ジョパンニは何歳だったんだろ?
      尋常小学校は義務教育は10歳まで、それ以降の高等教育は14歳までです。ジョパンニは(高等教育を受けるほど裕福ではないので)10歳でこれを言ったのだろうか?でも成熟度は14歳のそれと言っていい。だとしたら、トーマと同じ「純粋さ」、少年同士の純粋さを描いているように思える。

      何かのためならば自分を犠牲にできる。

      これは、現代でも14歳の頃までに、少年少女たちは一度は到達する思いなのではないか?もう忘れているけど。

      その瞬間を描いたのだとしたら、
      「トーマの心臓」も「銀河鉄道の夜」も、現代的な意義があるのではないか?

      そんな事を思った真夏の夜の感想でした。
      長々とお付き合い頂き、すみませんでした(^^;)。
      2022/09/17
    • 淳水堂さん
      kuma0504さん
      こんにちは。

      『トーマの心臓』!大好きですよ!スピンオフの『訪問者』も好きです!
      この2つがつながるとは〜。...
      kuma0504さん
      こんにちは。

      『トーマの心臓』!大好きですよ!スピンオフの『訪問者』も好きです!
      この2つがつながるとは〜。
      確かに『トーマの心臓』の「(天国に行くために)僕の片羽をあげる」というセリフを覚えていますが、銀河鉄道の夜の「みんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」と、精神は通じていますよね。

      ブルカニロ博士版を読んでこれで良いのではないかと思ったのですけどね。
      銀河鉄道を「自分の考えを人に伝える実験」ということ、ジョバンニとの会話「その切符をなくさずに自分の足で歩きなさい」「ぼくは本当のさいわいを求めて進みます」がなくなるのは、物語として第4稿はかなり変わりますよね。

      ジョバンニの年齢は考えていませんでしたが、思春期の繊細で、自己中心ではなくてなにかのために自分を犠牲にできるという心を持っている時期ですよね。

      宮沢賢治は死後に発表された作品が多く「銀河鉄道の夜」ももし宮沢賢治がもっと生きていたらこの後も書き直されたかもしれません。

      この夏は宮沢賢治を読んでいますが、子供の頃には説教臭さが好きではなかったのですが、おとなになって読むと純粋さ、厳しさなど良い作品も多く、読み直してよかったなと思っています。
      2022/09/18
  • 姫路大学附属図書館の蔵書を確認する→
    https://library.koutoku.ac.jp/opac/opac_link/bibid/SS00010239

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  •  日本語の拙い中学生の娘用に購入しました。以前、『注文の多い料理店』を読み、所収されている作品には自然との一体感が描かれており感銘を受け、面白かったからです。
     本作『銀河鉄道の夜』は寧ろファンタジー系中心の作品で、個人的にはとっつきづらかったです。なお娘の感想は、一言『つまらない』でした笑

     以下、所収されている順に作品について寸評させて頂きます。

    『おきなぐさ』おきなぐさという植物について、『私』が周りの植物や昆虫、鳥たちに好きか嫌いかを聞いていくという話。絵本の内容を文字に起こした感の文章。宮沢賢治らしい自然の観察が描かれています。

    『めくらぶどうと虹』めくらぶどうと虹とのダイアログ。二つの自然物が死について語り叫ぶ様子は、自然の循環や輪廻を予感させる。二度読みしたがやや意味不明。

    『双子の星』天の川に住む星の住人?の双子のポンセ童子とチュンセ童子が天の悪者に騙されて海中へ落ちていく様子を描く。物語の筋がきちんと通っているため読みやすい。なかなか面白い。

    『ひかりの素足』雪深い山を行く幼い二人の兄弟の物語。弟は死の予感を得て恐怖し、兄は弟を励まし道を行く。気づくと死後の世界を二人でさまようが、すんでのところで兄だけがこの世へと戻る。これを小学生が読んでどのように反応するのか気になりました。

    『銀河鉄道の夜』名前は有名ですが初めて読みました。なかなか難しい作品だと思います。貧乏なジョバンニは次第に学校で友人とも遠ざかり仲良しだったカムパネルラとも疎遠に。あるお祭りの日、気づくとジョバンニは銀河鉄道に乗っています。しかもふと見るとカムパネルラも車中に。最終的には少年の死を描く作品で、滅法暗いです。

    ・・・

     曰く言い難いのですが、本当に子供向けなのか、と思いました。
     死というテーマを子どもから遠ざける理由も特にはありませんが、兎に角死を暗示する内容が節々で現れます。子どもが死というテーマに疑問を持った時に、それにきちんと答えられる大人がきちんと傍に居れば良いのですが・・・。ちょっと頭のいい子がこれを読んだら、めちゃくちゃシニカルでニヒルな感じになりそうですが(ちなみにうちの娘のように、つまらない、で流してくれれば問題ないですが)。
     帯には『先生がすすめる名作 6年生』とありますが、もろもろそんなに簡単な本ではないなあと感じました。

  • 賢治作品の中でも、特に叙情的な作品を中心に7品を収録。
    表題作『銀河鉄道の夜』は、3〜4回目の再読になるが(中学・高校・成人後、節目に読んだ記憶…)、これまではよくわからないままでいた。今回、本作が多次元思想によって描かれたものと気づき、また近年神秘主義的な知識を得たことで理解が容易になったこともあり、自分なりの解釈はできた。というよりも、本作は「正解」のない、それぞれが己の解釈を持つ作品だと思う…そもそも、感覚的に理解できる人と、私のように知識によるフォローが必要なタイプに分かれる作品だと思う。
    ただ、情景描写はとにかく素晴らしいので、「理解できないことも1つの正解」と割り切って読むことにも充分価値があると思う。

  • 少年ジョバンニと、その友人カムパネルラが銀河鉄道で旅をする物語。
    過去には映画化・アニメ化された、宮沢賢治の代表作。それと同時に、書き終える前に亡くなったため、謎が多い作品でもある。謎多き名作を今、味わおう。

  • 孤独な主人公ジョバンニと親友カムパネルラが、銀河鉄道に乗って美しく悲しい夜空の旅をする物語。ジョバンニは幻想的な景色や出来事を目にしながら、本当の幸せについて、生きることについて考えるのです。美しい言葉で美しく描かれた情景のひとつひとつを、心に思い浮かべて感じて欲しい作品です。

  • 独特の言い回しが雰囲気を作っている一方、難しいとも感じる。
    2011/11/15

  • 「やまなし」「貝の火」「なめとこ山のくま」「オッペルとぞう」「カイロ団長」「雁の童子」「銀河鉄道の夜」。
    岩手で生まれ育ち自然や宇宙、宗教にも精通していた賢治だから書けた物語。やっぱり銀河鉄道の夜がいい。

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著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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